「カネミ油症」編集通信⑨

~長崎で編集を考える~
 長崎に入って3日目。
第6回ナガサキ映画と朗読プロジェクト」の初日を迎えた。
(ポスター:上の行の第6回「ナガサキ・・」をクリックしてください)

何とか天気も持ちそうでよかった。
長崎の夏のこの時期は、蒸し暑い。
どんだけ汗が出るのか?と思えるほど。
 昨日は長崎セントラル劇場を訪ねる。
劇場は2階、オーナー兼支配人の女性が迎えてくれた。
「監督、久しぶりですね」そう、2022年秋公開の「役者として
生きる~無名塾第31期生の4人」以来なのだ。
 劇場を支えているのは、50代以上の女性の皆さん。
ほぼ100%“洋画”の上映会。シネコンにはかからない、様々な秀作が
見られる場所でもある。
 いつも「ドキュメンタリーは嫌いだから、ここでは掛けない」と
言われてきた。“映画館は楽しむ場所だから・・”が口癖である。
それでも「二重被爆」や「奇跡の子どもたち」などはきっちり2週間上映してくれた。
 「カネミ油症事件」はもちろんご存じ。五島に被害者が多いが、長崎市や諫早市
にも多く、身近な問題に違いない。
そして地元の長崎新聞が熱心に報道している。
2日前に長崎新聞に私が寄稿した誌面も読んでいて、
「監督が来ているのは知っていたから、来るかも?」と思っていたというのは、
憎い。何しろまだ映画は編集中で、完成していない。
でも、“(上映を)考えておきます”と。
 「ナガサキ映画と朗読プロジェクト」を終えたら、明日夜博多に戻り、編集も佳境となる。
      映画監督  稲塚秀孝

「カネミ油症」編集通信⑧

~編集前半戦から後半戦へ~
 7月7日から博多市内で始めている「カネミ油症」映画の
編集は前半戦を終え、およそ4時間の“固まり”となっている。
 今日7月18日から21日は、一年前から決まっている
第6回「ナガサキ映画と朗読プロジェクト」(7月21日・22日
長崎原爆資料館ホール)に取り組む。昨日の長崎新聞には、
例年通り寄稿させていただいた。

 「被爆体験の継承」を主要テーマに掲げ、故 山口彊さん(二重被爆者)
の「人間の世界に核はいらない」がキャッチでもある。
 一旦頭と身体は、映画と朗読プロジェクトに切り替えるが、常に
「カネミ油症」編集後半戦に向けて、映画の構成を考え続ける
予定だ。
 ようやく九州も「梅雨明け」となる中、五島列島の実景映像(ドローン)を
地元の皆さんにお願いし、力を借りる手はずが整った。
来週前半には、過去の映像とともに、映画のディテールを詰めて行く作業に
取り組む。
 基本は、「なぜ、いまカネミ油症なのか?」
既にカネミ油症事件から56年が経過した今、問い直す日本最大の食中毒事件の
実相に迫りたい。
   映画監督 稲塚秀孝

「カネミ油症」編集通信⑦

 ~日ごとの営み~
 編集も半ばに差し掛かろうとしているが、項目ブロックの整理に
手間取り、先が見えない状況が続いている。
 昨日の「博多山笠」は雨の中で繰り広げられ、湿気の高い日々が
続いている。
 宿舎として博多駅前のカプセルホテルは、WI―FIの精度が高く、
ワーキングスペースがあるので、眠くなったら眠り、起きたら
大浴場とサウナで汗を流し、バスで30分ほどの編集所に向かう。
編集所そばに北九州のコインランドリーチェーンがあるので、
そこは便利。
 「カネミ油症事件」は実に複雑で、人々の葛藤がすさまじい。
そして半世紀前の迸るような運動の“熱量”は今は全く残っていない。
感じられない。
 今、この映画が世に出ることの意味を連日追い求めている。
    映画監督   稲塚秀孝

「カネミ油症」編集通信⑥

~編集の“相棒”は最初の観客~
  7月7日から始まった博多での編集も、五島取材をはさんで
第6日目の朝を迎えた。
 今日からいよいよ「ペタペタ」が始まる。
「ペタペタ」とは、編集の項目を書いた紙を白板などの並べ、
編集の流れを作って行くプロセスで、これから際限もなく、
貼ったり、外したり、入れ替えしたりしながら、構成を
形作って行くことになる。

そしてすでに編集担当者とは、編集を進めるうえでの”用語“や”進行“に
ついて、すり合わせが済み、彼には「最初の観客」として、感想や意見を
聞きながら進めて行くことになる。

「母と子の絆・・」というタイトル(一年前に決めているのだが・・)
の意味は、カネミ油症被害者で、母親でもある5人の女性たちの生活と
証言から感じ取ってもらっている。
今日から17日までの4日間で、ほぼ3時間まで絞って行きたい。

   映画監督  稲塚秀孝

「カネミ油症」編集通信⑤

 ~臨機応変の日々~
 昨日朝、フェリー「太古」で五島市福江に到着。
あいにくの雨。しかも断続的に降り注ぐ。
カネミ油症被害者玉之浦分会、会長代理の山下さんに
お話を聞く。山下さんは先日、九州大学油症対策会議内で
「へその緒検査」を!と質問された。
山下さんの考えをじっくり聞いたのち、玉之浦支所で行われた
カネミ油症被害者の一斉検診会場へ。
 今回は40名ほどの方々が」受診。いわゆる認定、未認定の
方々が混在している。長崎県庁生活衛生課の担当者に話を聞く。
 井持浦教会や玉之浦の港の実景を撮影後、五島中央病院に向かい、
入院加療中の岩村定子さんへ、お手紙を届ける。面会可能なのは、
ご主人とお二人のお子さんのみ。
 奈留島のドローン撮影について、技術会社と相談。これから天候具合を
見ての撮影。初対面だが、そこは率直に相談することができました。
映像が月内に無事届くことを期待したいと思う。
 15時台のフェリーで奈留へ。雨はさらにひどい状態となる。
今回の実景撮影は諦めざるを得ない。編集の日程は決まっているので、
見極めをする、臨機応変の判断、決断が欠かせない。
 先日撮影に協力いただいた、地元の写真店の方に、相談のメールを送る。
今朝、雨は上がり、曇り空。予報では昼頃から雨らしい。
予定を早めて、昼のフェリーで長崎経由、高速バスで博多に向かう。
 明日からの編集再開に備えたいと思います。
         映画監督  稲塚秀孝

「カネミ油症」編集通信④

 ~発見が何より~
 2年前から何度も通ってきた五島市奈留の岩村定子さんは、今闘病を
重ねている。編集の画面で、一昨日からインタビューを見直すと、
頬がこけ、顔色もよくない。ここ10カ月で10㌔もやせたという。
元気を取り戻して欲しい。
 今日は15時に編集室を出て、JRで篠栗(ささぐり)駅に下車。
田中あつ子さんにお会いし、インタビューを行う。
かつて明治炭鉱の炭住跡に住んでおられる。ご主人を亡くし、子供たちは
独立して、一人住まい。お部屋はきれいに整頓されている。
 中学生の時、カネミ油を口にし、入退院を繰り返したと聞く。
5人兄弟の4番目で、一人だけ女性だったので、毎日のように炊事をしたのだと
いう。父は炭鉱、7人家族の食事は大皿に盛り、皆食べ盛りだから油を使う料理が
中心という。
 体中から、しぼりだすように「脂分」が出てくる。悪臭もひどい、おそらく
学校でいじめられたのだろうが、男勝りの迫力で、問題にしなかったらしい。
お子さん、お孫さん、曾孫さんを含めると20人、という。
「すべての子どもを守りたい」
それが母親の切なる思いだ、と私も思う。
 そして博多に戻り、23時45分発、五島行きのフェリー「太古丸」に乗船した。
ほぼ3週間前も乗ったが、WI-FIが航海中もほぼ通じるのがありがたい。
福江着は明日朝、8時15分。
 今日の編集で、いくつかの”発見“があった。
編集担当の伊野さんの前で、思わず手を叩き、びっくりさせてしまった。
こうした”発見”の積み重ねが、「編集の楽しみ」でもある。
「カネミ油症」映画の航海(公開)は、思いがけない展開を辿るかもしれない。
     映画監督   稲塚秀孝

「カネミ油症」編集通信③

~編集は生き物・日々変化する~
 7月7日から博多に編集拠点をおきました。
博多駅からバスで30分、三宅本町下車で徒歩3分。
映像製作会社の一角で、始まりました。
 今日は4日目。
約3年間の撮影素材を見直し、まずブロック編集から。
毎日9時から19時をめどに行います。
合間に奈留島のドローン映像や過去の映像の検索・交渉、
追加取材の段取り、ナレーターの手配など、やることは山積して
います。時間に追われて、見落としがないか?気にかかります。
 今晩遅く「太古丸」というフェリーで五島列島に向かいます。
明日五島市玉之浦、明後日は五島市奈留で「カネミ油症被害者」の
一斉検診(年1回)が行われますので、取材とインタビュー。
天候は今一つですが、実景も撮影したいと思います。
船中と奈留の「宮の森キャンプ場」のバンガローの2泊となります。
12日から編集再開です。
               映画監督 稲塚秀孝

「カネミ油症」編集通信②(7月8日)

朝日新聞 福岡本部  御中

 お世話になっております。

 映画「母と子の絆~カネミ油症の真実」の編集に昨日7月7日から博多市内で始めました。今回編集拠点を博多に置いたのは、追加取材を適宜行うためでもあります。7月10日~12日は、福岡市内、五島市玉之浦、奈留の一斉健診などの取材を行い、8月10日頃までに、完成させたいと考えています。関係者向け試写会は、9月半ば、全国公開は10月12日から順次行う予定ですので、改めてご案内申し上げます。

 一方「へその緒プロジェクト」については、岩村定子さんの3人のお子さん(故 長男満広さん、次男、長女さん)のへその緒を関西・四国の検査会社2社(共同で取り組み)に託しました。検査結果(9月初めと想定)が出次第、また途中経過を随時お伝えしてまいります。引き続きよろしくお願いいたします。
        タキオンジャパン 稲塚秀孝090-3433-6644 inazuka@takionjapan.onamae.jp

「カネミ油症」編集通信①

 今日(7月7日)から「母と子の絆~カネミ油症の真実」の編集が始まります。しかし、まだ撮影取材を続けたいと思っています。そこで今回は編集拠点を福岡県博多におくことにしました。博多にある映像技術会社の一角で行います。

 ドキュメンタリー映画の編集は、あらかじめ立てた構成案を基にしながら、映像を確認しながら、どんどん変化を重ねて行くものです。ですから編集が始まる直前では、ワクワク感がいっぱいです。最終的な映画の完成見込みは8月10日頃。どんな展開となるのか?大きな楽しみでもあります。

 とことん悩みながら、どのように映画ができるのか?皆さんにお伝えしてゆきたいと思います。ほぼ毎日、編集通信を発信、更新して参ります。どうぞよろしくお願いいたします。

    映画監督  稲塚秀孝

「カネミ油症」編集通信①

 今日(7月7日)から「母と子の絆~カネミ油症の真実」の編集が始まります。しかし、まだ撮影取材を続けたいと思っています。そこで今回は編集拠点を福岡県博多におくことにしました。博多にある映像技術会社の一角で行います。

 ドキュメンタリー映画の編集は、あらかじめ立てた構成案を基にしながら、映像を確認しながら、どんどん変化を重ねて行くものです。ですから編集が始まる直前では、ワクワク感がいっぱいです。最終的な映画の完成見込みは8月10日頃。どんな展開となるのか?大きな楽しみでもあります。

 とことん悩みながら、どのように映画ができるのか?皆さんにお伝えしてゆきたいと思います。ほぼ毎日、編集通信を発信、更新して参ります。どうぞよろしくお願いいたします。

    映画監督  稲塚秀孝