「へその緒プロジェクト」通信⑭

  日本の医学界に”奇跡“を起こしたい
~「へその緒プロジェクト」のロードマップへの道~

 「胎児性カネミ油症病」という新たな病名の提示が何を
意味するのか?信頼する医師、研究者との会話が行われている。

 家族で同じ「カネミオイル」に混入したダイオキシン類(PCDF)を
食べていながら、被害者認定、未認定に峻別されている不条理。

 毒の油を口にした母親から胎盤を通して新生児(子)に障害を持って生まれた
にもかかわらず、ダイオキシン類の血中濃度の数値だけで峻別される不合理。

 九州大学油症治療研究センターの元班長は、「ダイオキシン類を摂取した
母親から10年ほどの間に生まれた子どもには、何らかの障害がおき、
それはカネミ油症が原因と考えられる」と被害者に伝えている。

 私が取材した、その母親は毒の油を口にしたのは19歳の時。5年後の24歳で
長男を出産し、その後2年ごとに、長女、次男を持つことになった。まさに10年
以内に3人の子宝を得たのである。

 長男は生後4カ月で死亡。口唇口蓋裂や肛門がない状態で生まれた子だった。
そして今40代後半の2人のお子さんは、一人は虚弱体質で、身長が伸びず、
もう一人は内臓疾患に悩んでいるという。毎年行われている検診の結果では、
カネミ油症被害者と認定されていない。母親と父親は認定されている。

 こうした例は、ありふれたことで、決して例外ではない。
生まれた時に、へその緒のダイオキシン数値を測ることも、血液検査も受ける
仕組みがなかったことで、何もかも“ない”ことにしてはいけない。

 この映画製作と「へその緒プロジェクト」とは、並行で進行させるロードマップ
を作成中である。
 カネミ油症事件に”奇跡”を起こらせるために、これから奮闘しなくてはいけない、
と肝に銘じている。

                  映画監督   稲塚秀孝

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