「カネミ油症」上映通信㉟

 ~長崎での上映開始~

 昨日(11月29日)から長崎セントラル劇場での上映が始まりました。初日は25名の方々にご覧いただいた。上映後の挨拶は約10分間。「へその緒検査」の結果から今後の動きについて。へその緒保存は、日本が誇る”伝統文化”であると伝え、松尾芭蕉の俳句(1687年)「古里やへその緒に泣く年の暮」を紹介する。少なくとも江戸時代からへその緒が、母と子をつなぐ絆であると話しました。

 そしてダイジェスト版(35分)を全国の高校・大学で活用し始めることをお願いしました。すでに500人ほどの18歳から20歳の医学・薬学生に観ていただくことができています。今後様々な大学へプレゼンして参ります。まず3000人、5000人、10,000人へ。また経過を報告いたします。

 昨日の長崎はみぞれ交じりの雨模様でした。今日は天気も回復します。今日、新たな”出会い“を期待いたします。
     映画監督   稲塚秀孝

「カネミ油症」上映通信㉞

 ~「医系の人間学」から~
 映画「母と子の絆~カネミ油症の真実」では、新たな展開が生まれつつあるようだ。昨日群馬大学鯉淵典之教授(日本内分泌攪乱部室学会長)から学生の皆さんが映画のダイジェスト版を観て、感想を送ってくれました。今後データをまとめますが、感想を寄せてくれた方々は群馬大学の1・2年生の190名。カネミ油症事件を知らなかった学生は159名(84%)、知っていた学生は31名(16%)で、これが”現実”だと分かった。
 今後映画を全国でご覧いただくと共に、若い世代(特に医療・衛生・環境・社会学を学ぶ方々に知っていただきたいと思います。その為の活動を続けてゆこうと思います。
 そして年明け2025年1月13日文京区民センター3A会議室で行う上映会は、学生以下“無料”とさせていただきます。今後あらゆる機会を通じて、お伝えしていきたいと思います。
                                 映画監督    稲塚秀孝

「カネミ油症」上映通信㉝

 ~高校生・学生の皆さんへ~
10月から神戸・元町映画館、京都シネマで上映し、いずれも終了しました。

 カネミ油症事件が発生したのは、1968年(昭和43年)の事です。私は高校3年生の頃、北海道に住んでいた私は、おそらく地元・北海道新聞で読んでいたかもしれませんが、カネミ油による「食中毒事件」だという認識はありませんでした。

 従って2006年夏、長崎のミニシアターでカネミ油症被害者の方に「カネミ油症を知っていますか?」と声をかけられるまで、関心を持つことはなかったことを、今は心から恥ずかしいと思っています。

 これまでご覧いただいた方々は、「カネミ油症事件」を同時期に知った方々、70代以上がほとんどで、20代と思われる方はわずかでした。そこで年明け行う東京上映会、1月13日(祝)では、学生以下無料でご覧いただくことにしました。

 教科書には、良くて数行しか書き込まれない「カネミ油症事件」を“今こそ”知っていただきたいと思います。「食の安心・安全」が大きく叫ばれる今、知っていただきたいと切に望みます。
                                映画監督    稲塚秀孝

「カネミ油症」上映通信㉜

 ~国(厚労省)と対峙する方法~
 50年前に生まれたカネミ油症被害者のお子さんの「へその緒検査結果」が出て、先週2回に渡っておよそ30人の新聞・放送記者に伝えました。最初に報じたのは、カネミ油症被害者が多い、長崎新聞でしたが、今週から次々と報道されることを期待しています。

 今週中には、厚生省記者会加盟の記者の方々に送り届けます。その為には、報告書という“原資料”の解読、読み解きした“手引き書”を作らなくてはなりません。 今回の「へその緒検査」で何が分かったのか?今後の国の施策を改善、反映しなくてはならないことは何か?いわば国に無策、意図的なサボタージュを正す、糺す中身が問われるのです。

 今朝、見逃し配信のティーバで、昨晩放送の「海に眠るダイヤモンド」を観ました。長崎市の沖に浮かぶ“端島”(1958)が舞台のドラマです。第4話では長崎の被爆が取り上げられました。今こそ伝えないといけない、被爆の実相と信仰の意味を鮮やかに描く傑作です。忘れてはいけない、伝えないといけない、何度でも・・・ それはカネミ油症事件にも共通する“テーゼ”だと思います。
                                映画監督  稲塚秀孝

映画が追及する「カネミ油症事件」の真実と謎

K・サトル様から転載の了解を得ましたので、ブログ「アリの一言」の投稿を以下に転載致します。

映画が追及する「カネミ油症事件」の真実と謎
2024年11月09日 | 事件と政治・社会・メディア


 「カネミ油症事件」。言葉は聞いたことがあってもその内容、経過を知る人は多くないでしょう。ましてそれが過去のことではなく、今なお多くの謎を含んでいることはあまり知られていない、知らされていないのではないでしょうか。

 そんな日本社会(マスメディア)に一石を投じたのがドキュメンタリー映画「母と子の絆~カネミ油症の真実」(監督・プロデュース=稲塚秀孝氏)です。京都市内では8日に公開されました。

 「カネミ油症事件」とは何か。

「森永ヒ素ミルク事件(1955年)、熊本水俣病事件(公式確認1956年)とともに、日本の三大食中毒事件の一つ。初めて公にされたのは、1968年10月10日付朝日新聞夕刊で、「正体不明の奇病が続出」と報道された。

 原因は、鐘淵化学工業(鐘化、現在のカネカ)が製造したPCB(ポリ塩化ビフェニル)が、カネミ倉庫(北九州市)製造の米ぬか油(写真中)に混入し、それを摂取したこと。福岡、長崎、山口、広島など西日本一帯で皮膚疾患、内臓疾患、免疫疾患、神経疾患など様々な症状を訴える被害者が続出。その数は約1万4000人。被害者は今も苦しみが続いている」(映画パンフレットより)

 この事件が現在進行形だというのは、第1に患者認定が遅々として進んでいない(国がすすめていない)ことです。厚労省が発表した最新の認定患者は2377人(2024年3月31日現在)。発症者(約1万4000人)の2割弱にすぎません。申請していない潜在的被害者数はいまだに不明です。

 第2に、カネミ油の毒(PCBに含まれるダイオキシン類)は母体から胎盤を通して生まれる子どもに移り、子どもは短命であったり病気がちであるにもかかわらず、患者認定されていないことです。

 そして、事件は発生当時から不条理と謎に包まれています。

 食中毒事件であるにもかかわらず、食品衛生法に基づく保健所への届け出がなされなかった(食品衛生法に基づいて処理されていれば認定は不要)。

 最初の報道から4日後に、九州大学医学部の教授らによって「油症研究班」が編成。以来、国(厚労省)と九大医学部が連携して患者認定を抑制してきた。

 患者認定は、検診→診断(九大油症班)→診定(診定委員会)→認定(知事)の4段階で行われる。診定委員会はメンバーも非公開というブラックボックス。不認定でも異議申し立てもできない。

 原因物質はPCBと分かっているが、それがどうして油に混入したのかはいまだに不明(「ピンホール説」か「工作ミス説」か)

 映画製作に協力し出演もしている原田和明氏(北九州市立大学)は、「複雑な「認定制度」といい、汚染原因の歪曲といい、カネミ油症事件は単なる「食中毒事件」ではなさそうだ」(映画パンフレット)と指摘しています。

 原田氏はパンフレットではここまでしか述べていませんが、自著『ベトナム戦争 枯葉剤の謎』(飛鳥出版2024年5月)では、三菱モンサント化成がPCBの国内製造を開始したのが事件発覚の翌年(1969年)であったことや、それまでカネミとは取引がなかった離島に突然事故油が持ち込まれたことなどをあげ、「人体実験疑惑」を指摘しています。

 こうした疑惑の究明とともに、なによりも重要なのは、苦しみ続けている被害者の認定を抜本的にすすめること、あるいは症状がありながら申請をためらっている被害者を救済することです。

 映画上映のあと舞台挨拶した稲塚監督(写真右)は、認定をすすめる上で“母と子の絆”である「へその緒」の検査が決定的なカギを握っていると強調しました。国や九大がやろうとしないので、監督は自ら被害者の岩村定子さんの3人の子どもの「へその緒」を預かり、自費で民間の機関に検査を依頼しました。

 その結果が先月22日に報告され、母体から胎盤を通して毒性物質が移行したことが明確になりました。

 稲塚監督は、「今後、国と九大油症治療班に対し、へその緒検査を推進するよう働きかけねばならない」と述べるとともに、「周りのかたがたに「カネミ油症事件」を伝えていただきたい」と訴えました。

 「食品公害」をめぐる国の不条理・被害者切り捨て、企業、大学と一体となった事件の矮小化・隠ぺい、枯葉剤と通底するPCBの製造―「カネミ油症事件」は多くの問題を突き付けています。このまま闇に埋もれさせることはできません。

「カネミ油症」上映通信㉙

 ~濃密な出会いがある~

 11月8日・9日と京都シネマで舞台挨拶を連続で行った。決して観客の数は多くなかったが(京都シネマさん、力不足ですみません)、濃密な方々に出会い、ご覧いただけたことが良かった。

 テレビ番組制作においても、映画製作においても、放送と上映となれば、視聴者と観客にどのように見ていただくかであって、作り手が口をはさむことは許されない、とかつて大先輩に告げられた。
 その通りだと思う。完成後に「ああすればよかった」と思ったとしても、決して口に出さないのが私たちの“矜持”ではないだろうか?

 今日HPに転載させていただいた鬼原さんのブログを見て、こう見ていただけたなら、製作者として何も代えがたいほど幸せだと感じたのである。
 今日も上映後、グイグイと質問攻めにあった。それぞれの皆さんが抱えている問題とかテーマはそれぞれなのだが、共通するのは、「この不条理な、理不尽な社会、ひいては日本に生きる上で、自分に何ができるのか?」そのヒントはどこにあるのか?と求めているのだ。上映活動はまだまだ続く・・・。  新たな”濃密な出会い“を求め、期待したい。
                               映画監督   稲塚秀孝

「カネミ油症」上映通信㉘

 ~ここから次のステージ突入だ!!~
 先週(10月末)、待ち焦がれていた「へその緒検査」報告書が届きました。資料を含め、報告書は94ページに及ぶ膨大な内容です。「母と子の絆~カネミ油症の真実」で取材した岩村定子さん(長崎県五島市奈留)の3人のお子さんのダイオキシン類の数値が高いことも分かりましたので、週明けには全国のメディアの方々に配信したいと考えています。
 そして本編(86分)のダイジェスト版(35分)を作成しましたので、群馬大学、北九州市立大学、大阪府内の高校へ送りました。
 大阪 シネ・ムーヴォでご覧になった社会科の高校教師の方と上映後、市内移動の電車の中でお話して、「ぜひ高校の授業で取り上げて欲しい」とお伝えしたところ、昨日「DVDを送ってください。活用させていただきます」と連絡があったのです。今後このような動きを広げたいと思います。
 また映画のDVDは2025年1月から一般販売(予価、3000円)いたします。個人視聴用ですので、上映会の申し込みはこれまで通り、製作委員会宛(090-3433-6644稲塚)にお願いいたします。代理店を通じて、同じく1月から図書館、自治体向けのDVD販売も開始します。
 「カネミ油症事件は終わってはいない」
 「すべてのカネミ油症被害者の救済に向けて」
今後も様々な”社会活動“を展開して参ります。
                                   映画監督   稲塚秀孝

「カネミ油症」上映通信㉗

 ~二十歳の人たちに観てほしい~
 「母と子の絆~カネミ油症の真実」本編のダイジェスト版(35分)が完成し、コピーしたDVD30枚が届きました。早速群馬大学鯉淵教授(応用生理学分野)が講義で使用することになりました。映画の劇場公開、自主上映会が並行して行われているこの時期に新たな展開を図ることになります。全国に大学の医療系、環境衛生系、社会学系などの講義に活用してほしいと願います。

 9月26日に摂南大学(大阪市)薬学部1回生220名に観てもらいました。今回「へその緒研究」についてお話しくださった宮田秀明摂南大学名誉教授にもお口添えいただき、実現しました。そして90分の特別講座の中で、皆さんに感想を書いてもらいました。
◆映画をご覧になった感想はいかがでしたか?
◆カネミ油症事件のことを知っていましたか?知らなかったですか?
◆さらに、この映画をご覧になって感じたことは?
 そして、現在おいくつですか? と聞きました。さまざまな感想の中で、カネミ油症事件を知らなかった人は約95%。18歳、19歳の方がほとんどでした。みなさんが目指すのは、主に薬剤師で、卒業後病院の薬局、民間の薬局、そして全国のドラックストアに置かれた薬局などです。薬の知識を持ち、適切な薬の利用について説明する大事な役割を担います。国民の「命の安心・安全」を守る一翼を担うのです。ほとんどの学生の方々は、カネミ油症事件に驚き、知ることができて良かったと書いてくれました。そして「薬剤師を目指す私は、今後真摯に学び、皆さんに役立てる仕事をしたいと思います」と書き添えてくれました。今後全国で「二十歳の皆さんに観ていただきたい」と思います。
                                   映画監督  稲塚秀孝

「母と子の絆~カネミ油症の真実」製作委員会からのご提案

 映画のダイジェスト版(35分)の活用のお願い!

 「母と子の絆~カネミ油症の真実」の劇場公開、上映会が全国で始まっています。「カネミ油症事件は終わっていない。カネミ油症被害者の皆さんの救済に向けて」より広範に伝えてゆきたいと考えます。そこで今回、本編86分の短縮版=ダイジェスト版DVD(35分)を製作しました。今後全国の大学を中心に、学生の皆さんにご覧いただくため、各講座の中で活用いただきたいと呼び掛けて参ります。内容は、
◆カネミ油症被害者の被害実態を伝える声
◆1968年に「カネミ油症事件」の概要と経緯
に絞ってまとめました。
 医学・薬学・看護系の他、社会学、環境分野など、一般教養にまで拡げて行きたいと考えます。DVDの貸し出しについて、製作委員会までお問い合わせ願います。
【問い合わせ先】
「母と子の絆~カネミ油症の真実」製作委員会
タキオンジャパン 稲塚秀孝090-3433-6644
inazuka@takionjapan.onamae.jp