第29回カネミ油症勉強会(4/26))での提言
【はじめに】
「へその緒プロジェクト」が発足したのは、2024年1月12日福岡でした。九州大学油症治療研究班による「油症対策委員会」開催される前に、摂南大学名誉教授宮田秀明さんを迎えて、地元メディアの方々に向けて開催された「記者懇談会」がスタートとなりました。
映画「母と子の絆~カネミ油症の真実」の撮影取材が始まって3年が経過、「すべてのカネミ油症被害者救済に向けて」へその緒の検査が重要との認識が撮影スタッフ間で”共有”されて始まったのでした。
【すべきことは・・・】
◆「へその緒検査」をいかに推進すべきか
母体から胎児へ、胎盤を通して、ダイオキシン類の毒性物質が移行していることは、研究者の文献やインタビューから明らかであることを確認済みでした。そこで
①まず検査するへその緒の提供者を見つける。
②検査会社を見つける。
③「へその緒検査」の必要・重要さを広く訴えること。
が当面取り組むべき”項目”となりました。
①へその緒の提供者については、「記者懇談会」において、カネミ油症被害者 岩村定子さん(故人 長崎県五島市奈留在住)から、保管されていた3名のお子さんのへその緒の提供が決まっており、1月12日の「記者懇談会」会場で、故 満広さん(長男、1973年死亡)のへその緒をご覧いただきました。
②へその緒の検査会社については、2021年から全国の民間会社、大学に検査依頼を行っていましたが、ことごとく断られ、暗礁に乗り上げていました。
③「へその緒検査」研究は、2009年の油症治療研究班の2つの報告(福岡医学雑誌100号掲載)で止まっていました。一つは長山淳哉助教授(当時)ら九州大学・福岡県保健環境研究所のチーム、二つ目は宮田秀明摂南大学教授(当時)のチームでした。へその緒検査の結果、母体から胎児に毒性物質が移行している事実を報告しながら、”その先“に繋げることはなかったのです。従って約15年の”空白“から立ち上がり、掘り起こしてゆく必要性を感じたのです。
【その後・・・】
その後2024年8月「母と子の絆~カネミ油症の真実」(86分)が完成。10月から全国公開が始まりました。一方「へその緒検査」を行う民間会社がようやく見つかり、島津テクノリサーチ(京都)と大塚製薬(徳島)の2社が引き受けてくれました。
7月末、島津テクノリサーチを訪ね、岩村定子さんからお預かりした3名のお子さんの「へその緒」を託しました。検査には約3か月を有するとの連絡を受けました。10月22日検査結果が届きました。分析資料は100ページを越えていました。早速宮田秀明さんに分析結果の解説を依頼し、11月11日に各メディア(共同、朝日、読売、毎日、東京、西日本、長崎、神戸、京都、NHKなど)に配信し、記事として取り上げていただきました。そして九州大学油症治療研究班にも送りました。
この検査結果を踏まえて、12月下旬には厚生労働省健康・生活衛生局総務課へ「要請書」を送付し、2025年1月20日に回答が届きました。1月30日に再「要請書」を提出し、3月19日に回答が届きました。
その翌日、3月20日に岩村定子さんが亡くなられました。享年75.生前取材において、「長男満広がカネミ油症であったことを国に認めさせ、墓前に報告するのが私の務め」と話しておられました。
4月16日再々「要請書」を提出し、回答を待っているところです。今回は映画撮影の過程で収録した、辻 学 前九州大学油症治療研究班長と原澤朋史 前厚労省課長補佐のぶら下がり会見の映像を追加提出(4月22日)しています。その理由は、前回の厚労省の回答の中で、「どのような文脈の中での発言が分からない」(“切り取りされた映像”というステレオタイプな反応)に対し、前後のノー編集の映像を送ったところです。
【へその緒プロジェクトからの提言】
これまでの「へその緒プロジェクト」の活動の経緯の説明が長くなりましたが、ここから”提言“です。
◆今後もカネミ油症被害者救済の大きな“武器”として、へその緒検査が 重要であり、検査実施を推進します。現在カネミ油症被害者の方々の へその緒を数件お預かりしています。
◆厚労省への再々「要請書」には、国(厚生労働省)がへその緒検査に取り組むべきと伝えています。
いまやカネミ油症救済のためには、へその緒検査の「正確性」「再現性」云々を国が言うのなら、自ら検査と分析を通じて、母体から胎児へ毒性物質が移行し、次世代のカネミ油症の症状を現れている事実を明らかにすべきと考えています。いよいよ民間から国に「へその緒検査」の軸足を移す時期になったと感じています。
ぜひ、この提言をご覧になった皆さんには、それぞれできることをしていただき、広く、深く国を動かす運動(戦略・戦術)の”最前線“に立って欲しい、と切に望みます。
2025年4月25日
「へその緒プロジェクト」 代表 稲塚秀孝