「へその緒プロジェクト」通信②

国(厚生労働省)と九州大学油症治療班の不作為を糾す!

 1月12日(金)「へその緒プロジェクト」立ち上げの記者懇談会を博多で開催しました。
 (レジメ

 発端は2カ月前の昨年11月9日。大阪と京都に境目に位置する摂南大学本館4階、薬学部内で宮田秀明名誉教授にインタビューをいたしました。宮田さんは「今カネミ油症被害者の認定基準は、ダイオキシン類の血中濃度になっているが、私は『へその緒』の数値によって、次世代(子や孫世代)も救済されるのではないかと思う」と語りました。

 その後、宮田さんにはできる限り一般の方々にもわかるように解説文を書いていただき、この日に備えました。

 12日、宮田さんは「胎児期は環境汚染物質や化学物質の影響を受けやすく、胎児は成人に比べ10倍近い感受性が高いと推定される」と述べ、子や孫への影響を明らかにするにはへその緒が有効である、と話しました。

 九州大学油症治療班は、2009年に「へその緒」を調べて、2つの報告をまとめました。一つは宮田さんをリーダーとした摂南大学薬学部、もう一つは長山淳哉准教授を中心とした九大と福岡県保健環境研究所の合同チームでした。その報告の骨子は、子や孫の世代にダイオキシン類の汚染度が高い、というものでした。(2006年 関連新聞記事1

 しかしながら、そこから15年間、へその緒の研究、検証は止まったままです。宮田さんに聞きました。「なぜへその緒の研究は止まったままなのですか?」と。宮田さんは「それは研究の中心にいた長山先生が退職されたからです」と言うのです。長山先生は2012年に停年退職しており、国の指示を受けた九大油症治療班は、へその緒研究に“ふた”をしたのです。つまり国と九大が”不作為“という”隠蔽“をしたのです。

 そして2018年に長山淳哉氏が語った記事を見つけました。お読みください。


へその緒 胎児への影響重視 カネミ油症 次世代の今
長山氏「国、研究班は放置」
(2018/10/14 長崎新聞社オンライン記事 許諾済転載)

 カネミ油症の症状は世代を超えて引き継がれているように見えるが、全国油症治療研究班は明確な答えを示せていない。一方、元班員で自らの研究により患者の子のへその緒から原因物質のダイオキシン類ポリ塩化ジベンゾフラン(PCDF)を検出した長山淳哉(70)=高知市=は「化学物質の影響を一番受けるのは胎児」と指摘する。

「胎児期にPCDFに暴露したことが証明されても研究班は患者と認めない」
と批判する長山氏=高知市

 元九州大大学院准教授の長山は2012年までの約30年間、研究班に在籍。同大学院生だった1974年、PCDFが油症の主因であると突き止めたが、研究班が診断基準に反映したのは30年後の04年。その間、患者の体内のPCDFは排出され、血中濃度は低下した。長山は「PCDFを中心に研究するよう内部で訴え続けたが、国や研究班は放置した。その責任は大きい」と憤る。

 研究班は今でこそPCDFの血中濃度を油症の重要な所見に挙げ、次世代患者の認定にも当てはめる。だが歳月が経過したことで、直接汚染油を食べた人でも既に濃度が下がり、認定されないままの患者は少なくない。長山は「今となっては血中濃度による科学的な認定はほぼ不可能。次世代の証明はなおさら難しいはずだ」と指摘する。

 そこで研究対象としたのがへその緒だった。認定患者の母親から生まれた人と、そうではない人のへその緒のPCDF濃度を測定。患者の子からは高濃度で検出し、10年までに胎児性油症の原因もPCDFであることを証明した。

 長山が注目するのは、化学物質に対する胎児の「感受性」だ。0・1ミリの受精卵が胎内で3キロに成長するまでにかかる時間は、わずか280日。「その急激な成長は精巧にプログラミングされているだけに、少量のPCDFでも影響は計り知れない」


 だが研究班は今も、へその緒内のPCDFの有無を診断基準に盛り込んでいない。そのため同じ油症の母親から生まれたきょうだいでも認定、未認定の差が生じている。長山が調査した3人きょうだいは黒い赤ちゃんとして生まれ、全員のへその緒からPCDFを検出したのに、認定は長男と長女だけ。次男は血中濃度が一般的な数値だとして未認定だったという。

 「胎児期に暴露したことを証明できた上、その後の健康状態が明らかに悪い人もいる。それなのに患者と認めようともしない」。血中濃度を「科学的根拠」と位置付け、これを盾に診断基準の見直しに向けた新たな研究に積極性を示さない研究班。長山は歯がゆさを募らせる。

 「遺伝子変異の有無などを含め、PCDFに特化した毒性やメカニズムの解明、治療法研究にもっと力を入れるべきだ」と強く訴えている。

=文中敬称略=



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