「へその緒プロジェクト」通信⑰

 カネミ油を口にした母親から10年以内
 に産まれた子にはダイオキシン被害がある!


 長崎県五島列島、奈留島に住む岩村定子さんから聞いた話。
それは九州大学油症治療研究班の班長(当時)の言葉である。
それは「カネミ油を口にした母親から10年以内に産まれた
子にはダイオキシン被害がある」と。

 岩村さんがカネミ油を口にしたのは、1968年。
1973年に第一子、2年後に第二子、その2年後に第三子、
その間9年である。第一子は生後4カ月で死亡。
口蓋口唇裂、肛門異常、心臓病などが重なった。

 今日九州大学カネミ治療センターの資料室で、「福岡医学雑誌」の
バックナンバーを見比べてみた。当該班長の言葉は見つからなかった。

 そして2009年以来、「へその緒」研究がなされていないことも明らかに
なった。そもそもカネミ油症事件が世の中に伝わり、「黒い赤ちゃん」が
産まれていた1970年頃、母親から子に毒性が移行していないか?
想像力が働かなかったのだろうか?「へその緒」を調べてみようとは
ならなかったのか?不思議でならない。医師も研究者も原因究明と治療法を
捜そうと思ったに違いない。

 昨年12月から「へその緒プロジェクト」が開始した。事件発生から56年が
経過している。このプロジェクトからの今後提案を世に送り出すことで、
失われた”時間“を少しでも取り戻したい。

         映画監督 稲塚秀孝

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