「カネミ油症」上映通信㉒

 ~10月14日東京上映会報告(2)~

 当日カネミ油症映画「食卓の肖像」の金子サトシ監督が会場に来られました。「被爆者の声を受け継ぐ映画祭」(今年は武蔵大学)の実行委員で、これまで数回「二重被爆」映画を上映いただいています。 金子監督は見終わった後のトークセッションで、 カネミ油症事件は、食中毒事件だった。そのことを国や九州大学が限定的な被害と矮小化するために「認定基準」、認定・未認定を生み出した、と。金子監督は「カネミ油症被害者支援センター」のメンバーでもある。

 この春、私はカネミ油症被害者支援センターの幹部と面談し、映画製作に関するの”仁義“を切ったところ、思いがけない言葉が返ってきた。「映画製作や『へその緒プロジェクト』は“一過性の花火”に終わらないことを願っている」と。とてもカネミ油症被害者の支援をしている方達の発言と思えなかったが、映画製作が必ずしも”順調”ではなかった時期だったので、あえて反論はせず、「見ていてください」とだけ答えたのである。映画製作は、今後カネミ油症被害者救済に向けて、”大きな武器になる“
と考えています。
映画監督   稲塚秀孝

「カネミ油症」上映通信㉑

~10月14日東京上映会報告(1)~
 昨日東京上映会2回目が行われ、16名の参加を得ました。秋の天気の休日、うれしいです。長年交流があるメディア文化部記者やカネミ油症映画の監督など、上映後のトークは1時間にも及びました。

 さまざまなドキュメンタリー作品の上映を応援してくださっているTさんは「カネミ油症被害者の方が、顔出しでインタビューに応じていることにビックリした」との感想でした。でも私の”ドキュメンタリーは告発である“では、ごく当たり前なことです。当事者と取材者の信頼関係はとても大事です。唯一父親当人の精子により、お子さんに症状が現れた方のみ、顔出しせず、声はそのままで登場いただきました。

 次に長年読売新聞文化部で、映画、文学批評や賞の選考委員を続いえてきたSさんは、「メディアの責任」について意見をおっしゃいました。映画のエンディングで私は「無策な国、厚生労働省、九州大学を始めとする医師、研究者、弁護団、支援してきた方々には”応分の責任”がある」と告げました。カネミ油症事件において、メディアの責任は重いのです。カネミ油症の原因究明に力を尽くさず、わずか2~3年で担当を外れては、深い記事は書けません。当たり前です。だから平気で“食品公害”とステロタイプな表現に安穏としているのです。

◆「カネミ油症事件」は食中毒事件である。
◆国と九州大学が長年結託した「被害者の認定・未認定」の”罠“にはまったまま、取材したり、記事を書いてはダメだ。そもそも「カネミライスオイルを食べた方、その方らの子や孫は全員カネミ油症被害者であることを肝に銘じないといけないのです。

 次回の東京上映会は、11月30日文京区民センター3C会議室です。

      映画監督     稲塚秀孝

「カネミ油症」上映通信⑳

 ~「古里や へその緒に泣く 年の暮れ」
 松尾芭蕉~松尾芭蕉が詠んだ俳句です。母と子をつなぐ絆「へその緒」が日本で保管される習慣は、すでに江戸時代からあったと考えられます。へその緒を大事に保管する習慣は、日本だけでなく、東南アジアにあるようで、インドネシア、フィリッピンなどでしょうか?欧米では、へその緒は捨てられるとのことです。へその緒を敬うことは、美しい日本の伝統文化ではないでしょうか?

 まもなく岩村定子さんの3人のお子さんのへその緒検査の結果が明らかになります。とても興味深いことだと思います。今日このお話を元町映画館でさせていただきました。ご婦人からの反響は大きく、良かったです。
  映画監督  稲塚秀孝

「カネミ油症」上映通信⑲

 ~全国公開始まる~
 昨日10月12日、元町映画館にて「母と子の絆~カネミ油症の真実」の劇場公開が始まりました。
昨日に続いて、本日も上映後に20分弱のお話をいたします。

 「カネミ油症事件」発生から56年経った今の視点から「カネミ油症事件」を検証する映画であることをまず伝えました。なぜならカネミ油症被害者の救済は進むどころか、被害者の認定・未認定に”分断”されているばかりか、何ら問題は解決していないからです。取材を続けてきた中で、
「カネミ油症事件って、終わったことじゃないの?」という”言葉“を何度聞いたことでしょうか?
そして「カネミ油症事件」の根幹、本質、問題の核心を多くの皆さんに伝えること、”ドキュメンタリーは告発である“”ドキュメンタリーは社会活動である“ということをしっかりとご覧になった皆さんに”認識”していただきたい、と考えています。

 そしてこの映画の中で、
1.本来「食中毒事件」にもかかわらず、初期対応で国と九州大学は“認定基準”なる欺瞞的な策動により、カネミ油症被害を”矮小化“したこと。
2.PCDFというダイオキシン類によって、母体から胎盤を通じて、胎児に”毒性物質“が移行した事実があるにも関わらず、15年前から「へその緒検証」を無視し、事実を隠蔽してきたこと、今も一切顧みようとしていないこと。
を明らかにしたことを伝えようとしています。そして”これからどうしたらいいか?!“について、これからできることを提案していきたいと思います。

 私はこれからも映画上映を通じて、広く、深く真実・事実を伝えるとともに、すべてのカネミ油症被害者の救済のために、発信してゆきたいと思います。みなさんの”勇気とお力を“お待ちしています。

   映画監督    稲塚秀孝

「カネミ油症」上映通信⑱

 ~全国の学生を対象にするプロジェクト~
 群馬大学の鯉渕典之教授(日本内分泌攪乱物質学会長)から一か月前に、一つの提案が届きました。「母と子の絆~カネミ油症の真実」(86分)のダイジェスト版を作成してもらえないか?授業の一枠は90分、できたら35分位で・・・。という内容でした。
 そして9月20日東京上映会に鯉渕先生はわざわざ来られて、ご覧になりました。因みに当日はラフな私服でした。10月24日・25日に北海道苫小牧市の編集室で作成します。そして、今後全国の医療系、社会学系などの大学に呼び掛けたいと思います。

 先日摂南大学薬学部一年生220人に聞いていただいたことも”背中”を押してくれました。劇場公開は今日10月12日から始まり、すでに上映会は各地で行われ、DVD販売は2025年1月から、今回は可及的すみやかな展開を進めたいと考えています。
                       映画監督   稲塚秀孝

「カネミ油症」上映通信⑰

 ~メディアと研究者の怠慢と錯誤~
 昨晩10月10日夜、福岡県北九州市黒崎駅前で「母と子の絆~カネミ油症の真実」2回目の勉強会が行われました。上映後、オンラインで来場者とお話ができました。
 今回は北海道苫小牧市から参加。勉強会には、長年カネミ油症を研究し、その学識を披歴している研究者と地元新聞社の記者も参加していました。まず記者は映画の中で、何人の被害者に取材し、認定、未認定の方の比率などを聞き出そうとしますが、一言でいえば“ナンセンス”な問いかけに終始しました。
 この映画では「カネミ油症被害者」とのみ表示し、国(厚生労働省)や九州大学が認定・未認定と被害者を分断し、大勢の被害者を放置してきた“事実”を弾劾しましたから、国や九州大学の無作為な策動に与するような”仕分け“には断固反対です。映画を観てもなお、そのことが分からないのかと感じ、残念を越えて失望しかありません。

 一昨日、NHK福岡のスタッフから「メディアに所属する私たちは何を伝えたらいいのでしょうか?」というストレートな問いかけがありました。
「まず、自分の取材姿勢をきちんと見つめ、そのうえで、今伝えるべきことは何かを考えてほしい。そして一人の人間として、何ができるのか、行動に移してはいかがでしょうか?」と話しました。NHK内で番組企画を通すのは、至難の業ですが、彼女はラジオ番組で伝えたいと、その後のメールで知らせてきたした。私は“大賛成です”と答えておきました。

 一方、半世紀近くカネミ油症研究をされてきた地元の研究者は、かなり錆びついたお考えと思いました。カネミ油症被害者の支援団体の申し入れがキッカケで九大の次世代の調査が進んでいると、平気で“楽観的な”考えを述べていました。今年6月の九大油症治療研究班では、歯の欠陥(永久歯の欠損等)について、あたかも研究の成果のように報告していましたが、それは今更な内容でした。九州大学油症治療研究班は、毎年数億円の研究調査費を厚労省から受け取り、半世紀に渡って“飼いならされたペット”に等しいと思います。

 いよいよ明日から劇場公開が始まります。私は本日北海道から神戸へ移動いたします。神戸・元町映画館の来場者の皆さんには、映画をご覧になった後、“勇気と力”を発揮してくださるよう、“鼓舞”したいと考えています。
      映画監督     稲塚秀孝

「カネミ油症」上映通信⑯

 ~カネミ油症事件報道から56年~
 今日は2024年10月10日です。今から56年前の今日、朝日新聞西部本社の片隅に「奇病発生?」の見出しがありました。それは初めて報道された「カネミ油症事件」でした。

 それから56年。その日に間に合うように、8月中旬に「母と子の絆~カネミ油症の真実」を完成させ、明後日の12日から全国劇場公開が始まります。まず元町映画館(神戸)です。そして朝10時30分からの上映後に、20分ほどいただいて、舞台挨拶に立ちます。映画を通じて伝えたいこと、そして今も”現在進行形“であることなどをお話ししたいと思います。

 劇場公開と上映会活動が続きますが、2025年1月1日から、「母と子に絆~カネミ油症の真実」DVD販売を行います。予約はこのHP宛にお願いいたします。
あて先は、「母と子の絆~カネミ油症の真実」製作委員会
連絡先は、inazuka@takionjapan.onamae.jp
・FAXは、042-444-3082
・携帯は、090-3433-6644(稲塚)までお願いします。
料金は、3,500円(税込み・送料込)です。
DVD発送と共に、振込先案内を同封いたします。
                         タキオンジャパン 稲塚秀孝

「カネミ油症」上映通信⑮

「母と子の絆~カネミ油症の真実」の劇場上映交渉はいくつか返事待ちです。
 6館目のシネマ・トーラス(北海道苫小牧市)は、長年私の映画上映をしていただいた40席のミニシアターですが、12月7日か14日開始の予定です。今朝青森県八戸に到着。昼のフェリーで7時間かけて、苫小牧港に行きます。明日シネマトーラスの堀岡支配人に会うことにしています。

 先月福岡市内の交差点付近でタクシーに乗ったところ、運転手さんが振り返り、「隈研吾さんですか?」と聞かれました。高名な建築家の方で、面識はありません。
「ええツ?、違いますよ」と答えると、よく似ていらっしゃるし、設計図を持っていらっしゃるから、と言う。その時の私は、プラスティック製の筒の中に映画のポスターを持っていましたが・・・。
「隈さんが自分で設計図を持ち歩きますか?持っていたとしても助手の方でしょう」と応えると、運転手さんは「確かに、そうですね」と二人は笑うしかありませんでした。後日ネットで隈さんのお顔を見ると、確かに似てなくもないと感じました。旅をしているといろんなことに遭遇します。それも楽しみですね。

 来年1月から公的機関(図書館や学校、自治体など)など向けに、「母と子の絆~カネミ油症の真実」のDVD販売を始めることにしました。これまで10作品を託したBBB社と取り決めました。劇場公開、上映会と共に、カネミ油症被害者の救済に向けて、あらゆる方法で広げてゆこうと考えています。

 東京上映会、次回は10月14日(祝)14時から、文京区民センター3C会議室です。

       映画監督  稲塚秀孝