facebook記事(転載)

facebook記事の転載です。(藤原寿和)

 私が20年前から取り組んでいるカネミ油症事件の全面解決は、決してPCBやダイオキシン類で汚染されたライスオイルを食べた被害者だけの問題ではなく、世界でも北側の工業先進国の中で一番と言っても間違いがないほどの日本はダイオキシンの汚染大国です!

それは1970年代から母乳を保管してきた大阪の保健所の母乳中のダイオキシン類、その中にはカネミ油症の主たる原因物質のジベンゾフランの他にコプラナーPCB濃度も極めて高いことがわかってますので、世界でも高濃度に汚染された魚類を好んで食する日本の食生活や、世界でも焼却大国と言われた日本のごみ焼却場の影響を殆どの日本人は影響を受けてますので、決して他人事ではないはずだと思います。
 その汚染被害の実態を厚労省も環境省も専門家集団も疫学調査すらも行なうことなく、影響を否定しています!

 改めて今日的なダイオキシン問題を考えてみませんか!

                                 
 facebook記事の転載です。(稲塚秀孝)

1月27日(土)今日も快晴でした。

「カネミ油症」(西日本新聞刊1976年)を19歳から10年間取り続けたカメラマン、河野祐昭さんにお話を聞きました。カネミ油症被害者を撮影した方では、出色のカメラマンです。半世紀前に九州取材中に、建築現場のアルバイトで資金を作り、撮影を続けたこと、素晴らしいです。写真の記録は今では「歴史を刻んだ」ことになるのです。

河野さんは私と同じ年。しかも闘争に明け暮れた神田駿河台にあった同じ大学に在籍していたのです。何という偶然、何という運命でしょうか?

今週は、「しんぶん赤旗日曜版」に投稿した記事と、今日は朝日新聞夕刊に大きく、記事が掲載されました。カネミ油症被害者のすべての方々が救済されることを願って、活動いたします。映画へのご支援をお願いします。
 母と子の絆〜カネミ油症の真実
クラウドファンディングのページ      



岩村定子さんからのコメント

へその緒プロジェクト協力者 岩村定子さんからコメントを頂きました。
今日の朝日新聞デジタルにも関連する記事が載っています。
関連投稿:●岩村定子さんの想いは深く!1月10日)
     ●「へその緒」を預かりました1月8日)

  「へその緒プロジェクト」通信⑦

    厚労省と九州大学油症治療研究班の”関係性” 
 ~第22回三者協議から読み解く(3)~

  1月12日「油症対策委員会」に続いて、翌日1月13日朝9時30分から
  「第22回三者協議」が福岡県第2合同庁舎内で開かれました。

   三者協議のメンバーは、
  ◆国(厚生労働省、農林水産省)
   ◆カネミ倉庫(「カネミ油症」原因企業、カネミオイル製造会社)
  ◆被害者団体「カネミ油症被害者全国連絡会」
  全14団体のうち、この日は9団体が参加した。

   前回の通信⑥で書いたように、この日の三者協議にカネミ倉庫加藤大明社長は、
 体調不良を理由に欠席した。昨年6月に加藤社長が発言した
 「政府米の保管で余剰金が約1億円あり、被害者団体が求めるなら、支払う用意が
  ある。但し、農水省の了解がいるかも」
  と話していたことから、全国連絡会は農水省の担当者に迫った。担当者は
 「カネミ倉庫が毎年診療費を被害者に払い続けられるのか?見届けてゆく必要があり、
  余剰金に手を付けることは考えていない」
  全国連絡会側は、
 「ではカネミ倉庫がもしも経営不振に陥ったら、、国が肩代わりすることになるのか?」
  と質問しても、
  「仮定の質問には答えられない」「今後検討する」
  など曖昧な答弁を繰り返しているうちに、何の回答も方針も示されないまま、
  三者協議は12時30分過ぎに終了となった。

    前回の通信⑥で書いたように、この日の三者協議にカネミ倉庫加藤大明社長は、
  体調不良を理由に欠席した。昨年6月に加藤社長が発言した
 「政府米の保管で余剰金が約1億円あり、被害者団体が求めるなら、支払う用意が
  ある。但し、農水省の了解がいるかも」
  と話していたことから、全国連絡会は農水省の担当者に迫った。担当者は
 「カネミ倉庫が毎年診療費を被害者に払い続けられるのか?見届けてゆく必要があり、
  余剰金に手を付けることは考えていない」
  全国連絡会側は、
 「ではカネミ倉庫がもしも経営不振に陥ったら、、国が肩代わりすることになるのか?」
  と質問しても、
  「仮定の質問には答えられない」「今後検討する」
  など曖昧な答弁を繰り返しているうちに、何の回答も方針も示されないまま、
  三者協議は12時30分過ぎに終了となった。

   その後記者会見(いわゆるぶら下がり会見)が会議室で行われた。
  ここでも「余剰金の処理」に関してメディアの記者から質問が出たが、
  農水省の担当者の回答は同じ文言を繰り返すばかりだった。

   私は厚労省の担当者に質問を試みた。
  「カネミ油症のドキュメンタリー映画製作中のタキオンジャパン稲塚です。
  厚労省と九大油症治療班の関係性についてお聞きしたい。
  昨日油症対策員会後のぶら下がり会見で、辻班長は、油症班はデータを提
  出するが、認定基準の見直しや診断基準などについての提案をする立場になく、
  あくまで厚労省に資料を提出しているだけで、発言権は持っていないと
  おっしゃっていましたが、ざっくりと言うと厚労省と油症治療班の関係性は
  どうなっているのですか?」

   記者の皆さんの関心は、まじかに記事を掲載するために、何がこれまでと
  違うのか?何が始まるのか、始まらないのかなど、身近の興味と関心を呼ぶ
  ための質問となるのは止むを得ない。その点私はやや中長期的な視点で聞こう
  と考えたのである。

   厚労省の担当官は、あっさりと認めた。
  「九大の油症治療班が集め、まとめられた資料をいただいて、今後の政策を
   どのようにするか、予算を付けるのかは、私達厚労省の判断と役割だと
   考えています」

    つまり長年カネミ油症被害者と向き合い、検査を行い、被害者の苦悩や
   要望を知りうる九大油症治療班には、何ら問題解決ができない、と言って
   いるのである。全国連絡会の方々は、今も九大油症治療班に期待感を抱いて
   いるにも関わらずである。

    厚労省の担当者は、最後に
   「本省と油症治療班はそれぞれの役割分担によって、被害者の方々と向き合っていきます」
   と話したが、私にとっては
   「それは後の祭りでしょ」
    と思わざるを得ませんでした。

                          タキオンジャパン 稲塚秀孝

「へその緒プロジェクト」通信⑥ 

 カネミ倉庫加藤大明社長不在の波紋
   ~第22回三者協議から読み解く(2)~

 1月12日「油症対策委員会」に続いて、翌日1月13日朝9時30分から「第22回三者協議」が
福岡県合同庁舎内で開かれました。

 三者協議のメンバーは、
◆国(厚生労働省、農林水産省)
◆カネミ倉庫(カネミオイル製造会社)
◆被害者団体「カネミ油症被害者全国連絡会」
 全14団体のうち、この日は9団体が参加した。

 大会議室の参加者が入場すると、冒頭撮影の時間である。その時気付いたのだが、カネミ
倉庫隻の真ん中に陣取るはずの加藤大明社長の姿が見当たらない。体調不良のため、欠席と
いうのだ。会議は思いがけない展開となった。私達「報道関係者」は別室のモニターを通じ
て、会議をオンラインで見ることになった。

 カネミ倉庫 加藤大明社長は、1968年の「カネミ油症事件」発生時に社長だった加藤三之輔
氏の息子で、当時は小学生。学校では「人殺し会社の息子」といじめられたと語っています。
父の三之輔氏は、生粋の右翼思想の持主で、「君が代」を社員に歌わせていたと言います。

  今、カネミ倉庫は認定被害者に対し、医療費約1億円と一時金を年5万円支払っています。
その原資は主に、国(農林水産省)から政府米を預かることで得る倉庫代が充てられており、
国は被害者に対して、カネミ倉庫を通じて支払う、いわば「迂回融資」のようないびつな形
となっているのです。なぜ国民の「食の安心、安全」を揺るがせた「カネミ油症事件」に
対し、国が矢面に立とうとしないのか?水俣病事件に始まる、さまざまな公害事件に対する
”不作為“と”責任回避“に憤りを感じます。

 その加藤社長は前回の「第21回三者協議」(2023年6月24日)において、政府米の保管料
に約1億円の余剰金があるとし、被害者団体(「カネミ油症被害者全国連絡会」)から要望が
あれば、何らかの形で支払いたい、ただ農水省の了解がいるかもしれないと公言したのです。

 そこで前日の全国連絡会の検討会でも、「加藤社長に対し、余剰金を被害者に還元するよう
に申し入れよう」という流れになっていたのですが、当日朝加藤社長が「体調不良で三者協議
を欠席」という情報が流れ、雲行きが怪しくなったのです。

 全国連絡会は、前回の加藤社長の発言を引き、農水省に余剰金の凍結解除、つまり被害者側
への支払を迫りましたが、担当者は「今後検討する」と終始繰り返すばかり。「いつ回答がで
きるのか?」の質問に対しても「今後検討する」の一点張りで、堂々巡りとなってしまったの
です。

農水省の担当者は、ご覧の方でした。

カネミ倉庫から出席していた経理部長、顧問弁護士も答えることをしませんでした。何のための
「三者協議」なのか?被害者の方々にとっては、”徒労感“が残る結果となりました。

                    映画監督 稲塚秀孝

「へその緒プロジェクト」通信⑤

  参加拒否からの撤回とカネミ倉庫加藤大明社長不在による波紋
   ~第22回三者協議から読み解く(1)~

 前回お伝えした1月12日「油症対策委員会」に続いて、翌日13日朝9時30分から「第22回三者協議」が福岡県合同庁舎内で開かれました。

 映画「母と子の絆~カネミ油症の真実」製作委員会は、昨年12月27日に厚労省健康衛生局総務課のHPに告示されてすぐ、参加申請を申し込んだ。新年1月4日に厚労省の業務開始後になって、なかなか参加許可の返信がなかった。地元福岡のメディアの記者の方に許可の連絡があったと聞いて、不安になった時、1月11日になって、「報道関係者ではない」という理由で、参加拒否の連絡が入った。

 そこで私は夜のうちに、映画製作委員会の幹事社であるタキオンジャパンは、ドキュメンタリー映画製作12本のうち、8本に文化庁及び日本文化芸術振興会の記録映画補助金を得ていること、民放局のドキュメンタリー番組及びニュース特集を製作している事実を克明に書いたリポートを送り、翌12日(三者協議前日)厚生労働省健康・衛生局総務課指導係に直接電話をしたところ、担当課長は能登地震救援のため、係長はリモート勤務のため不在だったが、男性の担当者に「昨晩送ったメール内容を精査して、明日の三者協議に参加できるようにしてほしい」と伝えた。ギリギリの交渉である。

 年末の申請には、会社名と参加者名で、記者クラブに所属するメディアは、それで十分だったのだろう。その日夕方、ようやく「明日の三者協議の参加はOK」との連絡が入った。当日はそれでも不安だったので、開始1時間前の8時30分には現場に到着。無事福岡県庁の庁舎内に入った。

 三者協議のメンバーは、
◆国(厚生労働省、農林水産省)
◆カネミ倉庫(カネミオイル製造者)
◆被害者団体「カネミ油症被害者全国連絡会」

 全14団体のうち、この日は9団体が参加した。大会議室の参加者が入場すると、冒頭撮影の時間である。今回私は動画撮影に専念し、福岡在住の知人に写真撮影をお願いした。わずか2~3分の間のことなので、手分けしたのである。その時撮影した写真はご覧の通りである。

 その時気付いたのだが、カネミ倉庫隻の真ん中に陣取るはずの加藤大明社長の姿が見当たらない。体調不良のため、欠席というのだ。会議は思いがけないというか、思う通りの展開となった。私達「報道関係者」は別室のモニターを通じて、会議をオンラインで見ることになった。

                                映画監督  稲塚秀孝

「へその緒プロジェクト通信」④

 へその緒プロジェクトをどのように推進してゆくか?
 今日は、何故へその緒の調査が途絶したかについて考察します。

 2009年福岡医学雑誌(九州大学カネミ油症治療研究班)の報告の中に、へその緒に関する2件があったことは既に書きました。報告に関わった宮田秀明摂南大学名誉教授は、もう一つの報告のリーダーだった長山淳哉准教授が間もなく停年退職されたから、と1月12日記者懇談会で話しました。

 私は国(厚生労働省)が九州大学側に「これ以上へその緒に触れるな」と圧力をかけたと確信しています。そう考える根拠は、1983年までさかのぼります。2001年3月27日参議院環境委員会(当時)のやり取りです。まず政府参考人、農林省生産局畜産部長は、
「1983年に厚生省油症研究班がカネミ油症の原因はダイオキシン類である、と。農林水産省としても当該研究班の発表を承知していたと考えます。

清水澄子委員:厚労省に伺います。3月5日の毎日新聞によると、厚生省の油症研究班の小栗さんが 1983年にカネミ油症はダイオキシンだと発表していますが、厚生省はダイオキシンと結び付けるなと指示されたと出ています。厚生省はなぜ公表と対策を抑えたのか?答えてください。

尾嵜新平(政府参考人):1983年の時点でPCBとプラスダイオキシン類との複合汚染であるということで、治療法の研究あるいはその検診をしておりますので、そういうものを考えずにダイオキシン類の影響を研修するなと指示しておりませんし、(小栗)班長もそういう認識だったと思います。ただダイオキシン類だけを取り出した研究は別途あるので、臨床的な観点からの治療法の研究など、そういった観点の研究を中心にしていただきたいと事務方はお願いしていたようです。(ここは完全な議論のすり替えで、やはりダイオキシン類の研究はするな、という指示)

☆2001年3月5日の毎日新聞では、 
 カネミ油症 病状把握2割以下 厚労省 原因のダイオキシン検診せず の見出し。


 九州大学油症治療班長小栗一太さんは、「厚生労働省に、油症班は(ダイオキシン問題などと)混同しないで研究してください、と言われている」とはっきり厚労省からの指示を明言しています。

 この時と同じように、2009年5月「福岡医学雑誌」にへその緒に関する2つの報告がなされたことで、厚労省が「へその緒の研究を続けるな」と指したことを今後「へその緒プロジェクト」のなかで明らかにしたいと思います。

 次回は1月13日に行われた「三者協議」から紐解きます。

                              映画監督 稲塚秀孝

「へその緒プロジェクト」通信③

 一体、何をしようとしているのか?第25回油症対策委員会から読み解く

 「へその緒プロジェクト通信」②を掲載した後、水俣病、カネミ油症事件の両方の研究、診察に関わっている藤野糺(ふじの ただし)医師(水俣協立病院名誉院長)からメールが届きました。

 「へその緒の分析は水俣病の経験からも、汚染の実態を知る上で大事だと思います。今回の(12日辻 学九州大学油症治療研究班長ぶら下がり取材)記者を通じてのやり取りが本当とすれば、はやくも辻先生の人格が見えてきたと言えるようです。今後稲塚さんと記者の方が、もう一度辻先生にお会いし、少なくとも訂正させることが必要だと思います。辻先生と一緒にやれるかどうかの分かれ道だと思います。その記者さんを大事にしてください」と。

 実に含蓄のある藤野医師の言葉だと思います。同じ医師として、信じたいが、どうなのか?という思いが伝わってきます。また同じぶら下がり取材を共にした記者(メディア)を大事してください、というご配慮に感謝です。

 油症対策委員会は法律により、毎年2回開かれています。今回は1月12日(金)13:30~15:30まで、福岡県福岡市博多駅筑紫口前のホテルで行われました。因みに翌1月13日(土)9:30~三者協議が福岡県第2合同庁舎で開かれましたが、こちらは次回にお伝えします。

 第25回油症対策委員会の参加者は、九州大学油症治療研究班、厚生労働省の担当者、カネミ油症被害者全国連絡会、メディア(新聞・放送局)は撮影のみで、会議終了後のぶら下がり取材がありました。

 議題は3つ。
◆令和5年度健康実態調査結果報告
◆令和6年度健康実態調査業(案)の提示などについて
◆油症次世代調査について

 いつも思うのですが、令和を廃止して、官民とも西暦にしてほしい。切に望みます。分厚い紙が配布されますが、ただただ読み上げるだけです。約1時間以上続きます。今回 映画「母と子の絆~カネミ油症の真実」製作委員会は、報道関係者ではない、という理由で、会場内に入ることが出来ませんでした。屈辱的な対応で、きつく抗議しましたが、拒否は変わりませんでした。

 参加した記者の方々、被害者の方々から伺った内容では、カネミ油症被害者(患者)のダイオキシン類の血中濃度と、子や孫ら次世代が糖尿病、肥満症、甲状腺の疾病になりやすいかどうかについて相関関係は見られなかったという報告。今後歯牙欠損について解析する、と正直実りの乏しい報告になった。

 参加したカネミ油症被害者からは、次世代救済を望む声が、会議後半の質疑で出されたが、辻班長は「次世代には何かしらの健康被害があると考えている」という曖昧な、不誠実な回答だったという。

 ぶら下がりに記者が「支援者(映画製作委員会のこと)が発表した『へその緒プロジェクト』と質問したことについては、「さい帯血に含まれるダイオキシン類の血中濃度が高いことは既に分かっている。ただへその緒の胎盤によって、かなり減少している」と答えた。なぜ「へその緒」を調べないかについては、記者の追加質問が出なかったことから、課題を積み残す結果となった。

 次回の第26回油症対策委員会は、本年6月21日の予定である。

                            映画監督 稲塚秀孝

「へその緒プロジェクト」通信②

国(厚生労働省)と九州大学油症治療班の不作為を糾す!

 1月12日(金)「へその緒プロジェクト」立ち上げの記者懇談会を博多で開催しました。
 (レジメ

 発端は2カ月前の昨年11月9日。大阪と京都に境目に位置する摂南大学本館4階、薬学部内で宮田秀明名誉教授にインタビューをいたしました。宮田さんは「今カネミ油症被害者の認定基準は、ダイオキシン類の血中濃度になっているが、私は『へその緒』の数値によって、次世代(子や孫世代)も救済されるのではないかと思う」と語りました。

 その後、宮田さんにはできる限り一般の方々にもわかるように解説文を書いていただき、この日に備えました。

 12日、宮田さんは「胎児期は環境汚染物質や化学物質の影響を受けやすく、胎児は成人に比べ10倍近い感受性が高いと推定される」と述べ、子や孫への影響を明らかにするにはへその緒が有効である、と話しました。

 九州大学油症治療班は、2009年に「へその緒」を調べて、2つの報告をまとめました。一つは宮田さんをリーダーとした摂南大学薬学部、もう一つは長山淳哉准教授を中心とした九大と福岡県保健環境研究所の合同チームでした。その報告の骨子は、子や孫の世代にダイオキシン類の汚染度が高い、というものでした。(2006年 関連新聞記事1

 しかしながら、そこから15年間、へその緒の研究、検証は止まったままです。宮田さんに聞きました。「なぜへその緒の研究は止まったままなのですか?」と。宮田さんは「それは研究の中心にいた長山先生が退職されたからです」と言うのです。長山先生は2012年に停年退職しており、国の指示を受けた九大油症治療班は、へその緒研究に“ふた”をしたのです。つまり国と九大が”不作為“という”隠蔽“をしたのです。

 そして2018年に長山淳哉氏が語った記事を見つけました。お読みください。


へその緒 胎児への影響重視 カネミ油症 次世代の今
長山氏「国、研究班は放置」
(2018/10/14 長崎新聞社オンライン記事 許諾済転載)

 カネミ油症の症状は世代を超えて引き継がれているように見えるが、全国油症治療研究班は明確な答えを示せていない。一方、元班員で自らの研究により患者の子のへその緒から原因物質のダイオキシン類ポリ塩化ジベンゾフラン(PCDF)を検出した長山淳哉(70)=高知市=は「化学物質の影響を一番受けるのは胎児」と指摘する。

「胎児期にPCDFに暴露したことが証明されても研究班は患者と認めない」
と批判する長山氏=高知市

 元九州大大学院准教授の長山は2012年までの約30年間、研究班に在籍。同大学院生だった1974年、PCDFが油症の主因であると突き止めたが、研究班が診断基準に反映したのは30年後の04年。その間、患者の体内のPCDFは排出され、血中濃度は低下した。長山は「PCDFを中心に研究するよう内部で訴え続けたが、国や研究班は放置した。その責任は大きい」と憤る。

 研究班は今でこそPCDFの血中濃度を油症の重要な所見に挙げ、次世代患者の認定にも当てはめる。だが歳月が経過したことで、直接汚染油を食べた人でも既に濃度が下がり、認定されないままの患者は少なくない。長山は「今となっては血中濃度による科学的な認定はほぼ不可能。次世代の証明はなおさら難しいはずだ」と指摘する。

 そこで研究対象としたのがへその緒だった。認定患者の母親から生まれた人と、そうではない人のへその緒のPCDF濃度を測定。患者の子からは高濃度で検出し、10年までに胎児性油症の原因もPCDFであることを証明した。

 長山が注目するのは、化学物質に対する胎児の「感受性」だ。0・1ミリの受精卵が胎内で3キロに成長するまでにかかる時間は、わずか280日。「その急激な成長は精巧にプログラミングされているだけに、少量のPCDFでも影響は計り知れない」


 だが研究班は今も、へその緒内のPCDFの有無を診断基準に盛り込んでいない。そのため同じ油症の母親から生まれたきょうだいでも認定、未認定の差が生じている。長山が調査した3人きょうだいは黒い赤ちゃんとして生まれ、全員のへその緒からPCDFを検出したのに、認定は長男と長女だけ。次男は血中濃度が一般的な数値だとして未認定だったという。

 「胎児期に暴露したことを証明できた上、その後の健康状態が明らかに悪い人もいる。それなのに患者と認めようともしない」。血中濃度を「科学的根拠」と位置付け、これを盾に診断基準の見直しに向けた新たな研究に積極性を示さない研究班。長山は歯がゆさを募らせる。

 「遺伝子変異の有無などを含め、PCDFに特化した毒性やメカニズムの解明、治療法研究にもっと力を入れるべきだ」と強く訴えている。

=文中敬称略=



「へその緒プロジェクト」通信① (1月14日)

 一昨日12日(金)午前10時30分から「へその緒プロジェクト」立ち上げに関する記者懇談会を福岡市役所で行いました。

 カネミ油症被害者のへその緒を検査した経験を持つ宮田秀明さん(摂南大学名誉教授)が次のようにお話しました。

 「胎児期は環境汚染物質や化学物質の影響を受けやすく、胎児は成人に比べて感受性が10倍高いと推定される。子や子孫への影響を明らかにするには、へその緒が有効で、カネミ油症も同様である」と。

 その5時間後、博多駅筑紫口「オリエンタルホテル」3階では、第25回油症対策委員会が開催され、九州大学油症治療研究班辻 学(つじ がく)班長のぶら下がり会見がありました。

 午前の「へその緒プロジェクト」記者懇談会に出席していた記者の質問に対し、辻班長は、「(カネミ油症被害者の)母親の毒性は胎盤にほとんど吸収されて、子には届くのは低い」と述べました。他の記者も尋ねましたが、「へその緒を調べることに意味はない」と言わんばかりの答えでした。

 そこで稲塚は、本日 宮田先生に問い直してみました。宮田先生は、「母親の毒性は胎盤にほとんど吸収されて、子に届くのは低い」ということは全くの間違いです」とのお話でした。
 胎盤では分子量800以上の物質や細菌などは確かに除去されます。高分子のタンパク質はアミノ酸に分解するという消化分解機能があります。消化分解されたアミノ酸を始め、分子量800以下のダイオキシン類、環境汚染物質、脂肪やミネラル、脂肪酸などの栄養素は胎盤を経由して胎児に補給されます。とご返事をいただきました。

 今後「へその緒プロジェクト」では、九州大学油症治療研究班と各メディアに対して、「母親の毒性は胎盤にほとんど吸収されて、子に届くのは低い」ということの誤りを指摘していきたいと思います。 そしてカネミ油症被害者の認定基準が、ダイオキシン類の血中濃度にのみに限定されている事の見直し、「へその緒」の重要性、未認定被害者の救済に向けて活動して参りたいと思います。

                            映画監督        稲塚秀孝