映画「母と子の絆~カネミ油症の真実」、
いよいよ映画製作も大詰めとなりました。
本年10月公開を前に、「先行上映会」を東京・大阪で開催いたします。
【東京・先行上映会】
日時:2024年9月20日(金)14:00から上映(開場13:30)
場所:文京区民センター3A会議室(収容:470名)
参加費:一般1000円プラスカンパ(お願いいたします)
学生 500円
主催:「母と子の絆~カネミ油症の真実」製作委員会
問合せ:タキオンジャパン稲塚(090-3433-6644)
※大阪・先行上映会は、決まり次第ご案内いたします。
なお福岡では、試写会として開催予定です。
カテゴリー: 「カネミ油症」編集通信
「カネミ油症」編集通信⑪
~さあ、これからが正念場だ!~
7月26日に一旦粗編集(約2時間20分)の段階で帰京しました。
最終版は85分~90分の予定ですから、まだまだです。
とはいえ、仕上げの段取りを進行させなくてはいけません。
今日は東京・赤坂のスタジオで、女優2名の方々にナレーションを
お願いしました。
13:30~16:30、ほぼ週録は完了し、先程スタジオ担当者から博多の編集担当者に
データ送りをしていただきました。
明後日8月2日に博多へ向かい、3日から6日まで最終編集、帰京して9日に
メインの男優の方の語りを収録し、音のミックスを終えるころは、おそらく
10日朝かもしれません。
これまで半世紀の間に数百本のテレビ番組、12本の映画製作を行ってきました。
最終のMA(マルチ・オーディオシステム)を終えるのは、いつも朝方、今の季節ですと
朝5時頃でしょうか?そして始発電車で自宅へ戻り、夕方まで「至福の眠り」に
着くのです。
24歳の時、90分の特番の演出担当した時は、3日間眠れず、ユンケルを200円から
4000円まで、階段を上るように飲みながら、スタッフと共に作業しました。
その時は30時間以上、眠りから覚めませんでした。
さすがに70代半ばの今は無理ですね。
それはともかく、全力をここ10日間に注ぎたいと思います。
映画監督 稲塚秀孝
「カネミ油症」編集通信⑩
~ターニングポイントに立つ~
第6回「ナガサキ映画と朗読プロジェクト」が終了して、長崎から
博多に戻りました。
昨日は最大37度。表を歩くと、すぐに汗が噴き出てくる。
何回も通った九州大学病院構内の撮影を“ゲリラ的”に行う。
この日も大勢の患者さんと付き添い者で館内はいっぱいだった。
完全予約制のため、救急車で運ばれない限り、1日の診察者数は
決まっているようだった。ちなみに「皮膚科」は76名。
九州で最も信頼されている病院の一つ、九州大学病院はまさしく
“白い巨塔”のシンボルだろうか?
さてドキュメンタリーの編集のターニングポイントを迎えている。
言わば“覚悟”が問われている局面だ。
午後、編集で通う映像技術会社内で2時間、これまで集めた紙資料を
整理し、この映画に組み込む資料を選び出した。
そしJR九州「鹿児島本線」を東に、折尾駅で降りるはずが一駅乗り越して
「陣の原」駅で下車。構成をご相談し、コメントをいただく原田先生に
迎えに来ていただくという“大失態”を起こしてしまった。
まだ日の残る午後7時、余熱のような暑さのなか、打合せとインタビューを
行い、改めて心に留めたのは「ドキュメンタリーは告発である」という言葉
である。あいまいだった映画編集に向かう気持ちが定まったように思える。
これが、「母と子の絆~カネミ油症の真実」のターニングポイントだった、と
後日思いおこせる瞬間だったのかもしれない。
映画監督 稲塚秀孝
「カネミ油症」編集通信⑨
~長崎で編集を考える~
長崎に入って3日目。
第6回「ナガサキ映画と朗読プロジェクト」の初日を迎えた。
(ポスター:上の行の第6回と「ナガサキ・・」をクリックしてください)


何とか天気も持ちそうでよかった。
長崎の夏のこの時期は、蒸し暑い。
どんだけ汗が出るのか?と思えるほど。
昨日は長崎セントラル劇場を訪ねる。
劇場は2階、オーナー兼支配人の女性が迎えてくれた。
「監督、久しぶりですね」そう、2022年秋公開の「役者として
生きる~無名塾第31期生の4人」以来なのだ。
劇場を支えているのは、50代以上の女性の皆さん。
ほぼ100%“洋画”の上映会。シネコンにはかからない、様々な秀作が
見られる場所でもある。
いつも「ドキュメンタリーは嫌いだから、ここでは掛けない」と
言われてきた。“映画館は楽しむ場所だから・・”が口癖である。
それでも「二重被爆」や「奇跡の子どもたち」などはきっちり2週間上映してくれた。
「カネミ油症事件」はもちろんご存じ。五島に被害者が多いが、長崎市や諫早市
にも多く、身近な問題に違いない。
そして地元の長崎新聞が熱心に報道している。
2日前に長崎新聞に私が寄稿した誌面も読んでいて、
「監督が来ているのは知っていたから、来るかも?」と思っていたというのは、
憎い。何しろまだ映画は編集中で、完成していない。
でも、“(上映を)考えておきます”と。
「ナガサキ映画と朗読プロジェクト」を終えたら、明日夜博多に戻り、編集も佳境となる。
映画監督 稲塚秀孝
「カネミ油症」編集通信⑧
~編集前半戦から後半戦へ~
7月7日から博多市内で始めている「カネミ油症」映画の
編集は前半戦を終え、およそ4時間の“固まり”となっている。
今日7月18日から21日は、一年前から決まっている
第6回「ナガサキ映画と朗読プロジェクト」(7月21日・22日
長崎原爆資料館ホール)に取り組む。昨日の長崎新聞には、
例年通り寄稿させていただいた。
「被爆体験の継承」を主要テーマに掲げ、故 山口彊さん(二重被爆者)
の「人間の世界に核はいらない」がキャッチでもある。
一旦頭と身体は、映画と朗読プロジェクトに切り替えるが、常に
「カネミ油症」編集後半戦に向けて、映画の構成を考え続ける
予定だ。
ようやく九州も「梅雨明け」となる中、五島列島の実景映像(ドローン)を
地元の皆さんにお願いし、力を借りる手はずが整った。
来週前半には、過去の映像とともに、映画のディテールを詰めて行く作業に
取り組む。
基本は、「なぜ、いまカネミ油症なのか?」
既にカネミ油症事件から56年が経過した今、問い直す日本最大の食中毒事件の
実相に迫りたい。
映画監督 稲塚秀孝
「カネミ油症」編集通信⑦
~日ごとの営み~
編集も半ばに差し掛かろうとしているが、項目ブロックの整理に
手間取り、先が見えない状況が続いている。
昨日の「博多山笠」は雨の中で繰り広げられ、湿気の高い日々が
続いている。
宿舎として博多駅前のカプセルホテルは、WI―FIの精度が高く、
ワーキングスペースがあるので、眠くなったら眠り、起きたら
大浴場とサウナで汗を流し、バスで30分ほどの編集所に向かう。
編集所そばに北九州のコインランドリーチェーンがあるので、
そこは便利。
「カネミ油症事件」は実に複雑で、人々の葛藤がすさまじい。
そして半世紀前の迸るような運動の“熱量”は今は全く残っていない。
感じられない。
今、この映画が世に出ることの意味を連日追い求めている。
映画監督 稲塚秀孝
「カネミ油症」編集通信⑥
~編集の“相棒”は最初の観客~
7月7日から始まった博多での編集も、五島取材をはさんで
第6日目の朝を迎えた。
今日からいよいよ「ペタペタ」が始まる。
「ペタペタ」とは、編集の項目を書いた紙を白板などの並べ、
編集の流れを作って行くプロセスで、これから際限もなく、
貼ったり、外したり、入れ替えしたりしながら、構成を
形作って行くことになる。



そしてすでに編集担当者とは、編集を進めるうえでの”用語“や”進行“に
ついて、すり合わせが済み、彼には「最初の観客」として、感想や意見を
聞きながら進めて行くことになる。
「母と子の絆・・」というタイトル(一年前に決めているのだが・・)
の意味は、カネミ油症被害者で、母親でもある5人の女性たちの生活と
証言から感じ取ってもらっている。
今日から17日までの4日間で、ほぼ3時間まで絞って行きたい。
映画監督 稲塚秀孝
「カネミ油症」編集通信⑤
~臨機応変の日々~
昨日朝、フェリー「太古」で五島市福江に到着。
あいにくの雨。しかも断続的に降り注ぐ。
カネミ油症被害者玉之浦分会、会長代理の山下さんに
お話を聞く。山下さんは先日、九州大学油症対策会議内で
「へその緒検査」を!と質問された。
山下さんの考えをじっくり聞いたのち、玉之浦支所で行われた
カネミ油症被害者の一斉検診会場へ。
今回は40名ほどの方々が」受診。いわゆる認定、未認定の
方々が混在している。長崎県庁生活衛生課の担当者に話を聞く。
井持浦教会や玉之浦の港の実景を撮影後、五島中央病院に向かい、
入院加療中の岩村定子さんへ、お手紙を届ける。面会可能なのは、
ご主人とお二人のお子さんのみ。
奈留島のドローン撮影について、技術会社と相談。これから天候具合を
見ての撮影。初対面だが、そこは率直に相談することができました。
映像が月内に無事届くことを期待したいと思う。
15時台のフェリーで奈留へ。雨はさらにひどい状態となる。
今回の実景撮影は諦めざるを得ない。編集の日程は決まっているので、
見極めをする、臨機応変の判断、決断が欠かせない。
先日撮影に協力いただいた、地元の写真店の方に、相談のメールを送る。
今朝、雨は上がり、曇り空。予報では昼頃から雨らしい。
予定を早めて、昼のフェリーで長崎経由、高速バスで博多に向かう。
明日からの編集再開に備えたいと思います。
映画監督 稲塚秀孝
「カネミ油症」編集通信④
~発見が何より~
2年前から何度も通ってきた五島市奈留の岩村定子さんは、今闘病を
重ねている。編集の画面で、一昨日からインタビューを見直すと、
頬がこけ、顔色もよくない。ここ10カ月で10㌔もやせたという。
元気を取り戻して欲しい。
今日は15時に編集室を出て、JRで篠栗(ささぐり)駅に下車。
田中あつ子さんにお会いし、インタビューを行う。
かつて明治炭鉱の炭住跡に住んでおられる。ご主人を亡くし、子供たちは
独立して、一人住まい。お部屋はきれいに整頓されている。
中学生の時、カネミ油を口にし、入退院を繰り返したと聞く。
5人兄弟の4番目で、一人だけ女性だったので、毎日のように炊事をしたのだと
いう。父は炭鉱、7人家族の食事は大皿に盛り、皆食べ盛りだから油を使う料理が
中心という。
体中から、しぼりだすように「脂分」が出てくる。悪臭もひどい、おそらく
学校でいじめられたのだろうが、男勝りの迫力で、問題にしなかったらしい。
お子さん、お孫さん、曾孫さんを含めると20人、という。
「すべての子どもを守りたい」
それが母親の切なる思いだ、と私も思う。
そして博多に戻り、23時45分発、五島行きのフェリー「太古丸」に乗船した。
ほぼ3週間前も乗ったが、WI-FIが航海中もほぼ通じるのがありがたい。
福江着は明日朝、8時15分。
今日の編集で、いくつかの”発見“があった。
編集担当の伊野さんの前で、思わず手を叩き、びっくりさせてしまった。
こうした”発見”の積み重ねが、「編集の楽しみ」でもある。
「カネミ油症」映画の航海(公開)は、思いがけない展開を辿るかもしれない。
映画監督 稲塚秀孝
「カネミ油症」編集通信③
~編集は生き物・日々変化する~
7月7日から博多に編集拠点をおきました。
博多駅からバスで30分、三宅本町下車で徒歩3分。
映像製作会社の一角で、始まりました。
今日は4日目。
約3年間の撮影素材を見直し、まずブロック編集から。
毎日9時から19時をめどに行います。
合間に奈留島のドローン映像や過去の映像の検索・交渉、
追加取材の段取り、ナレーターの手配など、やることは山積して
います。時間に追われて、見落としがないか?気にかかります。
今晩遅く「太古丸」というフェリーで五島列島に向かいます。
明日五島市玉之浦、明後日は五島市奈留で「カネミ油症被害者」の
一斉検診(年1回)が行われますので、取材とインタビュー。
天候は今一つですが、実景も撮影したいと思います。
船中と奈留の「宮の森キャンプ場」のバンガローの2泊となります。
12日から編集再開です。
映画監督 稲塚秀孝