「カネミ油症」上映通信㊳

 ~北九州“2つ目の楔(くさび)見つかる~

 昨日、驚きの”発見”がありました。全国紙の北九州総局内に「カネミ油症小倉裁判」の公判記録の一部が見つかったのです。

 映画製作を始めて間もなく、「カネミ油症裁判」に関わった弁護団の幹部の方に問いあわせました。
「『カネミ油症裁判』の公判記録を見せていただけませんか?」と。弁護士からの返事を聞いて“驚愕”しました。「公判記録を保管していた弁護士が、すべて捨ててしまっている」というのです。”ありえない“話です。歴史的な裁判の記録を捨てるなど、弁護士にあるまじき行為だと思いました。その後も公判記録は見つからず、諦めていました。「母と子の絆~カネミ油症の真実」に盛り込めず、今に至っています。次回年明け1月半ばに、公判記録を見せていただきます。

 私は「憲法を武器として~恵庭事件 50年目の真実」において、残されていた計40回の公判記録を半年間に渡って読み込み、110分の上映期間の3分の2は法廷の場面でした。公判記録を読み込んだのち、どのように活用させていただくべきか?じっくり考えてみたいと思います。とにもかくにも、小倉昭和館上映に続き、”第2の楔“ができました。
                                 映画監督   稲塚秀孝

「カネミ油症」上映通信㊲

~北九州上映で、”新たな楔(くさび)“を~

 お待たせいたしました。ようやく、ようやく福岡県北九州市の劇場「小倉昭和館」での上映のメドが立ちました。年明け1月18日(土)~19日(日)の”特別”上映です。
 小倉の港付近に「カネミ倉庫」が現存します。今から56年前、「カネミ油症事件」を起こした原因企業の「カネミ倉庫」です。そして今は販売元の名前を変えて、“ライスオイル”を製造しています。私はこうした”現実“を理解できません。そして小倉を始め、北九州市には大勢の被害者が生活しているのです。
 この町で「母と子の絆~カネミ油症の真実」を上映しなくてはなりません。昨日「小倉昭和館」の館主と直談判して、決めました。本来なら最低1週間は上映したいのですが、気が変わらないうちに決めようと思いました。1月18日・19日、私は上映後の舞台挨拶に立ちます。
 小倉昭和館では、過去「NORIN TEN」「仲代達矢 役者を生きる」「役者として生きる~無名塾第31期生の4人」の3作を上映していただきました。ただ地元の市場の火事により、今年復活したばかりです。この映画の普及のため、劇場支援(おこがましいのですが)のためにも、1スクリーン・134席を満席にしなくてはなりません。
 10月から北九州市黒崎駅前のスペースで、5回自主上映会が行われました。主催したのは北九州市立大学教員の原田和明さんです。早速昨晩小倉で”戦略会議”を開きました。北九州映画サークル、北九州市民劇場始め、上映会でご覧いただいたみなさんの力をお借りして、告知活動をお願いしました。メディアの皆さんにも、お力を借ります。「カネミ油症事件」の”聖地“小倉での上映を成功させたいと思います。
                                    映画監督  稲塚秀孝

群馬大学医学部学生190名の感想

 映画「母と子の絆~カネミ油症の真実」製作委員会では、今年10月から劇場公開、上映会(非劇場)を並行して行っています。さらに、普段ドキュメンタリー映画を観る機会が少ない若い世代に向けて、映画本編86分からダイジェスト版(35分)を作成し、全国の高校・大学の授業、講座の中で上映活用いただくことを始めました。

 11月半ばに群馬大学医学部の講座「医系の人間学」でご覧になった学生190名の方々の感想が届き、公開が許されました。本ホームページの「映画を観て」でご覧いただきたいと思います。注目すべきなのは、「カネミ油症事件を知っていますか?」の問いかけに対し、86%の学生(18歳~20歳)が知らなかったと答えています。この映画の趣旨は「カネミ油症事件を知って欲しい」ですので、知らなかった学生の方々に今回知っていただけたことは大きな効果であり、喜びです。

 ダイジェスト版に関する問い合わせ先は、090-3433-6644 稲塚までお願いいたします。
                               映画監督   稲塚秀孝

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 ~12月2日 故満広さんの命日~
 真夜中の博多港からフェリー「太古丸」に乗船し、今朝7時25分五島市奈留港に着船。出勤する奈留の方から声をかけられました。
「監督、これから取材ですか?」マスク越しなので、どなたか分からないまま、「ありがとうございます」と返事をしました。奈留に通うのも10回近くになり、顔見知りも増えたし、長崎新聞の記事や9月の奈留上映会に来られた方かもしれない。うれしい。

 今回の目的は、岩村定子さんから預かった「へその緒検査」が終わり、残された3人のお子さんの「へその緒」をお返しに上がったのです。定子さんは福江の病院に入院中、今年2月から、がんと闘っています。ご主人に「へその緒」をお返しし、今日は長男満広さんの命日、1973年12月2日に生後4か月で亡くなったのだ。声を上げることができなかった、カネミ油症被害者なのです。満広さんの仏前に手を合わせたいとお願いし、ご主人から小さな木の札を見せていただく。私はこみ上げるものを感じながら、手を合わせました。まだ、まだ満広さんの”無念“を晴らすことができていない、が、今後いかなる方法を駆使しても、定子さんと満広さん親子のお気持ちに報いたいと誓いました。      
                        映画監督   稲塚秀孝

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 ~長崎での上映開始~

 昨日(11月29日)から長崎セントラル劇場での上映が始まりました。初日は25名の方々にご覧いただいた。上映後の挨拶は約10分間。「へその緒検査」の結果から今後の動きについて。へその緒保存は、日本が誇る”伝統文化”であると伝え、松尾芭蕉の俳句(1687年)「古里やへその緒に泣く年の暮」を紹介する。少なくとも江戸時代からへその緒が、母と子をつなぐ絆であると話しました。

 そしてダイジェスト版(35分)を全国の高校・大学で活用し始めることをお願いしました。すでに500人ほどの18歳から20歳の医学・薬学生に観ていただくことができています。今後様々な大学へプレゼンして参ります。まず3000人、5000人、10,000人へ。また経過を報告いたします。

 昨日の長崎はみぞれ交じりの雨模様でした。今日は天気も回復します。今日、新たな”出会い“を期待いたします。
     映画監督   稲塚秀孝

YSC(カネミ油症被害者支援センターニュース81号)から

YSCから転載許可がおりましたので、以下転載します。
編集後記
 カネミ油症を取材した新しい映画『母と子の絆~カネミ油症の真実』(稲塚秀孝監督)が完成。 先日、鑑賞した。
  私も『食卓の肖像』というカネミ油症の映画を2010年に発表したが、共通する出演者もいて、14年たった現在の状況を考えてしまう。この14年間でカネミ油症の問題、いろいろと進展してきたこともあるが、残念ながら未解決のままの問題も多い。私の映画に出演されている未認定患者の方たちはどの方もいまだに認定されていないし、重本加名代さんが未認定のまま亡くなられたことは残念でならない。
  これまでの通り、YSCなどのカネミ油症支援運動に関わり運動を進めることはもちろん、新しいカネミ油症の映画が出来たことをきっかけに改めて自作の映画も再上映して、どうすればカネミ油症問題を解決していけるのか、活動を続けていきたいと思う。 映画監督 金子サトシ

(補記)1/26(日)13:30~、『食卓の肖像』と『母と子の絆~カネミ油症の真実』のコラボ上映会を
    文京区民センター3A会議室で行います。
 

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 ~「医系の人間学」から~
 映画「母と子の絆~カネミ油症の真実」では、新たな展開が生まれつつあるようだ。昨日群馬大学鯉淵典之教授(日本内分泌攪乱部室学会長)から学生の皆さんが映画のダイジェスト版を観て、感想を送ってくれました。今後データをまとめますが、感想を寄せてくれた方々は群馬大学の1・2年生の190名。カネミ油症事件を知らなかった学生は159名(84%)、知っていた学生は31名(16%)で、これが”現実”だと分かった。
 今後映画を全国でご覧いただくと共に、若い世代(特に医療・衛生・環境・社会学を学ぶ方々に知っていただきたいと思います。その為の活動を続けてゆこうと思います。
 そして年明け2025年1月13日文京区民センター3A会議室で行う上映会は、学生以下“無料”とさせていただきます。今後あらゆる機会を通じて、お伝えしていきたいと思います。
                                 映画監督    稲塚秀孝