「へその緒プロジェクト」通信㊷

~長崎県からの”伝言“③~

 5月18日長崎県五島市奈留町。
カネミ油症被害者岩村定子さんのお宅で、長崎県庁の職員が
差し出した文書が、”これ”です。

 私は岩村さんの代理人を務めさせていただきました。
これまで記録映画を撮影してきた私は、取材対象者の方々と”一定の距離“を
おいて取材してきました。私が決めた”不文律”でした。それは、映画をご覧になる
観客の皆さんに「取材する側と取材される側」との間に、何らかの”利害“の気持ち
を感じないように考え、見ていただきたいという思いからでした。

 しかし今回は“禁”を破りました。50年前に長男を重篤な病気で亡くし、
満足に抱いてあげられないまま生後4か月で逝ってしまった”無念“を今も後悔
なさっていることを何度も撮影させていただき、「長男がカネミ油症だった」ことの
証(あかし)が欲しい、長男の墓前に伝えたいという思いを聞いて、今年2月に
研究者の方々のご意見をいただき、長崎県庁に申請を出しました。

 書面に書かれているのは、(カネミ油症)の認定はできない。
その理由は、カネミ油症の認定は2つのみ。

検診結果(ダイオキシン類の血中濃度)に基づかない
同居家族(1968年12月31日までに生まれた)であること

 いずれもカネミ油症事件から5年後に生まれた長男には該当しません。
どだい、検診すら受けられないまま、亡くなっているのですから。
でもここに、いくつかの“疑義”があります。
それについては次回通信㊸で延べたいと思います。

                  映画監督  稲塚秀孝

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