~原点から見直す~
「へその緒プロジェクト」が始まったのは、昨年1月12日(福岡)なので、まもなく1年半が経過しようとしている。何が前へ進められたのか?何が”獲得”できたのか?故 岩村定子さんの3人のお子さんのへその緒検査により、ダイオキシン類がお子さんに移行している(していた)事実は明白となった。
そこで今取り組んでいるのは、大きく2点。
1.岩村満広さんのへその緒検査が2度行われ、初回は2013年九州大学油症治療研究班、古江増隆班長の頃だった。結果は、へその緒に農薬が混じっていて、“カネミ油症が原因”とは言えない、というものだった。昨年行われた島津テクノリサーチと大塚製薬チームの検査では、農薬由来と思われた数値は、40分の1になっていたのである。何故2013年にこのような結果を出したのか?原因は何か?古江班長(当時)、梶原淳睦技師(現在北九州生活科学センター)に答えてもらいたいと考えている。
2.2009年5月発行の「福岡医学雑誌」には、へその緒に関する2つの調査結果が掲載されている。九州大学油症治療研究班の長山淳哉助教授、梶原淳睦技師(先述)のグループと宮田秀明摂南大学教授(当時)のグループで、いずれもカネミ油症被害者と健常者におけるダイオキシン類について報告している。皮肉なことに、当時積極的に被害者がへその緒を提供しているため、今へその緒の提供を呼び掛けても、「あの時渡してしまった」という事になった。
重要なのは、そこから「へその緒検査・研究」が途絶したことである。以来、”15年の空白“はカネミ油症事件被害者救済に向けた「へその緒プロジェクト」にとって、大きな損失であり、そこには国(厚生労働省)と九州大学の野合による、“隠蔽”としか考えにくいのである。事実と現実を深く掘り下げてゆく先に、何が見えてくるのか?辿り着くべき先は長いが、時間の猶予はないのである。
映画監督 稲塚秀孝