すべてのカネミ油症被害者の救済へ㉚

 ~「へその緒プロジェクト」推進の根拠~

 「へその緒プロジェクト」構想が始まったのは2023年秋。一つは宮田秀明さん(摂南大学名誉教授)の打合せ・インタビューで「カネミ油症の母親から胎盤を通して胎児にダイオキシン類の毒性物質が移行するのは確実で、生まれたお子さんのへその緒を調べることで証明できる」という言葉でした。

 そしてもう一つは、2021年から取材してきた岩村定子さん(長崎県・奈留)の長男、満広さん(1973年、生後4か月で死亡)の重篤な症状(チアノーゼ・口唇口蓋裂他)をお聞きし、同年11月に梶原淳睦さんとの電話でした。梶原さんは、2013年当時、満広さんのへその緒を検査したが、「カネミ油症由来ではなく、へその緒に農薬が振りかかっている」という返事が来ており、岩村さんは”農薬は身に覚えがない“と憤っていたのです。

 「へその緒検査」を民間の複数の会社に依頼し、断られ続けた結果、2024年1月「へその緒プロジェクト」を立ち上げ、その夏ようやく民間の2社が協力することになり、検査結果が10月に出たのです。

 九州大学油症治療研究班は、国(厚生労働省)から多額の治療研究費を得て、2年ごとに報告していました。「福岡医学雑誌2009年5月号」には、こちらのへその緒検査の記録が掲載されています。この記録では、カネミ油を食べた親から13年以内に生まれたお子さんにはダイオキシン類の毒性物資の影響が現れている、と書かれています。

 しかし国と九大はその後、へその緒検査研究を中止したまま、15年が経過しているのです。なぜ止めたのか?そこには何らかの”疑惑“を考えざるを得ません。今「へその緒プロジェクト」では、途絶した「へその緒検査」研究の再開、続行を厚生労働省に訴えており、「要請書」を提出して、回答を待っているところです。2025年度予算は、参議院での審議に移りました。ぜひ国会質問に繋げたいと考えているところです。

                              映画監督        稲塚秀孝

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