「へその緒プロジェクト」通信⑩

 第22回三者協議・番外編
 ~カネミ倉庫からの連絡~

 一昨日(1月30日)午後、カネミ倉庫の総務部長から電話が入った。

 1月13日の三者協議終了後、帰り際に部長に私の名刺を渡し、
「今日は加藤社長が体調不良でお休みでしたが、ドキュメンタリー映画の中で
お話をお聞きしたいので、お伝え願います。改めてご連絡させていただきます」
と伝えた。部長は「社長はおそらく取材は受けないと思いますが、こういうお話が
あったことは伝えておきます」と言い残して帰った。

 翌週、レターパックライトに、取材依頼書、企画提案書、当社プロフィールと
DVDを2枚(「奇跡の子どもたち」「仲代達矢”役者”を生きる」)入れ、
カネミ倉庫 加藤大明社長あてに送った。取材依頼書には、
 率直なお話が聞きたい。国とPCB製造企業「カネカ」への思い

  1. ドキュメンタリ映画(90分想定)の中で、5分間は流したい
  2. 最終編集前に、映画で使わせていただくインタビュー内容の確認をしていただきたい

以上を書き込んだ。

 取材申し込みの時は、後々トラブルにならないように、率直に伝えることにしている。
映画公開が前提なので、日本中で、さまざまな人々がご覧になる。
従って、後に禍根は残したくないと考えた。曖昧なことは言えない。
映像はありのままを描き出す。取材対象者の喜び、怒り、悲しみをほぼそのままに表すと思う。

 部長の答えは、予想通り「取材はお断りしたい」という返事。
「私はこの会社に入って短いですし、カネミ油症事件の時は生まれていませんでした」
確か40代前半のようにお見受けした。
「加藤社長は以前から、『カネカは札束(※)で被害者に対し、その代わり自分たちの責任を免除
された』ことに憤りを持っていたことは事実です。
しかしわが社は(カネミ油症事件の)加害企業ですし、何を言うかと思われることはできないです」
※カネカは最高裁判所の和解勧告に応じ、補償金の意味を持った見舞金を被害者の方々に払い、
 責任は免除された。今では一切責任の追及を拒否し続けている。

 部長は丁寧にお話しくださった。そして「送っていただいたDVDはどうしましょうか?
仲代さんのDVDもあって・・」と聞かれ、私は「お時間のある時にご覧ください」と伝えた。
そして
「こうしてお電話をいただき、お話の内容は分かりました。ただここ数カ月の間で、
カネミ油症事件に関して、何らかの変化というか、動きがあるかもしれません。その時は
改めてご連絡させてください」と話して、電話を切った。

 映画の製作委員会として、どのような動きができるだろうか?
「賽はこちらに投げられた」と思った。何とか”答え”を出さないといけない。

                  映画監督  稲塚秀孝

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