カネミ油症被害者救済へ㊴

 ~厚労省へ!再々「要請書」提出の準備~

 3月19日夕方、厚生労働省健康・生活衛生局の担当者から回答が届きました。1月30日に提出した
再「要請書」に対する再回答です。
 これまでの応答内容を下段に掲載しましたので、皆さん、じっくりご覧ください。私の第一印象は「えらい”雑な対応“だな」でした。
 まず相手(へその緒プロジェクト)を納得させることはどうでもいい、ただただ”壊れたテープレコーダー“(本当だろうか?)のような、漫然とした繰り返し文章。TBS「御上先生」でも紹介された典型的な官僚用語である、”承知している“。こっちは何も承知していない、のである。
 4月10日をメドに、再々「要請書」を提出することの方針を立てました。”ネバー・ギブアップ“精神で行きます。またご報告いたします。 
                                  映画監督   稲塚秀孝
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       【厚生労働省健康・生活衛生局との応答内容】

厚生労働省  健康・生活衛生局
総務課 九十九  悠太 課長補佐さま

 再「要請書」送付の件


 昨年 12 月末に「母と子の絆~カネミ油症の真実」製作委員会・「へその緒プロジェクト」名で、3 項目の「要請書」を作成し、厚生労働省   健康・生活課宛に送り(黒字)、本年 1 月 20 日に回答をいただきました。(青字
 ここに再「要請書」を作成いたしましたので、お送りいたします。(赤字)改めて、ご返事をお待ちいたします。
                                    2025 年 1 月 30 日
                        「母と子の絆~カネミ油症の真実」製作委員会
                        「へその緒プロジェクト」      代表    稲塚秀孝

① 国(厚生労働省)及び全国油症治療研究班、九州大学油症治療研究班は、速やかに「カネミ油症被害者」のへその緒検査を実施し、子や孫の健康被害に対し、医学的措置と補償を行うことを要請する。 
          「母と子の絆~カネミ油症の真実」製作委員会・「へその緒プロジェクト」より

(厚労省    回答)
臍帯のダイオキシン測定については、正確性、再現性、当時の正常値が無いなどの問題が有るため、カネミ油症の診断基準に含まれておらず、測定しても認定に活用することは困難であるものと承知している。


【再・要請)】

(1)現時点、ダイオキシン類の分析技術は、高精度で超微量分析が可能な高分解能ガスクロマトグラフ・高分解能質量分析計(HRGC/HRMS)と分析目的ダイオキシン類の内標準物質を使用して、へその緒に含まれるダイオキシン類の「再現性」の高い方法である。従って、「臍帯のダイオキシン測定については、正確性、再現性、当時の正常値が無いなどの問題が有るため」との解答は、現在可能な分析状況を無視したものと言わざるを得ない。再考をお願いしたい。

【上記に対する厚労省再回答】

〇カネミ油症の診断基準については、これまでも、研究班において、PCB 等の毒性に関する科学的知見や、患者の検診結果等の最新の科学的知見を反映した見直しが行われております。そして、診断基準を参考に、♛中のダイオキシン濃度のほか、患者の症状等を総合的に判断した上で、各自治体において、カネミ油症の認定が行われています。


〇油症認定患者である母親を介して児にダイオキシン類が移行する場合もあることは承知しており、診断基準にもその旨記載されていますが、全国油症治療研究班の調査研究において、
・  ダイオキシン類が胎脂、胎便等の形で、高濃度で胎児から排出されること
・ 個人差はあるものの、患者の子の♛中ダイオキシン類濃度は、親と比較しても大幅に低くなっていること
等も明らかになっています。


〇また、臍帯におけるダイオキシン類の測定は、全国油症治療研究班から、技術的には可能であると伺っていますが、既に上記の研究結果が得られている上に、臍帯の保存状況によっては、ダイオキシン類の測定にあたり、正確性、再現性などの問題があると承知しています。

(2)「当時の正常値が無い」について

 カネミ油症発症当時、一般的に「胎児毒性」を考慮する毒性評価をしていなかったため、カネミ油症被害者からの出生児について、♛液検査は皆無であった。その後「胎児毒性」の評価が不可欠となっている。
 胎児は、母体(成人)よりも化学物質の生体影響を 10 倍程度も強く受ける。また、化学物質は、形成段階の骨格、組織、臓器などに“暴露”するために、母体(成人)の場合と違って、これらの生体成分における生体影響をもたらす可能性が強い。このようなことを考慮すると、「胎児毒性」の観点において、カネミ油症原因物質であるダイオキシン類によるカネミ油症被害者の出産児に対する生体影響を評価することは、必須かつ不可欠である。


 また、それぞれの出生児の「保存臍帯」は各家庭で保管されてことが多い。出産時から数年以内における油症被害者母体の 2,3,4,7,8-PeCDF ♛中濃度と出生児のへその緒に含まれる 2,3,4,7,8-PeCDF 濃度との相関を調査すれば、出生児における 2,3,4,7,8-PeCDF 暴露実態の評価が可能である。
 上記のことから、へその緒を対象としたダイオキシン類分析の実施および油症認定基準値の設定を、改めて強く要請します。


【上記に対する厚労省再回答】

〇カネミ油症の診断基準については、これまでも、研究班において、PCB 等の毒性に関する科学的知見や、患者の検診結果等の最新の科学的知見を反映した見直しが行われております。そして、診断基準を参考に、♛中のダイオキシン濃度のほか、患者の症状等を総合的に判断した上で、各自治体において、カネミ油症の認定が行われています。

〇繰り返しとなりますが、①(1)での回答のとおり、油症認定患者である母親を介して児にダイオキシン類が移行する場合もあることは承知しており、診断基準にもその旨記載されていますが、全国油症治療研究班の調査研究において、
・    ダイオキシン類が胎脂、胎便等の形で、高濃度で胎児から排出されること
・   個人差はあるものの、患者の子の♛中ダイオキシン類濃度は、親と比較しても大幅に低くなっていること等も明らかになっています。また、こちらも繰り返しとなりますが、臍帯におけるダイオキシン類の測定は、全国油症治療研究班から、技術的には可能であると伺っていますが、臍帯の保存状況によっては、ダイオキシン類の測定にあたり、正確性、再現性などの問題があると承知しています


〇油症治療等に関する調査研究については、引き続き、当事者であるカネミ油症被害者全国連絡会からのご要望を伺いつつ、三者協議の場において議論していきたいと考えています。

〇なお、三者協議での議論を踏まえ、油症認定患者の子や孫といった次世代の方々の健康状態を把握するために、令和3年度から、全国油症治療研究班が「次世代調査」を実施しています。令和7年1月の油症対策委員会での研究班からの報告によれば、口唇口蓋裂とダイオキシンとの関係性について一定の専門的見解を求める必要があり、専門家を交えた議論を研究班において行う予定と承知しています。

② 国(厚生労働省)は、現在の認定制度基準(ダイオキシン類の♛中濃度、50 ピコグラム、1968 年 12 月 31 日現在の同居家族)を撤廃し、すべてのカネミ油症被害者の救済着手することを要請する                        

(厚労省  回答)

 カネミ油症の認定については、PCB 等の毒性に関する科学的知見や、患者の検診結果等の最新の科学的知見を踏まえ、認定が行われているものと認識している
 国としては、カネミ油症患者に関する施策の総合的な推進に関する法律に基づき、引き続き、カネミ油症患者に対する必要な施策の実施に努めてまいりたい。

【再・要請)】

「科学的知見や、患者の検診結果等の最新の科学的知見を踏まえ、認定が行われている」
 ものとするならば、カネミ油症事件当初約 14,000 人が申請して、わずか6.2%(0.062)しか認められなかったことは何を意味するのか?申請者が嘘の申告をしたということか?
 認定わずか6.2%という結果は科学的知見や、患者の検診結果等の科学的知見を踏まえた認定が行われていないことの証左に他ならない。

 上記①で記載したように、油症被害者からの出生児は、母親よりも10倍程度も原因物質による生体影響が強いと推察されるだけでなく、母親よりも広範囲な生体影響による障害を受ける可能性が高い。換言すれば、出生児は母親より10倍程度低い原因物質暴露濃度でも、同程度以上の生体影響を受けることになる。従って、「胎児毒性」を考慮すれば、現在設定されている「油症診断基準値」は、科学的に不適切な設定値であると言わざるを得ない。

 カネミ油症事件発症から57年を経過している。この長い経過期間を考慮すると、油症被害者の♛中ダイオキシン類濃度は、代謝排泄等により暴露当時よりもかなり低くなっている。この時間的低濃度化を考慮すると、以前(およそ 20 年前)に設定された「油症診断基準値」は、現時点の油症被害者に対して科学的に対応できるものではない。

 この科学的実態を踏まえて、国(厚生労働省)は、現在の認定制度基準(ダイオキシン類の♛中濃度、50 ピコグラム、1968 年 12 月 31 日現在の同居家族)を撤廃・修正するとともに、油症原因油を摂取したすべてのカネミ油症被害者の救済に着手することを改めて要請します

【上記に対する厚労省再回答】

〇診断基準については、カネミ油症患者に関する施策の総合的な推進に関する法律に基づく「カネミ油症患者に関する施策の推進に関する基本的な指針」にあるように、「今後とも、カネミ油症に関する調査及び研究の成果、検診の結果等を踏まえ、最新の科学的知見に基づいて随時見直しを行っていく必要がある」ものと考えています。

〇これまでも、PCB が高熱により変化して出来る PCQ や PeCDF についても、測定が技術的に可能となり、油症患者の♛中濃度に異常が認められ、濃度と症状に科学的な関連が認められることが研究班において明らかになるなどした段階で、診断基準に反映されてきたところです。

また、これらの♛中濃度については、全国油症治療研究班において、毎年の検診受診者の検査結果により、その推移を分析しているところと承知しております。

〇なお、①(2)での回答のとおり、油症認定患者の子については、母親を介してダイオキシン類等が移行する場合もあることから、油症認定患者の子や孫といった次世代の方々の健康状態を把握するための調査を令和3年度から実施しているところです。

③ 国(厚生労働省)は、1968 年当時カネミライスオイル(ダイオキシン類が混入した油)を食べた親から生まれた子や孫に「カネミ油症被害の症状」が診断された場合、「カネミ油症被害者」と認めることを要請する。

(厚労省  回答

子や孫世代においてもカネミ油症の診断基準を踏まえて認定が行われていると認識している。診断基準に関しては、研究成果や検診結果等の最新の科学的知見に基づき、必要に応じ、研究班において見直しが検討されるものと承知している。

【再・要請)】

 カネミ倉庫製汚染油を直接経口摂取していない子や孫世代に、直接経口摂取した第一世代を対象としたカネミ油症の診断基準を当てはめることにどんな科学的根拠があるのか、お示しいただきたい。

 また九州大学油症治療研究班は、厚労省の担当部署に対し、診断基準の見直しを具申する立場にない、と辻    学前班長(2024 年 1 月 12 日「油症対策委員会」後のブラ下がり会見)は述べており、翌日行われた三者協議後のぶら下がり会見において、厚労省生活・衛生局原澤朋史課長補佐(当時)も辻氏の発言通りと述べている。

 「必要に応じ、研究班において見直しが検討されるものと承知している 」との回答は現実と異なっており、我々
を欺くものであると考える。

【上記に対する厚労省再回答】

〇①(2)への回答のとおり、油症認定患者の子については、母親を介してダイオキシン類等が移行する場合もあることから、油症認定患者の子や孫といった次世代の方々の健康状態を把握するための調査を令和3年度から実施しているところです

繰り返しとなりますが、カネミ油症の診断基準については、これまでも、研究班において、PCB 等の毒性に関する科学的知見や、患者の検診結果等の最新の科学的知見を反映した見直しが行われており、これからも同様です。

〇なお、当時の辻学先生のご発言については、会見全体の中で、どのような文脈での発言であるか不明であり、見解を述べることは困難です。また、当時の健康・生活衛生局の総務課長補佐については、辻先生の発言内容が不明な中で、一般論を述べたものです。

 ※このくだりは映画「母と子の絆~カネミ油症の真実」内に収録されているので、ご確認いただきたい。

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 ~何を変えられるのか?~

 北海道苫小牧市で、次回作品の編集を2週間行い、帰京しました。3月19日に厚生労働省のカネミ油症担当部局から”回答“が来ており、その代わりばえのしない、というか、どうにも評価できない内容に
対し、素早く対応しなくては?と焦る思いが募っていました。

 ここから、4月1週には、”何を変えられるのか“”何を変えるのか“をこの欄で提示したいと思います。基本は、日本という、この国に”生きることの意味”を問う事ではないかと考えています。自分の意志ではなく、この国で生まれたという事実を、どう捉えるべきなのか、に行き着くのです。

 カネミ油症事件とその被害者の方々にお会いし、映画を創るという作業をしてきましたが、疑問に思うのは、なぜ国は被害者に対し、無作為なのか? でした。”ドキュメンタリーは告発“と考えた時、映画「母と子の絆~カネミ油症の真実製作を通して、ここはやはり国と対峙する方法を見つけることなのだと理解しました。

 一年数か月前に立ち上げた「へその緒プロジェクト」の今後の展開も見据えながら、”次なる道“を作っていきたいと思います。

                            映画監督      稲塚秀孝

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 ~「御上先生」に学ぶ~

 昨日日曜劇場「御上先生」の最終回を見終わった。この”冬ドラマ”の中で、最も見ごたえがあったと感じている。文部官僚が一私立高校の教師になる設定はともかく、”日本の教育行政を変える“と叫ぶ若手官僚がそこにいた。

 今、19日に厚生労働省生活・衛生局の担当者からの回答を読み進める中で、厚生官僚がどのように形作られるのか?も読みの一つの”要素“と考えている。物事の捉え方、処理の仕方、可否のボーダーラインはどこにあるのか?それらを”読み解く”ことで、「へその緒プロジェクト」の戦略・戦術を導き出せるように感じている。

 思いもよらず、カネミ油症被害者岩村定子さんの死去の知らせに遭遇してしまい、”間に合わなかった“”応えられなかった“の思いが強く、今後どうしてゆくのがいいのか?正直迷っていたのだが、今日午前、岩村正勝さん(定子さんの夫)にお手紙を送ったことで、”覚悟“が固まった。「岩村定子さんの無念を胸に刻みながら、そのご霊前に報告をしたい」と思うことにしたのだ。3人のお子さんの「へその緒検査」から始まった「へその緒プロジェクト」の新たな地平に進みたいと思う。

   映画監督   稲塚秀孝

すべてのカネミ油症の被害者救済へ㊱(3/23)

~岩村定子さんに捧げます~

 カネミ油症被害者の岩村定子さんが亡くなって3日が経ちました。映画編集に追われていましたが、一旦明日からは諸準備に取り掛かります。

1. カネミ油症「へその緒プロジェクト」
3月19日に届いた厚労省担当者からの回答に対する対応策を練ります。来るべき国会での質問の準備が急務です。
2. 「苫東映画祭」(6月28日~30日北海道苫小牧市)準備
苫小牧映画サークルと全国映連で共催のイベントに向けた準備を急ぎます。
3. 「第7回ナガサキ映画と朗読プロジェクト」(7月19日~20日)の準備
2019年から続けてきたナガサキ映画と朗読プロジェクトは、今回7回目で一旦閉じます。”有終の美“を叶えたいと思います。
4. 「二重被爆 遺族友の会」設立(7月17日)への準備
被爆80年、故山口彊没後15年の今年、「二重被爆 遺族友の会」を立ち上げます。その準備を急ぎたいと思います。

 映画「母と子の絆~カネミ油症の真実」はまだ上映会活動が始まったばかりです。幅広く皆様方に映画を観てもらいたい、カネミ油症を知ってもらいたい。その活動を推進いたします。その成果の先に、故岩村定子さんの”無念“の思いに応えることができると信じています。

                            映画監督    稲塚秀孝

すべてのカネミ油症被害者へ㉟(3/21)

 ~激動の日々~

 3月20日午前3時14分、岩村定子さんが長崎県五島市の病院で病死。3月21日正午から五島市奈留で葬儀が執り行われました。

 岩村さんを多く取材することから「母と子の絆~カネミ油症の真実」が出来上がっていることは、間違いありません。何度も訪ねるたびに、優しく迎えて下さり、1973年12月に生後4か月で亡くなった、長男満広さんへの思いを語ってくれました。

 カネミ油症由来の満広さんのへその緒の再検査を求める岩村さんに、冷淡に「すでに検査する機材は廃棄されている」と言い放った福岡県保健環境研究所の技師の電話を終えて、ふーっとため息をつき、
 「国なんです、国が変わらない限り、満広は浮かばれない。母親として息子の墓前に報告できなければ、死んでも死にきれない・・」と言葉を継いだ時のことを思い出します。2023年11月のことでした。

 それから3か月後から過酷なガンの闘病生活が始まったのです。2月18日長崎県生活・衛生課に「満広さんのカネミ油症申請」を提出、3か月後県職員2名が、フェリーで奈留島の岩村さん宅を訪ね、申請却下の書面を示しました。理由は、
1. 満広さんがカネミ油症検診を受けていないこと。
2. 満広さんが1968年12月末までに生まれた油症被害者の同居家族ではないこと。
でしたが、世の中にこんな文章があるのか?と目を疑いました。満広さんは生まれてから寝たきりの状態で、検診を受けられる状態ではなかったですし、生まれたのは1973年8月5日です。

 その文書を読んだ岩村定子と夫の正勝さんは、静かに職員を見送りました。これは”ボタンの掛け違い”なんかじゃない、現場にいた私はそう感じました。岩村定子さんを心から追悼するのは、決して今ではありません。「へその緒プロジェクト」がすべてのカネミ油症被害者救済に向けて、大きく〝活路“を開いて、定子さんと満広さんの墓前に報告できたとき、そう思います。

                         映画監督         稲塚秀孝 

すべてのカネミ油症被害者救済へ㉞

 ~2025年3月20日を忘れない~

 本日3月20日、「母と子の絆~カネミ油症の真実」の取材で、最もお話を聞きに伺った岩村定子さんが亡くなった、と連絡がありました。享年75。私の一つ上の”姉“でした。

 4年前に初めて伺った時、カネミ油を食べた5年後、1973年、長男満広さんを生後4か月で失くしたことを話していただきました。
「あの子に何もしてやれなかった。あの子が”カネミ油症“だった事実を墓前に報告しないことには、死にきれない」が口癖になっていました。満広さんは、チアノーゼ、口唇口蓋裂、肛門不全、心臓疾患などの重篤な症状で生まれてきたのです。2015年、満広さんのへその緒を調べた九州大学油症治療班は、FAXで「へその緒には農薬が振りかけられた疑いがある」と返事をよこしたのです。

 昨年7月、映画製作と並行して立ち上げた「へその緒プロジェクト」では、岩村さんの3人のお子さんのへその緒検査を行い、10月末に民間検査会社から結果が届きました。3人ともダイオキシン濃度は通常の数十倍あったのです。

 岩村さんは昨年2月から、がん治療のため、入退院を繰り返していました。そこで結果は、入院中の病院に届け、電話で話していたのです。1月後半には、「厚生労働省から回答があり、今月28日には参議院議員会館で上映会を行います。国会議員の方々に見ていただき、行動を移したいと思います」

 1月30日に厚労省に送った、再「要請書」の回答は、2度の督促を経て、昨日3月19日に届きましたので、岩村さんに連絡しなければ、と考えていた矢先、訃報が届いたのです。岩村さんの“思い”を叶えることをできぬまま、私は残念であり、不甲斐ないと感じています。抗がん剤治療の苦しさに耐えながら、満広さんの墓前に報告したいと言い続けていた、岩村定子さんの口惜しさと苦しさを胸に刻みながら、「へその緒プロジェクト」は“答え”を出したいと思います。

                               映画監督      稲塚秀孝

4月13日の熊本での上映に寄せて

 4月13日の熊本での上映に寄せて、熊本市御船町にお住いの方から、以下のようなコメントをいただきました。全文を掲載いたします。

 カネミ油症事件を知っていますか?

 カネミ油症事件は、1968年に発生した日本の大規模な公害事件であり、米ぬか油に混入したポリ塩化ビフェニル(PCB)とその熱分解生成物であるダイオキシン類によって、多くの人々が健康被害を受けました。

 一緒に映画を見てみませんか?

 私の父は、北九州で商社マンとして働いていた時に、カネミ油症の原因企業のカネミ倉庫前で月に1回座り込みを続けていた牧師の犬養光博さんに出会い、カネミ油症事件に出逢いました。犬養光博さんは被害者の男性から「無関心こそ公害殺人の加担者だ」との手紙を受け取ったことで、1970年から42年間500回もの座り込みをしました。父も座り込みに参加し、犬養光博先生と共にいることで、今のお金儲けが1番の仕事をしているようではいけないと思い、結婚を機に商社を辞めて、やったことのない有機農業を熊本県で始めました。そして今でも有機農業を続けています。

 なぜ今カネミ油症事件に向き合うのか?父に問いました。

 「カネミ油症のこともその前の水俣病のことも、その前の人為的な公害もやはりお金儲けが最優先になっている。生命という本来1番大切にしていくところが軽く扱われている。経済発展で生活は急激に変化し、生命を育む食べものもどんどん変わっていっている。生命を大切に思うのであれば心無い物を口にするのではなく、心ある生命のことを考えた食べ物を口にするべきじゃないかと思う。それは俺にとっては自然の中で汗水垂らして作っているものをありがたくいただくということ。同じ過ちを繰り返さない為にも皆が過去の公害を知り学ぶことは必要だと思う。そして生命の育み方を改めて考えていくためにも、このカネミ油症事件を知ることは大切だと思う。」

 私も子どもたちを連れてカネミ倉庫前での500回目の座り込みに参加しています。まだまだ昔の事件ではないです。今でも苦しんでいる人がいます。そして私たちはいつでも公害の被害者になる可能性があります。加担者にも。

 4月13日(日)13時からです。お待ちしています!

すべてのカネミ油症被害者救済へ㉝


 ~厚労省への再「要請書」の回答~

 昨晩(3月19日)厚生労働省健康・生活局総務課指導係の担当者から、「へその緒プロジェクト」が1月30日に提出した再「要請書」に対する回答が届きました。

 本日から、速やかに回答内容を精査し、今後の対応を検討したいと考えています。まず見た限りでは、母体から胎児へ毒性物質が移行している事実は認めている(官僚用語で「承知している」)が、現在の”診断基準“なるものに照らして、無視されている、あるいは反応していないことが明らかです。
その細部に渡って、見解を糺すのが次のステップではないかと思われます。 とにかく近日中に、”次のステップ“を明らかにしたいと考えています。ここは「へその緒プロジェクト」にとって、”正念場“であると思います。

 また一方、すでにカネミ油症被害者から預かっている「へその緒」に加え、新たに思いがけない被害者からのへその緒が「カネミ油症被害者支援者」の元に届いているとの情報が届きました。ぜひこの件も、今後に生かしたいと思います。

   映画監督  稲塚秀孝

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  ~年度末→新年度へ

 公的機関及び民間会社で今も使われる年号について、もう西暦に変更して欲しいとつくづく考える。今年は”昭和100年“というが、昭和世代の私は、昭和○○年に25を足すと19○○、20〇〇となるので、使い分ける。そして年度制度(4月から来年3月までが一区切り)についても、あるべきか否か?考えてみる。

 本日2025年3月16日は、令和6年度(2024年度)の残り2週間となっている。今、次回作品の編集の合間に進めているカネミ油症に関する国会質問案については、数日前厚労省担当者から連絡がきた。

 「遅れている再『要請書』に対する回答は、来週中にお送りします」と、1月30日に提出したのだから、約2か月が経過、おそらく”年度内に(回答)処理“しようと考えているのだろう。

 いずれにしても、その回答を見て、最終的に国会での想定質問を固めて行こうと考えている。“機は熟した“となるのだろうか?
     映画監督   稲塚秀孝

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 ~「へその緒プロジェクト」に新たな視点~

 昨日、博多市内で平田喜代美さんのお話を伺った。”目から鱗“とはこのことだと思った。平田さんは助産師を1965年に九州大学付属助産師学校を卒業後、60年間助産師を続け、今は「おっぱい110番」(平田母乳育児心療所)を行っている方だ。3週間前に「母と子の絆~カネミ油症の真実」ダイジェスト版に関心を持ち、ご連絡をいただいた。

 以前は街には助産師さんがいて、妊婦の相談を受け、自宅分娩のサポートをしていたのだが、今は産婦人科医院で出産するのが大半で、しかも母乳で育てるよりも“人工ミルク”に頼る。平田さんは「母と子の絆」こそ、母親から母乳によって栄養をお子さんに与えるのが”基本”と説く。

 そして今では、胎盤、臍帯血、へその緒までも“資源”として売買されているのが現状という。「母乳バンク」もあるという。古来から日本独自の文化・風習となっている「へその緒」保存は今では、”風前の灯“になっているともいわれる。

 一方「カネミ油症事件」では、ダイオキシン類の毒性物質が母乳から胎児に移行していたこと(40%という研究成果)により、次世代の子や孫に油症被害が広がった事実がある。取材の中で、ある母親は「油症により、途中から母乳から人工ミルクに変えた」というインタビューも得ている。そこで今一度整理してみたいと思う。

  1. 食生活において、食品の”安心・安全“に取り組む。
  2. 母は、長くても2年以内は、母乳で育てる。“母乳の大切さ”を再認識する。
  3. お子さんを産んだのち「へその緒」(生後1週間後)を確保・保存する。

 「へその緒プロジェクト」は、カネミ油症被害がお子さんやお孫さんに及んでいる現実を明らかにし、被害者救済への”道しるべ“であると考えているが、さらに今回は「へその緒」を取り巻く道筋についても提案してゆくことに気付かされた。
                               映画監督      稲塚秀孝