「へその緒プロジェクト」通信㉛

~サクラ咲く、4月となる~
 3月27日、サクラの開花は遅れている。
満開の桜並木が見られるのは、4月となるのが確実だ。
そして「へその緒プロジェクト」が花開くのも4月に
なると確信している。

 前回、2012年に発表された英語論文をご覧いただいた。
この論文を送って下さった鯉淵典之群馬大学教授から
メッセージが届きました。

 「環境中の化学物質の毒性についての研究が活発になったのは
日本では1990年代後半になります。
その後PCB・ダイオキシン類をはじめとする有機化合物の測定法が
開発・改善され、体内の汚染や胎児への移行、毒性発現のメカニズム
などが明らかになってきました。
 カネミ油症が問題になったのは、19660年代後半ですので、
当時の技術ではわからなかったことが多く、それが被害者認定の
遅れに繋がったのではないかと思います。
 現在の測定技術を駆使し、明らかになった毒性をもとに、カネミ
油症の検証を行うことは、被害を受けた方の救済はもちろんのこと、
今後の環境科学物質の毒性研究に大きく貢献することが期待できます。」
         内分泌攪乱物質学会 会長 鯉淵典之

 今、環境ホルモンの毒性が問題になっている中、最前線の学会のトップが、
かくも熱いメッセージを送って下さったことに、敬意を表すると共に
感謝いたします。ありがとうございます。
全国のカネミ油症被害者の皆さんに届くようにしたいと思います。

                映画監督     稲塚秀孝

「へその緒プロジェクト」通信㉚

 ~新たに「へその緒」で母体から胎児へ毒性が
 移行することが証明された~ 

 信頼できる論文が届きました。
「さい帯血中の胎児のダイオキシン類の濃度は、母体血中の濃度の半分」
というのです。つまり母親の持つ毒性の半分、50%が子に受け継がれているのです。

 2月にお目にかかった国立大学医学部の先生が、知らせてくださいました。
先生は「あまりの多さに背筋がゾッとなりました」と書いています。
2012年に発表されたこの論文は、福岡県立こども病院の月森清己先生が
リーダーで、九州大学大学院医学研究産婦人科、福岡県保健科学大学の
方々で構成された研究班の成果です。

 ここまでわかっていながら、へその緒調査が進まなかったことは、残念で
たまりません。しかしそこにこそ「へその緒プロジェクト~Umbilical Cord
Project~」の意味があると思います。

 とても勇気づけられる内容ですし、お寄せ下さった先生に感謝です。
この論文以外にも、母親から子へ毒性が移行する例証は明らかになっています。

 これから「へその緒」の提供や母親の血中濃度のデータをお預かりすることで、
カネミ油症被害者として、認められていない世代の方々の申請の準備を行う
ことにいたします。
                   映画監督     稲塚秀孝

abstract:

「へその緒プロジェクト」通信㉙

 昨年12月に「へその緒プロジェクト」を考え始めて3カ月、1月に記者懇談会を開いて
メディアの皆さんにご案内してから2カ月が経ちました。
「カネミ油症事件」被害者の方々を救済するために、「へその緒プロジェクト」が喫緊の
課題であることは、このHPでも、2月末まで行ったクラウドファンディングでも周知して
きました。

 私はテレビ番組を製作してきましたが、主に単発=スペシャルが多かった中、
テレビ業界では、レギュラー番組は3カ月=1クール単位で製作・放送します。
特に民間放送では、番組は3カ月ごとに継続するかどうかを判断します。

 1992年10月に開始した「テレビ近未来研究所」は、6か月間製作・放送しました。
あるテーマについて、今後どのような経過と結果が起こるかを、まさしく近未来は
どうなるのか?を検証・考察する番組でした。某電機メーカーの1社提供の番組でした。

「へその緒プロジェクト」の次のクール(4月から6月)のテーマを次のように考えています。

1.母親がカネミライスオイルという毒の油を口にし、本人も辛い被害を受けた上で、
「へその緒」を通じて胎児(新生児)に毒性が移行(胎児毒性)していることを
明らかにしたい。これまで医師、研究者の方から、母親の毒性の25~40%が生まれてくる子に
移行していると、資料をいただいています。
この事実を受けて、現在カネミ油症被害者の認定基準(ダイオキシン類の血中濃度のみ)の
壁を突き崩し、未認定(子や孫世代など)の被害者救済に繋ぎたい。
2月半ば、カネミ油症被害者で高レベルのダイオキシン類が検出された方が、
50年前に亡くなったお子さんがカネミ油症由来であったとの申請を行い、
日本で初めて、被害者個人の申請として長崎県庁の担当課に受理され、返事を待っている
ところです。今後、多くの被害者の調査結果を基に、全国各地でカネミ油症である
”同時・集団申請“を行いたいと思います。

2.先日お聞きした男性の被害者は、翌年結婚した女性との間に2人の子どもが
生まれましたが、お二人には「カネミ油症」による被害が現れています。
母親はカネミライスオイルを口にしていません。
ということは、男性の精子に何らかの原因があり、受胎した後の「へその緒」を通じて
被害が現れたことになります。しかし、男性が原因という研究は行われていません。
新たなテーマが見つかったことで、調査を進めたいと思います。

3.なぜ、国(厚生労働省)と九州大学油症治療センターは“不作為”なのか?
そこに「カネミ油症事件」が未解決のまま放置された理由が隠されています。
PCBを生産した企業は、世界中に広がっており、国を越えた”不作為”がある可能性があります。
”不作為“の証明は容易ではありませんが、その糸口を掴みたいと思います。

 次のクールは以上3点を軸に取材して参ります。

                           映画監督  稲塚秀孝

「へその緒プロジェクト」通信㉘

~”集団申請“に向けて動き出す~

 3月11日に岩村定子さんの亡き長男、満広さんのカネミ油症被害者
としての追加申請を行いました。12日には奈留島を訪ね、無事手続きを
行ったことをお伝えしました。長崎県庁生活衛生課から九州大学油症
治療研究班に書類が送られ、ひたすらに回答を待ちたいと思います。

 カネミ油症被害者の認定基準は、ダイオキシン類の血中濃度に限られ、
認定のハードルが高くなっています。そこで「へその緒プロジェクト」では、

カネミオイルの毒の油を食べた母親と新生児(当時)を繋いだへその緒の検証
さらに高い血中濃度を持つ母親から産まれたお子さんの被害の症状のデータ

の2つから、集団で申請を行うことを考えています。長崎県内、福岡県内を始め、
各地の被害者の方々に呼びかけ、「アンケート調査」に協力してもらうことを
お願いしています。

 いま求められているのは”スピード感“です。1か月後の4月半ばに向けて、
力を注ぎたいと思います。  

               映画監督      稲塚秀孝

「へその緒プロジェクト」通信㉗

~亡き長男はカネミ油症で死んだ。今日追加申請を提出~

 2月16日、長崎県五島市奈留の岩村定子さんの代理として、
亡き長男 満広さんが「カネミ油症」由来で障害を持って生まれた
ことを証明したいと、長崎県庁食品衛生課に申請書類を提出しました。

 まだ回答が得られていませんが、さらに必要な項目を追加で申請する
書類を先程提出しました。間もなく1カ月が経ちますが、何としても、
認めてほしい、その結果を墓前に報告したいという岩村さんの思いを
胸に刻み、長崎県庁の担当者に伝えました。

 そして同じように、お子さん、お孫さんがカネミ油症の未認定となっている
方々に、明日以降お目にかかり、データを預かり、へその緒を預かるお約束を
させていただくために、行脚してゆきたいと思っています。

 新たな「へその緒紀行」をお待ちください。

                  映画監督   稲塚秀孝

「へその緒プロジェクト」通信㉖

~タイトルロゴができた!!~

 「へその緒ぷロジェクト」のロゴができました。

 書家 吉野大巨さんは、私の高校時代の友人です。
1年の時から書道部にいた私は、周りは先輩の
“お姉さま”ばかりでした。そこに確か、2年から入って
きたのが、吉野恒夫さん(大巨さん)でした。
今回「憲法を武器として~恵庭事件 知られざる50年目の真実」
(2017)以来の“書”をお願いし、2週間後に届きました。


「母と子の絆~カネミ油症の真実」の映画タイトルも書いて
いただきましたが、公開は7月頃になると思います。

 さて「へその緒プロジェクト」はステージ②に入りました。
昨日から長崎に入り、諫早、五島市奈留などを訪ねます。
母親と子を繋ぐ「へその緒」提供、母親のダイオキシン類の
血中濃度のデータなどを集めます。
じかにカネミ油症被害者の方々にお会いし、お話をして参ります。
皆さんのお力を借りて、一歩一歩前へ進みたいと思います。

     映画監督 稲塚秀孝

「へその緒プロジェクト」通信㉕

~重要なアンケート調査があった~

 昨日、ある高名な研究者の方とお話ができた。
本来ならお訪ねしてインタビューさせていただくところだったが、
退官された後もお忙しく、まず電話でお話ししましょう、という
ことになった。

 そこで新たなことが分かった。
それは2008年~2009年にかけて、カネミ油症被害者の方々(いわゆる認定者)
に行ったアンケート調査があり、そのデータ分析のために専属班を
組織していたらしい。

 その後、厚労省の担当部長は5年後に廃棄せよ(よくあるらしい、確かに膨大な
紙媒体なので)と指示、一部の班会議の委員が『廃棄はダメだ』と発言したことで、
CD-ROMにされて、班会議の班長ら数人に配布されたという。
その研究者は貰っていないというので、今後その内容を取材したいと考えている。

 中身を見ないとわからないが、その後の研究に生かされるべき資料であった
ことは想像に難くないが、生かされていなかったのではないか?と思われる。

                    映画監督 稲塚秀孝

「へその緒プロジェクト」通信㉔

~「へその緒プロジェクト」と映画製作の伴走~

 1月12日の「へその緒プロジェクト」記者懇談会(福岡)から
始まり、福岡・長﨑のメディアの皆さんに報道していただき、
しんぶん赤旗に投稿(1月28日号)、東京新聞こちら特報部
(2月24日版)掲載まで、ほぼ一巡することになりました。
徐々に反響もいただいています。
続いて、第2波、第3波と「へその緒プロジェクト」の展開と深化を
行わないといけないと思います。

 全国の医師、研究者の皆さんに、「カネミ油症とへその緒」の連環を
お聴きしています。お忙しい中、率直なご意見が届いていますので、
次のアクション、ロードマップの実行に向け、またカネミ油症被害者の
救済に向けた突破口を見つけていきたいと思います。

 2月29日で映画製作への支援となるクラウドアンディングは閉じましたが、
映画製作とへその緒プロジェクトの伴走を継続するためにも、
近々新たに「カネミ油症被害者救済のためのへその緒プロジェクト」
支援の形を立ち上げたいと思います。
引き続き、皆さんのお力をお寄せいただければ、とお願い申し上げます。
               
                     映画監督 稲塚秀孝

「へその緒プロジェクト」通信㉓

~これからステージ2へ向かいます~

 昨日2月29日にクラウドファンディングが終了しました。
昨年12月20日~2月29日まで。さまざまな方々から応援メッセージを
いただき、映画「母と子の絆~カネミ油症の真実」にご寄付をいただきました。

 送金額は168万円。目標は高く1000万円としました。目標はあくまで
目標でしたが、地に足が付いた17%弱の金額が集まりました。
ありがたいと思います。10月公開を目指して粛々と製作に取り組みます。

 これから「へその緒プロジェクト」はステージ2に向かいます。
3月8日から10日間、九州、長崎・福岡を廻り、撮影と共に「へその緒」提供
のご相談や母親世代のダイオキシン類の血中濃度の数値を聞き、お子さんが
産まれて障害がなかったのかを確かめます。

 製作資金と共に、「へその緒プロジェクト」推進資金を集めたいと思います。
クラウドファンディング第2弾は4月開始です。
「簡単には諦めない」、ドキュメンタリー映画製作の第一関門です。
引き続き皆さんのご支援をお待ちします。
                   映画監督   稲塚秀孝