すべてのカネミ油症被害者救済へ(76)

~まともに回答できない厚労省担当者へ~

 一昨日、8月20日18時46分と47分に2通のメールが届きました。厚生労働省健康・生活局食品監視安全課からのもので、最初は映画「母と子の絆~カネミ油症の真実」の中で描いた”厚労省と九州大学油症治療研究班との関わり”についての件です。

 2024年1月の「三者協議」の映像が、”不適切な映像使用”と言われ、前回6月14日の「三者協議」後の記者会見が突如撮影・録画禁止となったことについて、見解を求めたことへの回答でしたが、全く理解不能な、”はぐらかし”でした。

 「あなた方に、問いに真摯に向き合うことはないのか?」と言っても空しいことかも知れませんが、”虚空”を睨むしかありません。続いて「再々々要請書」(4回目)に対する回答ですが、これも全く”何も答えていない”内容でした。繰り返し要請し、回答が来た中で、明らかになったのは、
①カネミ油症被害者を認定する”診断基準”には、法的根拠がないということです。
再三要請している「診断基準に法的根拠があるのか、ないのか」と二択で聞いているのに対し、答えられないことが判明しました。
②「不適切な映像使用」であると認めようとせず、撮影・録画禁止の根拠を示せない事実がある。
すでに6月13日「油症対策委員会」後の九州大学油症対策委員会中原剛士班長(皮膚科教授)は、私の問い、「映画が不適切な映像使用ということで、会見の撮影・録画を禁止する通達(翌日撤回)されたのですね?」に対し、「その通りです」とあっさり認めているのです。

 さて、この”埒があかない”状態を踏まえ、今後どのようにアクションをしてゆくべきか?ターニングポイントを迎えていると思います。8月末までに、次のアクションの方向性を出したいと思います。なお厚労省省からの回答(8月20日版)を掲載しますので、じっくりお読みいただければ、幸いです。

                              映画監督 稲塚秀孝
【添付】厚労省省からの回答(8月20日版)
厚生労働省 健康・生活衛生局食品監視安全課指導係
佐野進一郎 課長補佐 さま
 昨年(2024 年)12 月末に「母と子の絆~カネミ油症の真実」・「へその緒プロ
ジェクト名で「要請書をお送りしてから、4 度目となります。
1 回目の回答は本年 1 月 20 日、2 回目は 3 月 19 日、3 回目は 6 月 9 日でした。
これまで 3 回のやり取りを精査・検証した上で、4 回目、再々々「要請書」をお送り
いたします。ぜひご回答をお願いいたします、(Q)は当方からの質問
①(Q) 「カネミ油症被害者に対する診断基準」に法的根拠はありますか?
前回の質問を繰り返します。
「カネミ油症被害者に対する診断基準に関する『法的根拠』を明らかにして
いただきたい。どのような法律に基づいて行われているのか?」
この質問に対する、回答が見当たりませんでした。赤字は、回答文から
カネミ油症の診断基準については、全国油症治療研究班において策定され、
PCB 等の毒性に関する科学的知見や、患者の健診結果等の最新の科学的知見
を反映した見直しが行われております。・・・」
と書かれていますが、周知の通り、
1968 年 10 月 14 日に九州大学において「油症治療班」が立ち上がり、翌年発行の
「序言」(勝木司馬之介九州大学病院長)では、勝手に診断基準を書き込まれて
いることから始まっていることと思います。
改めて問います。
(Q) 「カネミ油症被害者の診断基準」に法的根拠(法律及びそれに類する)が
あるのか、ないのか?を明確にご回答いただきたいと思います。
(厚生労働省回答)
〇 繰り返しとなりますが、食中毒事件においては、具体的な被害症状等に関する
医師の診断等に基づき判断することとされており、調査の過程において、食品の
喫食と症状の発現との関係を究明する場合や、原因等の特定のために臨床症状
から患者を特定する必要がある場合については、専門家の意見を聴いて診断基
準が策定されます。
〇 カネミ油症の診断基準については、全国油症治療研究班において策定され、
PCB 等の毒性に関する科学的知見や、患者の検診結果等の最新の科学的知見
を反映した見直しが行われております。そして、診断基準を参考に、血中のダイ
オキシン濃度のほか、患者の症状等を総合的に判断した上で、各自治体におい
て、カネミ油症の認定が行われています。

② (Q) 「不適切な映像使用」とされた映画「母と子の絆~カネミ油症の真実」につ
いて何が不適切な映像使用と断定されたのか、理由を明らかに願いたい。
もし貴省の〝勘違い“とかであれば、「撮影・録画の禁止」(本年 6 月 14 日「三者
協議」後のぶら下がり会見)の間違いを認めて、訂正し、「母と子の絆~カネミ油
症の真実」製作委員会に対する”謝罪“を行っていただきたい。
なおすでに提出済(6 月 18 日付)の「報道における動画使用の件について見解
を求めます」を添付いたします。
 6 月 13 日「油症対策委員会」後のぶら下がり会見の際、九州大学油症治療研究
班、中原剛士班長に、「先日油症治療班から送られてきたメールに、『不適切な
動画利用により、今回の撮影・録画禁止(後日撤回)とは、映画『母と子の絆~
カネミ油症の真実』のことを指しているのでしょうか?」と尋ねると、中原班長は
「その通りです」と答えたことから、厚労省と九州大学油症治療研究班は、同一
の考えをお持ちと判断いたしました。
(厚生労働省回答)
○ 前回の三者協議(令和7年6月 14 日開催)後における国への取材の取扱いにつ
いてですが、元々、三者協議について、一般的な報道関係者に対する対応として
の冒頭撮影の他、三者の合意を得た上で、三者協議当日に会場別室にて、三者
協議を、一部を除きオンラインでオープンとするなど、報道関係者の皆様へ議論
の内容を情報提供させていただいております。
○ それに加えて、協議内容の理解促進を図るため、三者協議後に厚労省と農水
省から報道関係者の皆様に対し、協議内容について補足的に説明する機会を設
けることとしているものであり、そうした趣旨に沿った取扱いとしています。

③ (Q)「カネミ油症被害者のへその緒検査」再開のお願い
昨年(2024 年)にカネミ油症被害者 故岩村定子さんの 3 人のお子さん
(1973 年~1977 年生)の「へその緒検査」を行いました。
既にその結果は送付済みですが、長男満広さんは重篤な症状で、生後 4 か月で
亡くなりましたが、次男、長女のお二人はカネミ油症被害者として症状を抱えて
おります。母の定子さんから移行したダイオキシン類の数値も一般の方に比べ
て大きい結果が判明しました。
九州大学油症治療研究班は、2009 年 5 月発行「福岡医学雑誌」において、
へその緒検査の結果を示していますが、その後研究は途絶したままです。
この 16 年間に及ぶ「へその緒研究」の“空白”は、カネミ油症被害者にとって、
大きな”損失“と言わざるを得ません。
しかも民間の「へその緒プロジェクト」が、へその緒検査の成果を提示したにも
関わらず、厚労省と九州大学が真摯に向き合うことをしないことには、残念至極
です。
今からでも遅くはありません。
検査機材を保有していることは、前回の「要請書」に記載した通り、確認済です。
カネミ油症被害者の方々の”残されたへその緒“にも限りがあります。
ぜひ「カネミ油症被害者のへその緒検査」の再開をお願いいたします。
(厚生労働省回答)
○ 前回の回答の繰り返しとなりますが、油症認定患者である母親を介して児に
ダイオキシン類が移行する場合もあることは承知しており、診断基準にもその
旨記載されていますが、全国油症治療研究班の調査研究において、
・ ダイオキシン類が胎脂、胎便等の形で、高濃度で胎児から排出されること
・ 個人差はあるものの、患者の子の血中ダイオキシン類濃度は、親と比較して
も大幅に低くなっていること
等も明らかになっています。そして、臍帯におけるダイオキシン類の測定は、技
術的には可能であるが、臍帯の保存状況によっては、ダイオキシン類の測定
にあたり、正確性、再現性などの問題があると全国油症治療研究班から伺っ
ています。


2025 年 6 月 24 日
「母と子の絆~カネミ油症の真実」製作委員会
「へその緒プロジェクト」
代表 稲塚秀孝



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