すべてのカネミ油症被害者救済へ(74)

 ~10月12日東京文京上映会に集まれ~

 すでに本欄でお伝えした通り、カネミ油症事件の報道は1968年(昭和43年)10月10日の朝日新聞が最初となりました。それから半世紀を越え、57年の歳月が流れています。そこで、カネミ油症事件から57年!!すべてのカネミ油症被害者の救済を!2025年秋東京上映会を、10月12日(日)14:00~ 東京・文京区民センター2A会議室で開催いたします。カネミ油症事件を知る人も、知らない人も、ぜひ「母と子の絆~カネミ油症の真実」をご覧いただきたいと思います。

 この映画は2020年、コロナ禍の中で始まり、被害者の方々の証言をいただき、心ある研究者、医師の方々の協力に支えられ、集められた資料を基に製作されました。いま、劇場公開から自主上映会の活動に取り組んでいます。協賛いただいたグリーンコープさんは、まさに「食の安心・安全」に取り組んで来られており、鹿児島、福岡、兵庫など各地での上映会が開催されています。

 映画製作と共に、「へその緒プロジェクト」が始まり、今は「カネミ油症被害者救済プロジェクト」として、国会での活動に軸足を動かしています。この10月半ばから、臨時国会が年末にかけて開催される見込みですが、ぜひ国会の舞台で、カネミ油症被害者救済の”糸口”を見つけ、開いていきたいと準備を進めています。引き続きみなさまの、ご支援をお願いいたします。

                                   映画監督 稲塚秀孝

「不適切な動画使用」に関して

 厚生労働省 健康・生活衛生局食品監視安全課指導係
      九州大学油症治療研究班のみなさまへ

  「不適切な動画使用」と示唆を受けた「母と子の絆~カネミ油症の真実」
  製作委員会より、報道における動画使用の件について、見解を求めます。      

 6月2日付け厚労省 健康生活衛生局食品監視安全課指導係のHPに掲載された、「三者協議」(6月14日実施)の報道に関する文書の中で、突如会議後の”ぶら下がり会見”(通称)において、撮影・録画の禁止が付け加わりました。
 また6月11日には、「油症対策委員会」(6月13日実施)から、厚労省と同様に撮影・録画の禁止が伝わりました。ただし、翌6月12日に“今回は撮影・録画ができるが、「不適切な動画使用」が見受けられたら、当該チームだけでなく、すべての報道関係者に適用する”旨の連絡がありました。

 そこで「油症対策委員会」後のぶら下がり会見において、中原剛士班長(九州大学医学部皮膚科教授)に「今回取りざたされている”不適切な映像使用”というのは、「母と子の絆~カネミ油症の真実」のことを指しているのですか?」と尋ねたところ、中原班長は「そうです」と認めました。
そもそも「不適切な動画使用」とは何を指しているのでしょうか?その見解を明らかにしていただきたいと考えます。

「不適切な動画使用」に関してこれまで収集した情報によりますと、当製作委員会製作の「母と子の絆~カネミ油症の真実」を指し、映画内に2024年1月、「油症対策委員会」後の辻 学班長(当時)のぶら下がり会見及び「三者協議」後の原澤朋史課長補佐(当時)のぶら下がり会見の取材映像を使用
したことが、「不適切な使用」の根拠であり、同映画のDVD販売が「営利目的であるから」という理由とされているのではないか、と認識いたしました。
      
 公的会議後の会見の場合、各メディアの方々と同じく、自らの立場を「記録映画『カネミ油症の真実』を製作しているタキオンジャパン稲塚と申します」と明らかにした上で、インタビューを行っており、取材対象(辻 前班長、原澤 元課長補佐)から“インタビューの拒否”を受けたり、“ここはオフレコ(内密で公表しないで欲しい)といった反応もありませんでしたので、通常通り映画内で使ったのであります。ぶら下がり会見の内容は、各テレビ局、新聞社の方もそれぞれに放送・紙面に掲載しており、これは真っ当な”報道取材”であると考えております。

 また記録映画では、劇場公開、上映会と共に、広くDVDを頒布するのは、通常の伝播のための行為であることは、常識的なことと考えられています。「営利目的に使われた」という発言が事実とするなら、放送・新聞なども含め、“伝える行為”は憲法で保障されており、掲載権、映像編集権は、製作者側に託されていることと認識しております。そして各メディアはクライアント(スポンサー)や新聞購入者・観客から受け取る“費用=営業費”によって運営されていることは、“自明の理“と考えますがいかがでしょうか?
これは一般的な社会的ルールであり、このことを”営利行為“という言葉で断罪することは、全く理解不能な”暴論”と言わざるを得ません。

「不適切な動画使用」に関してそして今回の映画内に編集された内容が、厚労省にとって”不都合な事実
“の公開と認識されているのなら、ぜひ“不適切な動画使用”と定義される理由を明らかにしていただきたいと考える次第です。

☆今回の回答期限は、令和7年(2025年)7月18日(金)とさせていただきます。
「不適切な動画使用」に関して私達が担っている”伝える行為”は、厚労省及び「油症対策委員会」の意図を、広く日本国民の皆さんに正しく伝えることと自覚しております。今「不適切な動画使用」に関して後とも取材における“切磋琢磨”をさせていただければと祈念いたします。 

                          2025年6月18日 
                「母と子の絆~カネミ油症の真実」製作委員会
                      株式会社タキオンジャパン  
                          代表    稲塚秀孝

「カネミ油症」上映通信㊱

 ~12月2日 故満広さんの命日~
 真夜中の博多港からフェリー「太古丸」に乗船し、今朝7時25分五島市奈留港に着船。出勤する奈留の方から声をかけられました。
「監督、これから取材ですか?」マスク越しなので、どなたか分からないまま、「ありがとうございます」と返事をしました。奈留に通うのも10回近くになり、顔見知りも増えたし、長崎新聞の記事や9月の奈留上映会に来られた方かもしれない。うれしい。

 今回の目的は、岩村定子さんから預かった「へその緒検査」が終わり、残された3人のお子さんの「へその緒」をお返しに上がったのです。定子さんは福江の病院に入院中、今年2月から、がんと闘っています。ご主人に「へその緒」をお返しし、今日は長男満広さんの命日、1973年12月2日に生後4か月で亡くなったのだ。声を上げることができなかった、カネミ油症被害者なのです。満広さんの仏前に手を合わせたいとお願いし、ご主人から小さな木の札を見せていただく。私はこみ上げるものを感じながら、手を合わせました。まだ、まだ満広さんの”無念“を晴らすことができていない、が、今後いかなる方法を駆使しても、定子さんと満広さん親子のお気持ちに報いたいと誓いました。      
                        映画監督   稲塚秀孝

「カネミ油症」上映通信㉜

 ~国(厚労省)と対峙する方法~
 50年前に生まれたカネミ油症被害者のお子さんの「へその緒検査結果」が出て、先週2回に渡っておよそ30人の新聞・放送記者に伝えました。最初に報じたのは、カネミ油症被害者が多い、長崎新聞でしたが、今週から次々と報道されることを期待しています。

 今週中には、厚生省記者会加盟の記者の方々に送り届けます。その為には、報告書という“原資料”の解読、読み解きした“手引き書”を作らなくてはなりません。 今回の「へその緒検査」で何が分かったのか?今後の国の施策を改善、反映しなくてはならないことは何か?いわば国に無策、意図的なサボタージュを正す、糺す中身が問われるのです。

 今朝、見逃し配信のティーバで、昨晩放送の「海に眠るダイヤモンド」を観ました。長崎市の沖に浮かぶ“端島”(1958)が舞台のドラマです。第4話では長崎の被爆が取り上げられました。今こそ伝えないといけない、被爆の実相と信仰の意味を鮮やかに描く傑作です。忘れてはいけない、伝えないといけない、何度でも・・・ それはカネミ油症事件にも共通する“テーゼ”だと思います。
                                映画監督  稲塚秀孝

「カネミ油症」上映通信㉛

 ~じわじわと迫ってゆく~
 今週月曜日(11日)に「へその緒検査報告」(HPトップ記載)を全国でカネミ油症取材で知り合った新聞・放送メディアの記者の皆さん30名に送りました。2日後(13日)には、「へその緒検査報告」(宮田秀明摂南大学名誉教授)を同じく送りました。既に長崎新聞で記事化され、報告内容についての問い合わせが届いています。

 その中で注目は、岩村定子さんの長男、満広さん(1973年生、生後4か月で死亡)のへその緒のダイオキシン類のデータについてです。岩村さんが2013年に九州大学油症治療研究班の古江増隆班長(当時)にへその緒検査を依頼し、2年後に担当した技師、梶原淳睦さんから検査結果がFAXで届いています。その内容は、重篤な症状があったにもかかわらず、カネミ油症の影響ではなく、農薬の成分(PCP)の数値が高いというものでした。岩村さんはこの内容に納得しておらず、2021年からしばしば岩村さんを訪ねた際に、カメラに向かいお話しくださったのです。

 今回わずかに残された満広さんのへその緒を改めて検査したところ、2013年に託したへその緒検査の過程で、農薬の成分が混入(コンタミネーション)した可能性が高いという宮田先生の見解が得られたのです。この事実はとても重要だと思います。改めて皆様に詳しくお伝えしたいと思います。
                                      映画監督  稲塚秀孝

「母と子の絆~カネミ油症の真実」製作委員会 へその緒プロジェクトより

 今回、岩村定子さんの3人のお子さんの「へその緒検査」報告書をもとに、宮田秀明摂南大学名誉教授に分析していただいた報告書を添付いたします。

 以上の報告結果から、岩村定子さんの3人のお子さんには、母体からへその緒(臍帯)を通して、胎児(出生児)にダイオキシン類の毒性物質(カネミ倉庫製「カネミライスオイル」が原因)が移行して、カネミ油症の症状が見られることが明白となりました。つまり「へその緒」検査こそが、カネミ油症被害者であることを認めることになるのです。

 「へその緒プロジェクト」は訴えます。
① 国(厚生労働省)と九州大学油症治療班は、早急にカネミ油症被害者の「へその緒」検査体制を立ち上げ、検査を推進すること。
② そして、未認定を含む、すべてのカネミ油症被害者の救済に取り組むことを強く要望します。

 なお「へその緒プロジェクト」では今後もカネミ油症被害者の「へその緒検査」を続けます。新たに山口県下関市に住むカネミ油症被害者の2人のお子さんの「へその緒検査」に着手いたします。そして、2025年1月24日(予定)、「へその緒プロジェクト」記者会見(第2回・福岡にて)を行うことをお伝えいたします。
                                        2024年11月11日 
              映画「母と子の絆~カネミ油症の真実」製作委員会  へその緒プロジェクト
                                         藤原寿和・稲塚秀孝
                             【問合せ・連絡先】稲塚秀孝090-3433-6644                                         iazuka@takionjapan.onamae.jp

「カネミ油症」上映通信㉚

 ~「へその緒プロジェクト」からの報告~

 本日11月11日午前11時をメドに、各メディア(主に新聞関連)に向け、「へその緒検査」報告を配信いたしました。長崎県五島市奈留に住む岩村定子さんの3人のお子さんのへその緒におけるダイオキシン数値などです。報告書はこのHPでも公開いたしますが、確実に母体から胎盤を通じて、カネミ油症の原因物質であるPCDF(ポリ塩化ジベンゾフラン)の高い数値が認められています。国(厚生労働省)は、早急に「へその緒検査」を主体的に実施するとともに、すべてのカネミ油症被害者の救済に全力で取り組んでいただきたいと思います。

 56年前に発生した食中毒被害をこのままにしてはいけません。今日は、東京・大阪・神戸・京都・長崎・福岡でカネミ油症被害者を取材してこられた記者(約20名)の方々にお伝えしました。中には全国的な通信社の記者の方も含まれています。この報告を基に、より広く全国の皆さんに伝わることを願っています。
                              映画監督    稲塚秀孝

特報!

 カネミ油症 へその緒プロジェクトからの報告
 カネミ油症被害者のお子さん3名のへその緒検査の報告が届きました。長崎県五島市奈留島に住むカネミ油症被害者の母親から産まれた3名のへその緒検査。
長男 1973年生(生後4か月で死亡)
次男 1975年生
長女 1977年生
の3名のへその緒検査の報告が、「母と子の絆~カネミ油症の真実」製作委員会のもとに届きました。現在 研究者・医師の方々の協力をいただいて、検査結果の分析を行っています。11月半ばには、皆さまにお伝えしたいと思います。
                      「母と子の絆~カネミ油症の真実」製作委員会

「へその緒プロジェクト」通信(51)


~へその緒検査に着手、新たなステージへ~

 6月20日、長崎県五島市奈留に住む岩村定子さんから、3名のお子さんのへその緒を預かりました。 既に通信において、6月22日の三者協議(福岡県合同庁舎)後の、ぶら下がり会見で厚生労働省健康・生活衛生局の原澤課長補佐にへその緒を示したことは、既報通りです。そして6月25日に京都にある検査会社の幹部の方と面談し、へその緒を託しました。その後、岩村さんにもお伝えしたところです。検査が速やかに行われるかは否かについては、7月1週まで待つこととなりました。

  九州大学油症治療班は、へその緒を検査し。母体から胎児に毒性性が示唆したことは、2009年5月発行の「福岡医学雑誌」における2つの報告で明らかになっています。一つは長山淳哉准教授、検査技師の梶山淳睦氏(福岡県保健環境研究所)が関わったもの、もう一つは摂南大学 宮田秀明教授(現在名誉教授)のグループの報告です。さらに2013年頃には、故 月森清巳医師(福岡こども病院)らの研究報告で、母体から胎盤を経て胎児へ、かなり高い濃度で毒性物質移行の実態が明白になっています。

 ここでいくつかの疑問が湧出いたします。
1. カネミ油症事件が明らかになり、「黒い赤ちゃん」が次々と生まれてきたことから、へその緒により、毒性物質の移行が推定されたにも関わらず、40年近く研究がなされなかったことは何故か?
2. 母体から胎児へ高濃度の毒性物質移行が明らかになって(2010年代)から、なお10年以上「へその緒」研究と検査が行われなかった理由は何か?
そして、カネミ油症研究と治療対策の責任者、班長が、皮膚科教授が代々担当しているのは何故か?(今年4月から、中原剛士皮膚科学教授が班長に就任)
今からでも遅くないので、へその緒については産婦人科他の分野の医師が前面に出るべきと思うのですが・・・。

  まもなくこの映画は編集に入りますが、“一つ一つの疑問”を明らかにしていきたいと考えています。

    映画監督 稲塚秀孝