「へその緒プロジェクト」通信⑥ 

 カネミ倉庫加藤大明社長不在の波紋
   ~第22回三者協議から読み解く(2)~

 1月12日「油症対策委員会」に続いて、翌日1月13日朝9時30分から「第22回三者協議」が
福岡県合同庁舎内で開かれました。

 三者協議のメンバーは、
◆国(厚生労働省、農林水産省)
◆カネミ倉庫(カネミオイル製造会社)
◆被害者団体「カネミ油症被害者全国連絡会」
 全14団体のうち、この日は9団体が参加した。

 大会議室の参加者が入場すると、冒頭撮影の時間である。その時気付いたのだが、カネミ
倉庫隻の真ん中に陣取るはずの加藤大明社長の姿が見当たらない。体調不良のため、欠席と
いうのだ。会議は思いがけない展開となった。私達「報道関係者」は別室のモニターを通じ
て、会議をオンラインで見ることになった。

 カネミ倉庫 加藤大明社長は、1968年の「カネミ油症事件」発生時に社長だった加藤三之輔
氏の息子で、当時は小学生。学校では「人殺し会社の息子」といじめられたと語っています。
父の三之輔氏は、生粋の右翼思想の持主で、「君が代」を社員に歌わせていたと言います。

  今、カネミ倉庫は認定被害者に対し、医療費約1億円と一時金を年5万円支払っています。
その原資は主に、国(農林水産省)から政府米を預かることで得る倉庫代が充てられており、
国は被害者に対して、カネミ倉庫を通じて支払う、いわば「迂回融資」のようないびつな形
となっているのです。なぜ国民の「食の安心、安全」を揺るがせた「カネミ油症事件」に
対し、国が矢面に立とうとしないのか?水俣病事件に始まる、さまざまな公害事件に対する
”不作為“と”責任回避“に憤りを感じます。

 その加藤社長は前回の「第21回三者協議」(2023年6月24日)において、政府米の保管料
に約1億円の余剰金があるとし、被害者団体(「カネミ油症被害者全国連絡会」)から要望が
あれば、何らかの形で支払いたい、ただ農水省の了解がいるかもしれないと公言したのです。

 そこで前日の全国連絡会の検討会でも、「加藤社長に対し、余剰金を被害者に還元するよう
に申し入れよう」という流れになっていたのですが、当日朝加藤社長が「体調不良で三者協議
を欠席」という情報が流れ、雲行きが怪しくなったのです。

 全国連絡会は、前回の加藤社長の発言を引き、農水省に余剰金の凍結解除、つまり被害者側
への支払を迫りましたが、担当者は「今後検討する」と終始繰り返すばかり。「いつ回答がで
きるのか?」の質問に対しても「今後検討する」の一点張りで、堂々巡りとなってしまったの
です。

農水省の担当者は、ご覧の方でした。

カネミ倉庫から出席していた経理部長、顧問弁護士も答えることをしませんでした。何のための
「三者協議」なのか?被害者の方々にとっては、”徒労感“が残る結果となりました。

                    映画監督 稲塚秀孝

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