「カネミ油症」編集通信⑥

~編集の“相棒”は最初の観客~
  7月7日から始まった博多での編集も、五島取材をはさんで
第6日目の朝を迎えた。
 今日からいよいよ「ペタペタ」が始まる。
「ペタペタ」とは、編集の項目を書いた紙を白板などの並べ、
編集の流れを作って行くプロセスで、これから際限もなく、
貼ったり、外したり、入れ替えしたりしながら、構成を
形作って行くことになる。

そしてすでに編集担当者とは、編集を進めるうえでの”用語“や”進行“に
ついて、すり合わせが済み、彼には「最初の観客」として、感想や意見を
聞きながら進めて行くことになる。

「母と子の絆・・」というタイトル(一年前に決めているのだが・・)
の意味は、カネミ油症被害者で、母親でもある5人の女性たちの生活と
証言から感じ取ってもらっている。
今日から17日までの4日間で、ほぼ3時間まで絞って行きたい。

   映画監督  稲塚秀孝

「カネミ油症」編集通信⑤

 ~臨機応変の日々~
 昨日朝、フェリー「太古」で五島市福江に到着。
あいにくの雨。しかも断続的に降り注ぐ。
カネミ油症被害者玉之浦分会、会長代理の山下さんに
お話を聞く。山下さんは先日、九州大学油症対策会議内で
「へその緒検査」を!と質問された。
山下さんの考えをじっくり聞いたのち、玉之浦支所で行われた
カネミ油症被害者の一斉検診会場へ。
 今回は40名ほどの方々が」受診。いわゆる認定、未認定の
方々が混在している。長崎県庁生活衛生課の担当者に話を聞く。
 井持浦教会や玉之浦の港の実景を撮影後、五島中央病院に向かい、
入院加療中の岩村定子さんへ、お手紙を届ける。面会可能なのは、
ご主人とお二人のお子さんのみ。
 奈留島のドローン撮影について、技術会社と相談。これから天候具合を
見ての撮影。初対面だが、そこは率直に相談することができました。
映像が月内に無事届くことを期待したいと思う。
 15時台のフェリーで奈留へ。雨はさらにひどい状態となる。
今回の実景撮影は諦めざるを得ない。編集の日程は決まっているので、
見極めをする、臨機応変の判断、決断が欠かせない。
 先日撮影に協力いただいた、地元の写真店の方に、相談のメールを送る。
今朝、雨は上がり、曇り空。予報では昼頃から雨らしい。
予定を早めて、昼のフェリーで長崎経由、高速バスで博多に向かう。
 明日からの編集再開に備えたいと思います。
         映画監督  稲塚秀孝

「カネミ油症」編集通信④

 ~発見が何より~
 2年前から何度も通ってきた五島市奈留の岩村定子さんは、今闘病を
重ねている。編集の画面で、一昨日からインタビューを見直すと、
頬がこけ、顔色もよくない。ここ10カ月で10㌔もやせたという。
元気を取り戻して欲しい。
 今日は15時に編集室を出て、JRで篠栗(ささぐり)駅に下車。
田中あつ子さんにお会いし、インタビューを行う。
かつて明治炭鉱の炭住跡に住んでおられる。ご主人を亡くし、子供たちは
独立して、一人住まい。お部屋はきれいに整頓されている。
 中学生の時、カネミ油を口にし、入退院を繰り返したと聞く。
5人兄弟の4番目で、一人だけ女性だったので、毎日のように炊事をしたのだと
いう。父は炭鉱、7人家族の食事は大皿に盛り、皆食べ盛りだから油を使う料理が
中心という。
 体中から、しぼりだすように「脂分」が出てくる。悪臭もひどい、おそらく
学校でいじめられたのだろうが、男勝りの迫力で、問題にしなかったらしい。
お子さん、お孫さん、曾孫さんを含めると20人、という。
「すべての子どもを守りたい」
それが母親の切なる思いだ、と私も思う。
 そして博多に戻り、23時45分発、五島行きのフェリー「太古丸」に乗船した。
ほぼ3週間前も乗ったが、WI-FIが航海中もほぼ通じるのがありがたい。
福江着は明日朝、8時15分。
 今日の編集で、いくつかの”発見“があった。
編集担当の伊野さんの前で、思わず手を叩き、びっくりさせてしまった。
こうした”発見”の積み重ねが、「編集の楽しみ」でもある。
「カネミ油症」映画の航海(公開)は、思いがけない展開を辿るかもしれない。
     映画監督   稲塚秀孝

「カネミ油症」編集通信③

~編集は生き物・日々変化する~
 7月7日から博多に編集拠点をおきました。
博多駅からバスで30分、三宅本町下車で徒歩3分。
映像製作会社の一角で、始まりました。
 今日は4日目。
約3年間の撮影素材を見直し、まずブロック編集から。
毎日9時から19時をめどに行います。
合間に奈留島のドローン映像や過去の映像の検索・交渉、
追加取材の段取り、ナレーターの手配など、やることは山積して
います。時間に追われて、見落としがないか?気にかかります。
 今晩遅く「太古丸」というフェリーで五島列島に向かいます。
明日五島市玉之浦、明後日は五島市奈留で「カネミ油症被害者」の
一斉検診(年1回)が行われますので、取材とインタビュー。
天候は今一つですが、実景も撮影したいと思います。
船中と奈留の「宮の森キャンプ場」のバンガローの2泊となります。
12日から編集再開です。
               映画監督 稲塚秀孝

「カネミ油症」編集通信②(7月8日)

朝日新聞 福岡本部  御中

 お世話になっております。

 映画「母と子の絆~カネミ油症の真実」の編集に昨日7月7日から博多市内で始めました。今回編集拠点を博多に置いたのは、追加取材を適宜行うためでもあります。7月10日~12日は、福岡市内、五島市玉之浦、奈留の一斉健診などの取材を行い、8月10日頃までに、完成させたいと考えています。関係者向け試写会は、9月半ば、全国公開は10月12日から順次行う予定ですので、改めてご案内申し上げます。

 一方「へその緒プロジェクト」については、岩村定子さんの3人のお子さん(故 長男満広さん、次男、長女さん)のへその緒を関西・四国の検査会社2社(共同で取り組み)に託しました。検査結果(9月初めと想定)が出次第、また途中経過を随時お伝えしてまいります。引き続きよろしくお願いいたします。
        タキオンジャパン 稲塚秀孝090-3433-6644 inazuka@takionjapan.onamae.jp

「カネミ油症」編集通信①

 今日(7月7日)から「母と子の絆~カネミ油症の真実」の編集が始まります。しかし、まだ撮影取材を続けたいと思っています。そこで今回は編集拠点を福岡県博多におくことにしました。博多にある映像技術会社の一角で行います。

 ドキュメンタリー映画の編集は、あらかじめ立てた構成案を基にしながら、映像を確認しながら、どんどん変化を重ねて行くものです。ですから編集が始まる直前では、ワクワク感がいっぱいです。最終的な映画の完成見込みは8月10日頃。どんな展開となるのか?大きな楽しみでもあります。

 とことん悩みながら、どのように映画ができるのか?皆さんにお伝えしてゆきたいと思います。ほぼ毎日、編集通信を発信、更新して参ります。どうぞよろしくお願いいたします。

    映画監督  稲塚秀孝

「カネミ油症」編集通信①

 今日(7月7日)から「母と子の絆~カネミ油症の真実」の編集が始まります。しかし、まだ撮影取材を続けたいと思っています。そこで今回は編集拠点を福岡県博多におくことにしました。博多にある映像技術会社の一角で行います。

 ドキュメンタリー映画の編集は、あらかじめ立てた構成案を基にしながら、映像を確認しながら、どんどん変化を重ねて行くものです。ですから編集が始まる直前では、ワクワク感がいっぱいです。最終的な映画の完成見込みは8月10日頃。どんな展開となるのか?大きな楽しみでもあります。

 とことん悩みながら、どのように映画ができるのか?皆さんにお伝えしてゆきたいと思います。ほぼ毎日、編集通信を発信、更新して参ります。どうぞよろしくお願いいたします。

    映画監督  稲塚秀孝

「へその緒プロジェクト」通信(51)


~へその緒検査に着手、新たなステージへ~

 6月20日、長崎県五島市奈留に住む岩村定子さんから、3名のお子さんのへその緒を預かりました。 既に通信において、6月22日の三者協議(福岡県合同庁舎)後の、ぶら下がり会見で厚生労働省健康・生活衛生局の原澤課長補佐にへその緒を示したことは、既報通りです。そして6月25日に京都にある検査会社の幹部の方と面談し、へその緒を託しました。その後、岩村さんにもお伝えしたところです。検査が速やかに行われるかは否かについては、7月1週まで待つこととなりました。

  九州大学油症治療班は、へその緒を検査し。母体から胎児に毒性性が示唆したことは、2009年5月発行の「福岡医学雑誌」における2つの報告で明らかになっています。一つは長山淳哉准教授、検査技師の梶山淳睦氏(福岡県保健環境研究所)が関わったもの、もう一つは摂南大学 宮田秀明教授(現在名誉教授)のグループの報告です。さらに2013年頃には、故 月森清巳医師(福岡こども病院)らの研究報告で、母体から胎盤を経て胎児へ、かなり高い濃度で毒性物質移行の実態が明白になっています。

 ここでいくつかの疑問が湧出いたします。
1. カネミ油症事件が明らかになり、「黒い赤ちゃん」が次々と生まれてきたことから、へその緒により、毒性物質の移行が推定されたにも関わらず、40年近く研究がなされなかったことは何故か?
2. 母体から胎児へ高濃度の毒性物質移行が明らかになって(2010年代)から、なお10年以上「へその緒」研究と検査が行われなかった理由は何か?
そして、カネミ油症研究と治療対策の責任者、班長が、皮膚科教授が代々担当しているのは何故か?(今年4月から、中原剛士皮膚科学教授が班長に就任)
今からでも遅くないので、へその緒については産婦人科他の分野の医師が前面に出るべきと思うのですが・・・。

  まもなくこの映画は編集に入りますが、“一つ一つの疑問”を明らかにしていきたいと考えています。

    映画監督 稲塚秀孝

「へその緒プロジェクト」通信㊿

 第23回三者協議(6月22日博多)から
 6月22日(土)降りしきる雨の中、福岡県合同庁舎内で、第23回カネミ油症三者会議が行われました。冒頭に掲載した写真は、会議後のぶら下がり会見の模様です。左側は、厚生労働省 健康・生活衛生局 総務課原澤朋史課長補佐。対する私(稲塚)が白手袋で差し出しているのは、長崎県五島市奈留在住の岩村定子さんから預かった「へその緒」の木箱です。

 各新聞社記者の方が一通り質問した後で、私は前回と同じカメラの角度から原澤さんに聞きました。「2009年頃から2015年頃まで、カネミ油症の被害者のへその緒の研究結果が示され、母体から胎児へ、カネミ油の毒性物質が約40%移行することが明らかに、定説となっています。なぜへその緒を検査されないのか?厚生労働省と九州大学が決めれば、福岡県保健環境研究所と北九州生活科学センターで行えるのはないでしょうか?」
と聞くと、原澤先生(原澤さんは群馬大学医学部卒、前職は前橋赤十字病院勤務)は、「へその緒は50年前のもので、検査しても数値に確たるものとは言えないし、カネミ油症の診断基準の(ダイオキシン類の)血中濃度が出るかどうかわからないという検査の専門家からの意見もある・・・・。

 そこで私は、画像のように、へその緒が入った木箱を示しながら、
「原澤先生、これは昨日の油症対策会議で紹介された、長崎県奈留島の岩村さんのお子さんのへその緒です。今月中に、京都にある島津テクノリサーチに持ち込み、検査してもらいます。その結果をお伝えしますので、検討してください」と伝えましたが、確たる返事はありませんでした。

 原澤先生(あえて医師であることを印象付け)の専門を聞くと、救急医療担当で、専門分野に移る前に厚労省に転身したのです。その後名刺交換した際、
「今製作中のカネミ油症の映画では、群馬大学の鯉淵先生のインタビューを行っています」
と伝えると、原澤先生は「鯉淵さんが教授になられた時に、授業を受けました。よろしくお伝えください」とこれまでと異なるように“素の顔”を見せました。

 鯉淵教授(群馬大学医学部教授、日本内分泌攪乱物質学会 会長)に原澤課長補佐とのやり取りを伝えると、
「彼(原澤課長補佐)は熱血漢で、学生代表として教職員に「授業改善」要求を行っていた。医師になる途中、政治に興味があると聞いていた。問題意識はあると思うが、厚労省職員の立場でどのように考えるのか?」
とご連絡をいただいた。

 厚労省の「医系技官」の方の多くは、診察現場、臨床経験(患者と向き合う)を重ねるよりも医学の知識優先であると知人から聞きました。ぜひ、原澤先生の胸に響いてくれたら、と願わずにはいられない。明日は長崎から京都へ向かいます。今後も報告を重ねてまいります。

   映画監督  稲塚秀孝

「へその緒プロジェクト」通信㊾

 6月21日(金)九州大学油症治療研究班による「油症対策会議」は博多駅構内の会議室で開かれました。参加したのは、九州大学油症治療班メンバー、カネミ油症被害者全国連絡会のメンバー、報道は主に記者クラブ加盟社、厚労省メンバーです。

 今回早くから報道関係番組を制作してきたことをアピールし、会場内に参加することができました。前日午後、当日午前に渡り、「カネミ油症検討会議」(12名の報告)があり、この4月から班長となった中原剛士九州大学皮膚科学教授が司会を務め、前半は会議の報告と全国連絡会メンバーからの質問がありました。

 私たち報道関係者は、傍聴のみで録音・録画は禁止ということでした。頻繁に質問が出ます。
◆「へその緒」検査のよって、次世代の診断が行えると聞きますが、やるんですか?
◆国(厚労省)から年間いくら九大に支払われているのですか?
◆油症被害者に歯牙疾患が多いとありますが、一般の方との比較はできているんですか?

 しかし中原班長は「ごはん論法」のように、質問の意図をゆがめ、はぐらかし続けました。何一つ検討する、いついつまでに答えるなどの“言質”を与えません。休憩をはさんで3時間、「徒労に終わる会議」でした。

 疑問はいくつもあります。
◆年間国から降りる予算は2億2千万で、半分は全国で行う被害者(認定・未認定)健診、半分は研究費と言われますが、この金額では素人の私でも、治療研究はできないはずです。
◆1968年から56年、今も皮膚科学の意思が研究・治療の中心にいるのはおかしい。
 症状は「病気のデパート」と言われるほど多いのに、半世紀も皮膚科が独占しているのは、歪である。今回「へその緒」の重要性が指摘されたが、本来産婦人科医師が答えるべき。

 会議後のぶら下がりでは、長崎県五島市奈留の岩村定子さんからお預かりした3人分の「へその緒検査」を迫ったところ、
◆半世紀前のへその緒では、数値に信ぴょう性がないと考えられる、の一点張り。研究者・医師によると、すでに2015年まで、母体から胎児へ毒性物質は40%も移行していることが明らかになっており、”定説“である。

 本来、九大とこれまでタッグを組んできた公的施設、福岡県保健環境研究所及び北九州生活科学センターが検査をすべきである、中原班長には伝えた。

 翌日6月22日は「第23回三者協議」が福岡県合同庁舎内で開かれたので、次回お伝えしたい。

  映画監督 稲塚秀孝