「へその緒プロジェクト」通信⑪

  へその緒における母親―胎盤―胎児の関係性
~”胎児毒性“から”胎児性カネミ油症病“に移行する~

 1月12日午前、福岡で行った記者懇談会で、宮田先生(摂南大学名誉教授)は“胎児毒性”という言葉を用いている。

宮田秀明摂南大学名誉教授

 また昨年12月に宮田先生にまとめていただいた「油症被害者の次世代以降の子孫を対象とした
汚染実態を究明するための『保存さい帯(へその緒)』試料の有効性」の文章には、

◆胎児は環境汚染物質に対する感受性が成人よりも10倍程度高いと推定される
◆カネミ油症の原因物質である残留性の強いダイオキシン類は、原因油を直接摂取した当事者だけ
 でなく、次世代子孫(子や孫)にも有毒性を及ぼす
◆次世代胎児の汚染実態を究明することが極めて重要である
(しかし、被害者の次世代子孫を対象として、出生時における血液の分析が行われていない)
◆「保存さい帯(へその緒)は、新生児の出生時における汚染実態を把握するための最適な試料と
  考えられる
◆さい帯の原因油物質濃度は、出産時点での母親から新生児の体内に移行する原因物質濃度を反映
 しているものと推察できる

と書かれている。しかも2009年5月「福岡医学雑誌」に掲載された「油症患者の保存さい帯
(へその緒)中のダイオキシン類濃度」には、「油症原因物質の中で最も毒性と残留性が強い
五塩化ジベンゾフランが、湯症患者のさい帯に高濃度で残留しており、その濃度は健常者
(非汚染者の約40倍に達する」と福岡県保健環境研究所の梶原淳睦氏(当時)の研究で実証
されている。

 そこまでわかっているにもかかわらず、厚労省と九州大学油症治療研究班は、その後「へそ
の緒」研究に”ふた“をしてしまったのである。一旦葬り去ったのである。それ以来、15年が経過
している。 今回「へその緒プロジェクト」では、閉ざされていた「へその緒」研究・検証の
”扉“を開こうと考えている。

皆さんは、「胎児性水俣病」を知っているだろうか?
汚染された魚を直接食べていなくとも、妊娠中に母親がメチル水銀の魚を食べていると、へその緒
を通じて胎児の体内に入り、水俣病となって産まれてくるのです。胎児性水俣病のお子さんは、
脳が発育しなかったり、脳の神経細胞が破壊され、重い症状の場合、幼いうちに亡くなっています。

 宮田先生が話す“胎児毒性”は、水俣病だけでなくカネミ油症にもあったのではないか?
そこを追及することが「胎児性カネミ油症病」という新たな病名(指標)を見つけ、
告知することになると考えたのです。

 既にこの通信で紹介した、口唇口蓋裂、肛門がない状態、心臓疾患などで1973年8月に生まれ、わずか生後4カ月で亡くなった、岩村満広さん(長崎県五島市奈留)こそ、その「胎児性カネミ油症病」”証明“に違いないのです。

 母親の定子さんは、2013年に九大油症治療研究班のへその緒の調査を依頼し、異常な数値が検出されたデータを今も大切に保管しています。

 ぜひ今後の推移にご注目願いたいと思います。

                           映画監督  稲塚秀孝

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