紙の街の小さな新聞ひらく

稲塚監督が”紙の街の小さな新聞ひらく”に先に投稿した記事①に続き投稿した今回投稿した記事②を紹介します。
 記事①記録映画「カネミ油症の真実~母と子の絆」「取材の経緯」(2023年11月号)
 記事② ドキュメンタリーは社会活動である(2024年10月号)

「カネミ油症」上映通信⑭

 ~カネミ油症事件の”グラウンドゼロ“から~

 福岡県北九州市黒崎の小さな会議室に9名の方が集まり、今日午後2時から「母と子の絆~カネミ油症の真実」上映会が行われました。

 上映後に、会場とオンラインでつなぎ、小一時間ほど、会場の方々とお話ができました。主催してくださったのは、原田和明(北九州市立大学)さんで、映画にもご協力いただいた方です。

 北九州市小倉には、カネミ油症事件の原因企業、カネミ倉庫が現存しており、被害者の方々も多くいて、かつては抗議行動を展開していました。原田さんは、「ここ北九州はカネミ油症事件の「“グラウンドゼロ“だ」と呼んでいます。加害者も被害者も半世紀に渡って闘い、生き続ける場所です。

 次回の追加上映会は10月10日(木)19時からです。10月10日は朝日新西部本社版の片隅で「奇病発生?」と記事掲載(1968年)され、カネミ油症事件が発覚した日。56年が経過した、この日を「母と子の絆~カネミ油症の真実」の上映日にしています。私は北海道苫小牧から会場の皆さんとお話しすることになります。

 こうしてオンラインで映画をご覧になった皆さんと、上映後の交流を図る試みを広げてゆきたいと思います。
                    映画監督  稲塚秀孝

食品公害「カネミ油症」のいま 「終わった問題ではない」と映画に

朝日新聞デジタル版有料記事(9月29日)
食品公害「カネミ油症」のいま 「終わった問題ではない」と映画に

 国内最大規模の食品公害について伝える記録映画「母と子の絆 カネミ油症の真実」が、10月から関西を皮切りに劇場で公開される。国や原因企業による救済が不十分だと訴え、子や孫への影響を心配し続ける親たち。そんな姿を前にした監督が、今も苦しむ人や研究者らの証言を一つひとつ集めた。

 1968年、カネミ倉庫(北九州市)製の食用の米ぬか油にダイオキシン類が混入する「カネミ油症」が発覚した。皮膚や内臓の疾患、全身の倦怠(けんたい)感などの被害の訴えは、長崎県や福岡県など西日本一帯から約1万4千人に上った。

 だが、厚生労働省によると、今年3月末時点の認定患者は累計2377人。患者と認定され、カネミ倉庫から見舞金などを受け取るには、血液中の汚染物質の濃度が一定基準を超えなければならない。症状を自覚していても認定されない人たちが国や企業に対し、救済を求めている。

 今回の映画を制作・監督した稲塚秀孝さん(74)はこれまで、広島と長崎で二重被爆した人や東京電力福島第一原発事故に遭った人たちなどを主人公に映画を作ってきた。
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「カネミ油症」上映通信⑬

 ~摂南大学薬学部上映会②~

 26日に行われた摂南大学薬学部上映会で書いていただいた感想用紙は212通ありました。みなさん鉛筆書きのため、明るい昼間に見ないと夜はよく読めません。

 いま抜き書きを進めています。上映後担当部長の先生は、
「途中で会場を出る予定でしたが、最後まで観ることができました。皆さんに3点について、お話し
します」と語り始めました。

 その内容は、
1.カネミ油症事件を始めて知ったと思いますが、今日知ったということを、この内容を忘れないでほしい。今後どういう道に進もうが、きっと役に立つと思う。

2.56年前の日本で起こった食中毒事件ですが、今もさまざまな食中毒事件は起きている。当時毒性化学物質による食中毒は珍しかったに違いない。しかし今は、いつ起きてもおかしくないので、日常的にニュースなどに気を付けてください。
3.最後に、私はカネミ油症事件が起きた1968年生まれです。従って、自分が生まれた年に、このような大変な事件が起きていたことを知って驚いたし、これからも皆さんや後輩の方々に伝えてゆかなければ、と思いました。

 というもので、短い時間ながら、素敵なお話だったと思います。今回の上映会では、知ること、伝えることの大切さを、改めて再確認いたしました。
      映画監督   稲塚秀孝

「カネミ油症」上映通信⑫

 ~9月26日 摂南大学薬学部上映会①~

 9月26日(木)摂南大学薬学部1回生の上映会を行った。若い世代の声を聴きたい、の願いをかなえて下さった大学関係者の皆さんに感謝を申し上げます。

 再び30度を超す日の午後、上映会場は3号館1階の大講義室に、200名を越える学生の皆さんが集合。
上映に際してお願いした映画の感想用紙は、212通に及んだ。

 カネミ油症事件が起こったのは、1968年(昭和43年)。18歳~の学生にとっては、祖父の時代の話に違いない。どのようにこの映画を観てくれたのか?今後丹念に感想用紙を読み進めてみたいと思う。

 日本中に薬学部があるのは、81大学。国立14、公立6,私立61校に上る。一方医学部は82大学。国立42、公立8,私立31、それに防衛医大が加わる。

 カネミ油症事件は、カネミライスオイルに毒性物質ダイオキシン類が混入した化学物質が原因となる
特異な事件だが、国民にとって「食の安心、安全」に関わるもので、ぜひ学生の皆さんに知っていただきたい、と短い挨拶をさせていただいて、映画上映が始まった。

    映画監督 稲塚秀孝

「カネミ油症」上映通信⑪

 ~東京先行上映会~
 9月20日(金)平日の午後、東京・文京区民センター
で東京先行上映会を開催。70名を超える方々にご覧いただいた。
 福岡・西日本新聞の顔なじみの記者は、8月から東京勤務に
なったそうだ。カネミ油症被害者の多くは、福岡県、長崎県に
おられるので、長崎新聞とともに、両紙はこれまでも、これからも
発信をし続けてくれるに違いない
 86分の上映後、映画製作委員会を代表して「今後の展開案」の
説明をさせていただいた。近日中にこのHPにアップしていただく
ので、ぜひ見ていただきたいと思う。
 これまで「ドキュメンタリーは告発である」とキャッチフレーズを
掲げてきていましたが、この映画では「ドキュメンタリーは社会活動
である」
と加わった。なぜならカネミ油症被害者の救済は全くと言って
いいほど進んでいないからである。
あえて、映画のエンディングで言葉を加えた。
この映画をご覧いただいたみなさんに考えてほしい、と。
 9月29日には福岡県北九州市黒崎で、小さな上映会が始まる。
私はオンラインでメッセージを送ることにしている。
とにかく、「どこまでも行くんだ」と同世代の詩人の一節のように、
前へ、前へ進みたいと思う。
       映画監督   稲塚秀孝

「カネミ油症」上映通信⑩

 ~9月20日 東京先行上映会~
 日付が変わって9月20日(金)東京先行上映会が
東京・文京区民センター3A会議室で行われる。
これまでも数々の映画の上映会をこの会場で開催
してきており、「母と子の絆~カネミ油症の真実」も
その列に加わることになる。
暑いが天気もまずまずの見込みなので、多くの来場者を
期待したい。
 今回”ドキュメンタリーは社会活動である“というキャッチ
フレーズを新たに掲げている。劇場公開、自主上映会の
形式も柔軟に取り組みたいと考えています。
 福岡県北九州市では、「カネミ油症事件 56年を振り替える
学習会」というタイトルで、JR黒崎駅前のコムシティの
会議室で、9月29日から4回連続の上映会が決まった。
映画にも登場いただき、様々なアドバイスをいただいた
原田和明さん(北九州市立大学)が主催者となってくださった。
そして新たに、86分の本編から30分前後のダイジェスト版に作り
変え、大学の授業で利用できないかという話が舞い込んだ。
10月中には、再編集しようと準備が始まっている。
 こうして、全国の大学、特に医学部、薬学部系に限らず、上映活用
いただきたいと考えています。90分が一コマの授業枠での利用が
展開できるとありがたい。学ぶ学生に届くとうれしい。
今後もあらゆる社会活動につなげてゆきたいと思う。
        映画監督      稲塚秀孝

「カネミ油症」上映通信⑨

 ~この映画の特性について~
「母と子の絆~カネミ油症の真実」東京先行上映会が
明日9月20日に迫りました。
天気予報では、暑くなりますが、雨の心配はなさそうで
ホッとしています。
 全国の劇場公開、上映会の連絡が少しずつですが、届き
始めています。
そんな中、9月26日(木)には関西の大学で試写会が
行われることが決まりました。
薬学部の1回生200人余りの学生が、この映画を見ます。
「薬学の勉強の一環として・・」と受け入れてくださった
大学本部の方々に感謝いたします。
90分枠の講座の中で、86分の映画上映のため、数分の挨拶の
ため、私は往復することになりますが、映画上映後に、用意した
アンケート用紙に学生の皆さんが、何を書いてくれるか?
期待が膨らみます。
 私にとって、13作目となるこの映画には、“ある意味”が込め
られています。それは!ドキュメンタリーは告発である“の
製作ポリシーに”ドキュメンタリーが社会活動である“を加え
たいと考えているのです。
カネミ油症被害の救済のために何ができるのか?!という
ことなのです。
 カネミ油症事件(1968年)と同時代を生きた方々はもちろん、
知らなかった世代(年若い方々)にいかに伝えてゆけるか?
を今後、上映活動を通じて、伝えていきたいと思います。
    映画監督  稲塚秀孝