「へその緒プロジェクト」通信㊳

 次のステップへの前夜となった。
今年2月16日、3月11日の2回に渡り、長崎県生活衛生課に
岩村定子さんの亡き長男、満広さん「カネミ油症」申請が受理されました。
1968年に始まった「カネミ油症事件」初の出来事でした。

 これまで一斉検診において、ダイオキシン類の血中濃度を調べ、
一定の数値に達しないと「カネミ油症」と認定されないという、不条理。
個人が申請して突破する道が開けるのか? いよいよ明日午前11時には判明する。
長崎県庁の担当職員2名と私は奈留島へ同行し、岩村さんと共に聞くことになったからだ。

 すでに福岡、長崎の地元紙、全国紙の支社の担当記者のみなさんには、
「明日、一つの指針が出る」と伝えているところです。明日夜には、
この通信でお伝えしたいと思います。
        
                     映画監督  稲塚秀孝

「へその緒プロジェクト」通信㊲

 連休前に通信㊱でお知らせしましたが、近々(来週か?)長崎県庁から岩村定子さん(五島市奈留)に返事が届く見込みとなりました。

 今から51年前、1973年に生後4か月で亡くなった、長男・満広さんが「カネミ油症」による数々の障害を持っていたことの”証明“が得られるか否か、九州大学油症治療班からの報告(返事)が4月半ばに届いたのち、慎重に長崎県としての判断を検討されていたようです。

 私は岩村さんの依頼を受けた代理人として、本年2月、そして3月に2度に渡り、申請書を長崎県庁生活衛生課(カネミ油症の担当部署)に提出いたしました。添付した資料は、昨年2023年に行われた「カネミ油症一斉検診」の結果、福岡県一名、長崎県三名の”認定”されたというものです。

 このように毎年行われる一斉検診で、ダイオキシン類の血中濃度が一定基準以上の数値と認められないと、被害者として認定されないという”高い壁“があります。

 「カネミ油症事件」(1968年)発生から56年が経過し、体内の血中濃度が減少する傾向があることと、「へその緒」を通して次世代には、40%の移行が認められているにもかかわらず認定されないという”現実”があります。長崎県はどのような判断を下すのか?注視したいと思います。

       映画監督 稲塚秀孝

関連情報をリンクします。
カネミ油症 2024年 一斉検診で新たに1人患者認定福岡県で2年ぶり
(2024.3.25)

「へその緒プロジェクト」通信㊱

~カネミ油症被害者申請の行方~

 通信㉗でお伝えした、カネミ油症被害者の申請に
ついて、今日長崎県庁の担当者から”現状報告“を受けました。

 2月と3月(追加分)と2回に分けて申請したのは、
岩村定子さん(長崎県五島市奈留)の長男満広さん
(1973年、生後4か月で死亡)についてでした。

 申請書類は長崎県から九州大学油症治療研究班(福岡市)
に送られ、先日長崎県庁へ”返事“が届いたとのこと。
現在長崎県庁内で、カネミ油症被害者として、認定するか
否かの検証が行われ、5月2週頃に、満広さんの母、定子
さんと、今回申請の代理人を務めた私、稲塚宛に連絡が来る
ことになっています。

 長崎県庁がどのような診定を下すのか?予断を許さない状況
と考えています。

 いずれにしても、被害者個人が自治体に油症被害者であると、
申請したのは初めてであり、今後後に続く方々が出てくることを
願いたいと思います。

 油症被害(1968年)から56年が経過し、明らかに”遅かった!“
感はありますが、今からでも遅くないと考え、前へ進め、被害者の
救済に結び付けたいと思います。
                 映画監督 稲塚秀孝

「へその緒プロジェクト」通信㉟

~ドキュメンタリーは”告発”である~

 この信念のもとで、2006年から映画製作を続けてきました。

 では、何を”告発”するのか?それは取り上げるテーマや取材の中身に
おいて、さまざまと言えると思います。
告発する対象が、国家、企業、国家観、無垢と呼ばれる人々、そして
自分自身。何も決まりはありません。

 今回の「母と子の絆~カネミ油症の真実」においては、大きくとらえると
”組織と個人“ではないかと思います。国=厚生労働省、アカデミズム=九州大学
を頂点とする九州における学問と研究閥、支援するべき人々=例えば弁護士集団、
そして被害者を支援する人々・・・・。カネミ油症事件発生から56年。

 そこに共通するのは“無作為”ということだろうか?
もちろん映画製作をする私たちが”正義”とは言えない。
家族を守るために、あえて家族に「カネミ油症の真実」を伝えない事例に出会った。
“仮払金“返済を国から迫られた時、家族を守るため、守り切れずに、命を落とす”不条理“。
”カオス“のような現実を見つめながら、残り数カ月の製作に取り組みたいと思う。

 今日、映画製作チラシ第3弾が出来上がりました。
皆さんに見てほしいと思います。
                    映画監督    稲塚秀孝

「へその緒プロジェクト」通信㉞

~取材することと取材される側のこと~

 数日前から北海道苫小牧市の事務所で、これまで撮影した映像素材の
整理を行っています。週明けには帰京して、新たな撮影に備えます。
何が撮影できて、何ができていないか?
本格的な編集を始める前に必要なプロセスです。

 もっとカネミ油症被害者の方々の”声“を聴きたいと思います。
しかし、被害者の方々側の事情もあり、立ち止まることもあります。
「自分(カネミ油を口にした)はいいが、子どもたちや孫のことは守らないと
いけない」この場合、”守る“とは、子や孫に「カネミ油症被害」のことを
伝えない、ということを意味しています。

 新聞や雑誌での報道と違いのは、映像作品(テレビ番組や映画等)では、映像
(つまり顔出し)が原則であるが故に、取材する側も取材される側も、公開される
ことに”同意と覚悟“がいるのです。
取材する側の”伝えたい“と取材される側の”伝えて欲しい“という人間としての
信頼の”絆“が必要になるのです。

 コロナ禍を挟んで、ここまで3年余が経過し、今後3カ月の取材は、さらにその
せめぎあいの中で取材を行う時期に差し掛かりました。
何とか”成果“を得ることで、カネミ油症被害者の救済が進むことを目指したい、
そう考えている日々です。
                           映画監督  稲塚秀孝

「へその緒プロジェクト」通信㉝

~「へその緒検査」の可能性!!~

 今朝、映画「母と子の絆~カネミ油症の真実」の
藤原プロデューサーから連絡が入り、昨日関西地方で
打合せの結果、「へその緒検査」の可能性が具体的に
なった、との吉報でした。

 思えば昨年12月に「へその緒プロジェクト」を立ち上げる、
ほぼ一年前から、民間の検査会社数社に打診してきましたが、
見積書まで受け取りながら、OKは出ませんでした。

 今年1月、宮田秀明摂南大学名誉教授らと共に「へその緒
プロジェクト」の記者懇談会を開きました。
カネミ油症被害者の救済には「へその緒検査」が大事という
主張は、各メディアの方々の協力をいただき、広がってきました。

 ここから第2クール、第2ステージに進みます。
今各地のカネミ油症被害者の方々に「へその緒提供」の呼びかけを
しています。
かつてへその緒検査を行ったデータを基に、50年前に亡くなった
ご長男がカネミ油症であったことを証明して欲しいと長崎県庁に
申請中の岩村定子さんの強い決意が大きいと思います。

 時間は限られています。この4月から6月までに、どこまで活動が
推進できるか?このプロジェクトの力が試されています。

                  映画監督 稲塚秀孝

「へその緒プロジェクト」通信㉜

 ~「へその緒」に関する情報~

 3月も今日と明日の2日となりました。
先程連絡を取り合っている方からメールが入りました。
「カネミ油症被害者の方の第一子の方の「へその緒」がありますよ」
という内容で、第一子のお子さんは、5人のお子さんたちの中で、
一番具合が悪く、4月になると乳癌の手術を受ける予定だと聞きました。

「カネミ油」を口にしてから56年経った今も、いえ今こそ被害者の救済は
時間がないのです。
甘ったるい言葉は言いたくありませんが、被害者とそのお子さんの方々に、
”希望“をもたらすにはどうしたらいいのか?
喫緊の課題だと思います。

 先日、ある支援団体の方から、
「へその緒プロジェクトは、単に大きな花火を上げただけではないか?
確実に成果は上がるのか?」と聞かれました。私は、即座に
「それはわかりません。でも何もしないよりは、何か可能性にかけて
やることが必要じゃないでしょうか?」とお応えしました。

  65年前の北九州で、閉山となる炭鉱の闘う労働者が作った”行動隊”のテーゼが
あります。引用いたします。
1) やりたくない者にやれとは強制しない
2) 自分がやりたくないからという理由で、やる者を邪魔しない
3) やらない理由ははっきりさせる
4) その理由への批判は自由
5) 意見が違ったからといって、そのことだけで村八分にはしない。
意見があった時に行動すれば、仲間と認める

  このテーゼを1969年に大学の運動の中で知りました。
私はそれ以来、日本の多くの組織の在り方に疑問を持ちました。
“来るものは拒まず、去る者は追わず”
不条理な“内ゲバ”で仲間を失う“愚”は止めたいと思います。
そして、きっと”成果を出したい“と思います。

      映画監督      稲塚秀孝

「へその緒プロジェクト」通信㉛

~サクラ咲く、4月となる~
 3月27日、サクラの開花は遅れている。
満開の桜並木が見られるのは、4月となるのが確実だ。
そして「へその緒プロジェクト」が花開くのも4月に
なると確信している。

 前回、2012年に発表された英語論文をご覧いただいた。
この論文を送って下さった鯉淵典之群馬大学教授から
メッセージが届きました。

 「環境中の化学物質の毒性についての研究が活発になったのは
日本では1990年代後半になります。
その後PCB・ダイオキシン類をはじめとする有機化合物の測定法が
開発・改善され、体内の汚染や胎児への移行、毒性発現のメカニズム
などが明らかになってきました。
 カネミ油症が問題になったのは、19660年代後半ですので、
当時の技術ではわからなかったことが多く、それが被害者認定の
遅れに繋がったのではないかと思います。
 現在の測定技術を駆使し、明らかになった毒性をもとに、カネミ
油症の検証を行うことは、被害を受けた方の救済はもちろんのこと、
今後の環境科学物質の毒性研究に大きく貢献することが期待できます。」
         内分泌攪乱物質学会 会長 鯉淵典之

 今、環境ホルモンの毒性が問題になっている中、最前線の学会のトップが、
かくも熱いメッセージを送って下さったことに、敬意を表すると共に
感謝いたします。ありがとうございます。
全国のカネミ油症被害者の皆さんに届くようにしたいと思います。

                映画監督     稲塚秀孝

「へその緒プロジェクト」通信㉚

 ~新たに「へその緒」で母体から胎児へ毒性が
 移行することが証明された~ 

 信頼できる論文が届きました。
「さい帯血中の胎児のダイオキシン類の濃度は、母体血中の濃度の半分」
というのです。つまり母親の持つ毒性の半分、50%が子に受け継がれているのです。

 2月にお目にかかった国立大学医学部の先生が、知らせてくださいました。
先生は「あまりの多さに背筋がゾッとなりました」と書いています。
2012年に発表されたこの論文は、福岡県立こども病院の月森清己先生が
リーダーで、九州大学大学院医学研究産婦人科、福岡県保健科学大学の
方々で構成された研究班の成果です。

 ここまでわかっていながら、へその緒調査が進まなかったことは、残念で
たまりません。しかしそこにこそ「へその緒プロジェクト~Umbilical Cord
Project~」の意味があると思います。

 とても勇気づけられる内容ですし、お寄せ下さった先生に感謝です。
この論文以外にも、母親から子へ毒性が移行する例証は明らかになっています。

 これから「へその緒」の提供や母親の血中濃度のデータをお預かりすることで、
カネミ油症被害者として、認められていない世代の方々の申請の準備を行う
ことにいたします。
                   映画監督     稲塚秀孝

abstract: