「カネミ油症」編集通信④

 ~発見が何より~
 2年前から何度も通ってきた五島市奈留の岩村定子さんは、今闘病を
重ねている。編集の画面で、一昨日からインタビューを見直すと、
頬がこけ、顔色もよくない。ここ10カ月で10㌔もやせたという。
元気を取り戻して欲しい。
 今日は15時に編集室を出て、JRで篠栗(ささぐり)駅に下車。
田中あつ子さんにお会いし、インタビューを行う。
かつて明治炭鉱の炭住跡に住んでおられる。ご主人を亡くし、子供たちは
独立して、一人住まい。お部屋はきれいに整頓されている。
 中学生の時、カネミ油を口にし、入退院を繰り返したと聞く。
5人兄弟の4番目で、一人だけ女性だったので、毎日のように炊事をしたのだと
いう。父は炭鉱、7人家族の食事は大皿に盛り、皆食べ盛りだから油を使う料理が
中心という。
 体中から、しぼりだすように「脂分」が出てくる。悪臭もひどい、おそらく
学校でいじめられたのだろうが、男勝りの迫力で、問題にしなかったらしい。
お子さん、お孫さん、曾孫さんを含めると20人、という。
「すべての子どもを守りたい」
それが母親の切なる思いだ、と私も思う。
 そして博多に戻り、23時45分発、五島行きのフェリー「太古丸」に乗船した。
ほぼ3週間前も乗ったが、WI-FIが航海中もほぼ通じるのがありがたい。
福江着は明日朝、8時15分。
 今日の編集で、いくつかの”発見“があった。
編集担当の伊野さんの前で、思わず手を叩き、びっくりさせてしまった。
こうした”発見”の積み重ねが、「編集の楽しみ」でもある。
「カネミ油症」映画の航海(公開)は、思いがけない展開を辿るかもしれない。
     映画監督   稲塚秀孝

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