製作便り

  • 「カネミ油症」編集通信⑫

    ~覚悟は決まった!~

     明日から博多へ向かいます。手元にある資料を読みながら、
    最終編集に臨む“覚悟”を決めようと考えています。

     今日は昼に、霞が関へ出かけ、厚生労働省前で外観撮影をしました。
    昼ごはん時ですから、職員の方々が表に出てきます。
    勿論知人も友人もいません。
    皆さん、”役に立つ仕事”をしていると考えているに違いありません。

     でも、どうでしょうか?
    「母と子の絆~カネミ油症の真実」では、“応分の責任”を問うています。
    56年経過して、いまだにカネミ油症被害者を救済できていないのか?
    そこには大きな”闇“と”謎”があるのです。

     国=厚生労働省、原因企業のカネミ倉庫、九州大学を始めとする医師、研究者
    そして有効な手を打てなかった支援者の方々、皆さんに“応分の責任がある”と
    問いているのです。
    しかし、まだまだこれからです。

     最後に映画をご覧になる皆さんへ。
    まだまだこれからできることがあると思います。
    〝勇気と力“を出してください、と。

       映画監督        稲塚秀孝

  • 映画「母と子の絆~カネミ油症の真実」東京先行上映会案内

     映画「母と子の絆~カネミ油症の真実」、
    いよいよ映画製作も大詰めとなりました。
     本年10月公開を前に、「先行上映会」を東京・大阪で開催いたします。
    【東京・先行上映会】
     日時:2024年9月20日(金)14:00から上映(開場13:30)
     場所:文京区民センター3A会議室(収容:470名)
     参加費:一般1000円プラスカンパ(お願いいたします)
        学生 500円
     主催:「母と子の絆~カネミ油症の真実」製作委員会
     問合せ:タキオンジャパン稲塚(090-3433-6644)

    ※大阪・先行上映会は、決まり次第ご案内いたします。
     なお福岡では、試写会として開催予定です。

  • 「カネミ油症」編集通信③

    ~編集は生き物・日々変化する~
     7月7日から博多に編集拠点をおきました。
    博多駅からバスで30分、三宅本町下車で徒歩3分。
    映像製作会社の一角で、始まりました。
     今日は4日目。
    約3年間の撮影素材を見直し、まずブロック編集から。
    毎日9時から19時をめどに行います。
    合間に奈留島のドローン映像や過去の映像の検索・交渉、
    追加取材の段取り、ナレーターの手配など、やることは山積して
    います。時間に追われて、見落としがないか?気にかかります。
     今晩遅く「太古丸」というフェリーで五島列島に向かいます。
    明日五島市玉之浦、明後日は五島市奈留で「カネミ油症被害者」の
    一斉検診(年1回)が行われますので、取材とインタビュー。
    天候は今一つですが、実景も撮影したいと思います。
    船中と奈留の「宮の森キャンプ場」のバンガローの2泊となります。
    12日から編集再開です。
                   映画監督 稲塚秀孝

  • 「カネミ油症」編集通信②(7月8日)

    朝日新聞 福岡本部  御中

     お世話になっております。

     映画「母と子の絆~カネミ油症の真実」の編集に昨日7月7日から博多市内で始めました。今回編集拠点を博多に置いたのは、追加取材を適宜行うためでもあります。7月10日~12日は、福岡市内、五島市玉之浦、奈留の一斉健診などの取材を行い、8月10日頃までに、完成させたいと考えています。関係者向け試写会は、9月半ば、全国公開は10月12日から順次行う予定ですので、改めてご案内申し上げます。

     一方「へその緒プロジェクト」については、岩村定子さんの3人のお子さん(故 長男満広さん、次男、長女さん)のへその緒を関西・四国の検査会社2社(共同で取り組み)に託しました。検査結果(9月初めと想定)が出次第、また途中経過を随時お伝えしてまいります。引き続きよろしくお願いいたします。
            タキオンジャパン 稲塚秀孝090-3433-6644 inazuka@takionjapan.onamae.jp

  • 「カネミ油症」編集通信①

     今日(7月7日)から「母と子の絆~カネミ油症の真実」の編集が始まります。しかし、まだ撮影取材を続けたいと思っています。そこで今回は編集拠点を福岡県博多におくことにしました。博多にある映像技術会社の一角で行います。

     ドキュメンタリー映画の編集は、あらかじめ立てた構成案を基にしながら、映像を確認しながら、どんどん変化を重ねて行くものです。ですから編集が始まる直前では、ワクワク感がいっぱいです。最終的な映画の完成見込みは8月10日頃。どんな展開となるのか?大きな楽しみでもあります。

     とことん悩みながら、どのように映画ができるのか?皆さんにお伝えしてゆきたいと思います。ほぼ毎日、編集通信を発信、更新して参ります。どうぞよろしくお願いいたします。

        映画監督  稲塚秀孝

  • 「カネミ油症」編集通信①

     今日(7月7日)から「母と子の絆~カネミ油症の真実」の編集が始まります。しかし、まだ撮影取材を続けたいと思っています。そこで今回は編集拠点を福岡県博多におくことにしました。博多にある映像技術会社の一角で行います。

     ドキュメンタリー映画の編集は、あらかじめ立てた構成案を基にしながら、映像を確認しながら、どんどん変化を重ねて行くものです。ですから編集が始まる直前では、ワクワク感がいっぱいです。最終的な映画の完成見込みは8月10日頃。どんな展開となるのか?大きな楽しみでもあります。

     とことん悩みながら、どのように映画ができるのか?皆さんにお伝えしてゆきたいと思います。ほぼ毎日、編集通信を発信、更新して参ります。どうぞよろしくお願いいたします。

        映画監督  稲塚秀孝

  • 「へその緒プロジェクト」通信(51)


    ~へその緒検査に着手、新たなステージへ~

     6月20日、長崎県五島市奈留に住む岩村定子さんから、3名のお子さんのへその緒を預かりました。 既に通信において、6月22日の三者協議(福岡県合同庁舎)後の、ぶら下がり会見で厚生労働省健康・生活衛生局の原澤課長補佐にへその緒を示したことは、既報通りです。そして6月25日に京都にある検査会社の幹部の方と面談し、へその緒を託しました。その後、岩村さんにもお伝えしたところです。検査が速やかに行われるかは否かについては、7月1週まで待つこととなりました。

      九州大学油症治療班は、へその緒を検査し。母体から胎児に毒性性が示唆したことは、2009年5月発行の「福岡医学雑誌」における2つの報告で明らかになっています。一つは長山淳哉准教授、検査技師の梶山淳睦氏(福岡県保健環境研究所)が関わったもの、もう一つは摂南大学 宮田秀明教授(現在名誉教授)のグループの報告です。さらに2013年頃には、故 月森清巳医師(福岡こども病院)らの研究報告で、母体から胎盤を経て胎児へ、かなり高い濃度で毒性物質移行の実態が明白になっています。

     ここでいくつかの疑問が湧出いたします。
    1. カネミ油症事件が明らかになり、「黒い赤ちゃん」が次々と生まれてきたことから、へその緒により、毒性物質の移行が推定されたにも関わらず、40年近く研究がなされなかったことは何故か?
    2. 母体から胎児へ高濃度の毒性物質移行が明らかになって(2010年代)から、なお10年以上「へその緒」研究と検査が行われなかった理由は何か?
    そして、カネミ油症研究と治療対策の責任者、班長が、皮膚科教授が代々担当しているのは何故か?(今年4月から、中原剛士皮膚科学教授が班長に就任)
    今からでも遅くないので、へその緒については産婦人科他の分野の医師が前面に出るべきと思うのですが・・・。

      まもなくこの映画は編集に入りますが、“一つ一つの疑問”を明らかにしていきたいと考えています。

        映画監督 稲塚秀孝

  • 「へその緒プロジェクト」通信㊺

     ~自主上映会を開きましょう~

     昨日(6月4日)、名古屋にてカネミ油症被害者の方のお話を取材しました。
    私と同じ昭和25年生まれの女性です。17歳の時、カネミ油を家族5人で口にしています。
    長崎県は海が素敵です。海の恵みの魚を天ぷらにするのは基本だったと言います。
    23歳の時から5人のお子さんを産み、最初の3人は毎年生まれました。

     カネミ油症の症状は、長女に激しく現れました。後年「同居家族認定」で
    カネミ被害者になったのは、本人だけ。毎年国の一斉検診を受けても、お子さんたちは
    未認定のまま、です。後日長女のYさんとのへその緒をお預かりし、民間調査会社に
    持ち込みます。サクサクと明るい語り口ですが、ふと辛かった過去を思い出して、
    涙されていました。

     「母と子の絆~カネミ油症の真実」は全国の劇場で10月から順次公開しますが、
    自主上映会も開始します。かつて2011年に「チェルノブイリハート」を配給した時は、
    全国250か所で上映会を開催できました。新聞記事を見た各地の主婦の方から携帯電話に
    連絡が来ました。「上映会を開くのは初めてですが、上映会までの進め方を教えて
    ください。お友達に連絡します」という内容でした。

     次回、自主上映会の案内を掲載いたします。
                            映画監督   稲塚秀孝

  • 「へその緒プロジェクト」通信㉟

    ~ドキュメンタリーは”告発”である~

     この信念のもとで、2006年から映画製作を続けてきました。

     では、何を”告発”するのか?それは取り上げるテーマや取材の中身に
    おいて、さまざまと言えると思います。
    告発する対象が、国家、企業、国家観、無垢と呼ばれる人々、そして
    自分自身。何も決まりはありません。

     今回の「母と子の絆~カネミ油症の真実」においては、大きくとらえると
    ”組織と個人“ではないかと思います。国=厚生労働省、アカデミズム=九州大学
    を頂点とする九州における学問と研究閥、支援するべき人々=例えば弁護士集団、
    そして被害者を支援する人々・・・・。カネミ油症事件発生から56年。

     そこに共通するのは“無作為”ということだろうか?
    もちろん映画製作をする私たちが”正義”とは言えない。
    家族を守るために、あえて家族に「カネミ油症の真実」を伝えない事例に出会った。
    “仮払金“返済を国から迫られた時、家族を守るため、守り切れずに、命を落とす”不条理“。
    ”カオス“のような現実を見つめながら、残り数カ月の製作に取り組みたいと思う。

     今日、映画製作チラシ第3弾が出来上がりました。
    皆さんに見てほしいと思います。
                        映画監督    稲塚秀孝

  • 「へその緒プロジェクト」通信㉞

    ~取材することと取材される側のこと~

     数日前から北海道苫小牧市の事務所で、これまで撮影した映像素材の
    整理を行っています。週明けには帰京して、新たな撮影に備えます。
    何が撮影できて、何ができていないか?
    本格的な編集を始める前に必要なプロセスです。

     もっとカネミ油症被害者の方々の”声“を聴きたいと思います。
    しかし、被害者の方々側の事情もあり、立ち止まることもあります。
    「自分(カネミ油を口にした)はいいが、子どもたちや孫のことは守らないと
    いけない」この場合、”守る“とは、子や孫に「カネミ油症被害」のことを
    伝えない、ということを意味しています。

     新聞や雑誌での報道と違いのは、映像作品(テレビ番組や映画等)では、映像
    (つまり顔出し)が原則であるが故に、取材する側も取材される側も、公開される
    ことに”同意と覚悟“がいるのです。
    取材する側の”伝えたい“と取材される側の”伝えて欲しい“という人間としての
    信頼の”絆“が必要になるのです。

     コロナ禍を挟んで、ここまで3年余が経過し、今後3カ月の取材は、さらにその
    せめぎあいの中で取材を行う時期に差し掛かりました。
    何とか”成果“を得ることで、カネミ油症被害者の救済が進むことを目指したい、
    そう考えている日々です。
                               映画監督  稲塚秀孝

  • 「へその緒プロジェクト」通信㉙

     昨年12月に「へその緒プロジェクト」を考え始めて3カ月、1月に記者懇談会を開いて
    メディアの皆さんにご案内してから2カ月が経ちました。
    「カネミ油症事件」被害者の方々を救済するために、「へその緒プロジェクト」が喫緊の
    課題であることは、このHPでも、2月末まで行ったクラウドファンディングでも周知して
    きました。

     私はテレビ番組を製作してきましたが、主に単発=スペシャルが多かった中、
    テレビ業界では、レギュラー番組は3カ月=1クール単位で製作・放送します。
    特に民間放送では、番組は3カ月ごとに継続するかどうかを判断します。

     1992年10月に開始した「テレビ近未来研究所」は、6か月間製作・放送しました。
    あるテーマについて、今後どのような経過と結果が起こるかを、まさしく近未来は
    どうなるのか?を検証・考察する番組でした。某電機メーカーの1社提供の番組でした。

    「へその緒プロジェクト」の次のクール(4月から6月)のテーマを次のように考えています。

    1.母親がカネミライスオイルという毒の油を口にし、本人も辛い被害を受けた上で、
    「へその緒」を通じて胎児(新生児)に毒性が移行(胎児毒性)していることを
    明らかにしたい。これまで医師、研究者の方から、母親の毒性の25~40%が生まれてくる子に
    移行していると、資料をいただいています。
    この事実を受けて、現在カネミ油症被害者の認定基準(ダイオキシン類の血中濃度のみ)の
    壁を突き崩し、未認定(子や孫世代など)の被害者救済に繋ぎたい。
    2月半ば、カネミ油症被害者で高レベルのダイオキシン類が検出された方が、
    50年前に亡くなったお子さんがカネミ油症由来であったとの申請を行い、
    日本で初めて、被害者個人の申請として長崎県庁の担当課に受理され、返事を待っている
    ところです。今後、多くの被害者の調査結果を基に、全国各地でカネミ油症である
    ”同時・集団申請“を行いたいと思います。

    2.先日お聞きした男性の被害者は、翌年結婚した女性との間に2人の子どもが
    生まれましたが、お二人には「カネミ油症」による被害が現れています。
    母親はカネミライスオイルを口にしていません。
    ということは、男性の精子に何らかの原因があり、受胎した後の「へその緒」を通じて
    被害が現れたことになります。しかし、男性が原因という研究は行われていません。
    新たなテーマが見つかったことで、調査を進めたいと思います。

    3.なぜ、国(厚生労働省)と九州大学油症治療センターは“不作為”なのか?
    そこに「カネミ油症事件」が未解決のまま放置された理由が隠されています。
    PCBを生産した企業は、世界中に広がっており、国を越えた”不作為”がある可能性があります。
    ”不作為“の証明は容易ではありませんが、その糸口を掴みたいと思います。

     次のクールは以上3点を軸に取材して参ります。

                               映画監督  稲塚秀孝

  • 10日間九州等の取材

     10日間九州等の取材に出かけ、昨晩帰京しました。あちこちで、春の兆しを感じました。日本の西は陽が長くなりました。

     長崎で劇団を主宰している方から、今朝メールが届きました。「全国を撮影で駆け回っている監督を追いかけるロ―ド厶―ビィ」を撮りたいですね、と。嬉しい❗企画です。是非お願いしたいとご返事しました。

     今回初めて、博多から東京へ在来線乗車券を買いました。博多→小倉→広島→大阪(神戸に一旦下車)→新宿まで、ジパング倶楽部(3割引き)で、1万円を切りました。3泊4日です。富士山を撮影するために、進行方向左に着席。なお業界の常識では、東京→大阪の場合は、電車は画面右(上手)から左に走ります。ではまた。  
                                  稲塚秀孝

     

  • 「へその緒プロジェクト通信」⑯

      なぜ空白の15年なのか?
     ~今、もっと、情報が欲しい~

     昨日お話を伺った群馬大学鯉淵典之教授のお話を振り返り
    ながら、今日は福岡県小倉に移動しています。

     まず2年前の火災から復興した「小倉昭和館」を訪ねました。
    これまで数本の映画上映をしていただいており、今回の
    「母と子の絆~カネミ油症の真実」が完成した時は上映して
    いただきたいとお願いします。

     館主は「何しろここ(北九州小倉)は、加害者(カネミ倉庫)と
    被害者が住む街ですから、皆さんの思いは複雑ですね」と。
    その通りである。昭和館から海沿いにあるカネミ倉庫まで、徒歩
    20分位だろうか?倉庫前に何百日も抗議の座り込みが続いた
    歴史がある。故に「いまカネミ油脂事件を考え、被害者の救済に
    向かうには?」が大事なのだと思う。

     繰り返しになるが、母から胎盤を通して子に毒性が移行したことは、
    鯉淵教授(日本内分泌攪乱物質�学会長)の言を待つまでもなく
    明らかなのははっきりした。

     では2009年、「福岡医学雑誌」での2つの報告から15年間、空白の期間が
    できたのは何故なのか?今後当事者の方々からの情報を得たい、と思う。
    それは「へその緒プロジェクト」のロードマップの道筋をつけるために、
    欠かせないことである。

     「胸突き八寸」に差し掛かって、明日から博多・長﨑で探索を続けようと思う。

                映画監督 稲塚秀孝

  • 「へその緒プロジェクト通信」⑯

      なぜ空白の15年なのか?
     ~今、もっと、情報が欲しい~

     昨日お話を伺った群馬大学鯉淵典之教授のお話を振り返り
    ながら、今日は福岡県小倉に移動しています。

     まず2年前の火災から復興した「小倉昭和館」を訪ねました。
    これまで数本の映画上映をしていただいており、今回の
    「母と子の絆~カネミ油症の真実」が完成した時は上映して
    いただきたいとお願いします。

     館主は「何しろここ(北九州小倉)は、加害者(カネミ倉庫)と
    被害者が住む街ですから、皆さんの思いは複雑ですね」と。
    その通りである。昭和館から海沿いにあるカネミ倉庫まで、徒歩
    20分位だろうか?倉庫前に何百日も抗議の座り込みが続いた
    歴史がある。故に「いまカネミ油脂事件を考え、被害者の救済に
    向かうには?」が大事なのだと思う。

     繰り返しになるが、母から胎盤を通して子に毒性が移行したことは、
    鯉淵教授(日本内分泌攪乱物質学会長)の言を待つまでもなく
    明らかなのははっきりした。

     では2009年、「福岡医学雑誌」での2つの報告から15年間、空白の期間が
    できたのは何故なのか?今後当事者の方々からの情報を得たい、と思う。
    それは「へその緒プロジェクト」のロードマップの道筋をつけるために、
    欠かせないことである。

     「胸突き八寸」に差し掛かって、明日から博多・長﨑で探索を続けようと思う。

                映画監督 稲塚秀孝

  • 「へその緒プロジェクト」通信⑩

     第22回三者協議・番外編
     ~カネミ倉庫からの連絡~

     一昨日(1月30日)午後、カネミ倉庫の総務部長から電話が入った。

     1月13日の三者協議終了後、帰り際に部長に私の名刺を渡し、
    「今日は加藤社長が体調不良でお休みでしたが、ドキュメンタリー映画の中で
    お話をお聞きしたいので、お伝え願います。改めてご連絡させていただきます」
    と伝えた。部長は「社長はおそらく取材は受けないと思いますが、こういうお話が
    あったことは伝えておきます」と言い残して帰った。

     翌週、レターパックライトに、取材依頼書、企画提案書、当社プロフィールと
    DVDを2枚(「奇跡の子どもたち」「仲代達矢”役者”を生きる」)入れ、
    カネミ倉庫 加藤大明社長あてに送った。取材依頼書には、
     率直なお話が聞きたい。国とPCB製造企業「カネカ」への思い

    1. ドキュメンタリ映画(90分想定)の中で、5分間は流したい
    2. 最終編集前に、映画で使わせていただくインタビュー内容の確認をしていただきたい

    以上を書き込んだ。

     取材申し込みの時は、後々トラブルにならないように、率直に伝えることにしている。
    映画公開が前提なので、日本中で、さまざまな人々がご覧になる。
    従って、後に禍根は残したくないと考えた。曖昧なことは言えない。
    映像はありのままを描き出す。取材対象者の喜び、怒り、悲しみをほぼそのままに表すと思う。

     部長の答えは、予想通り「取材はお断りしたい」という返事。
    「私はこの会社に入って短いですし、カネミ油症事件の時は生まれていませんでした」
    確か40代前半のようにお見受けした。
    「加藤社長は以前から、『カネカは札束(※)で被害者に対し、その代わり自分たちの責任を免除
    された』ことに憤りを持っていたことは事実です。
    しかしわが社は(カネミ油症事件の)加害企業ですし、何を言うかと思われることはできないです」
    ※カネカは最高裁判所の和解勧告に応じ、補償金の意味を持った見舞金を被害者の方々に払い、
     責任は免除された。今では一切責任の追及を拒否し続けている。

     部長は丁寧にお話しくださった。そして「送っていただいたDVDはどうしましょうか?
    仲代さんのDVDもあって・・」と聞かれ、私は「お時間のある時にご覧ください」と伝えた。
    そして
    「こうしてお電話をいただき、お話の内容は分かりました。ただここ数カ月の間で、
    カネミ油症事件に関して、何らかの変化というか、動きがあるかもしれません。その時は
    改めてご連絡させてください」と話して、電話を切った。

     映画の製作委員会として、どのような動きができるだろうか?
    「賽はこちらに投げられた」と思った。何とか”答え”を出さないといけない。

                      映画監督  稲塚秀孝

  • 「へその緒プロジェクト」通信⑨

      6パーセントからの反撃
     ~「へその緒プロジェクト」共に~

     映画「母と子の絆~カネミ油症の真実」の製作支援のために昨年12月20日
    から開始したクラウドアンディングは、昨日までで目標額の6%に達した。
    残る期間は30日。正直、厳しい実情だ。

     しかし”奇跡”を信じたい。まだ30日あるのだから、やれることはたくさん
    ある、と思う。前回「へその緒プロジェクト」との並走150日と書いた。
    「へその緒プロジェクト」はまだその先があるが、映画製作は劇場公開という
    目標がある。今年10月公開のためには、6月末が製作のギリギリだ。劇映画
    ならば最低10カ月前に”初号”が完成していないといけないが、そこはドキュ
    メンタリー映画なので、ギリギリまで撮影することができるのだ。

    「へその緒プロジェクト」は今、全国の医師、研究者、メディアの方々の協力
    を求めて、日々アプローチを続けている。これまで何の接点もなかった皆さんに、
    「へその緒プロジェクト」の趣旨とカネミ油症事件との関りを伝え、アドバイス
    を求めている。「私にできることなら・・」とご返事をいただけると、正直嬉しい。

     毎日、”小さな奇跡“に一喜一憂しながら過ごすことを大切にしたい、と思う。
                   
                            映画監督 稲塚秀孝

  • 「母と子の絆~カネミ油症の真実」新聞寄稿

     しんぶん赤旗日曜版(2024.1.28号)にドキュメンタリー映画「母と子の絆~カネミ油症の真実」を
    製作中との記事(寄稿)が掲載されました。


  • 映画製作に向けての応援メッセージ

    水俣協立病院名誉院長 藤野糺さんに映画製作に向けての応援メッセージをいただきました。
    (関連投稿:多様な症状 未認定患者でも カネミ油症 水俣協立病院の藤野医師が調査発表

  • 岩村定子さんの想いは深く!

    2018年11月17日、カネミ油症発生(1968年)から50年目の節目の取材より
    ◎亡き子の患者認定求めて 
     へその緒から原因物質 

     長崎県五島市に住む認定患者の岩村定子(いわむら・さだこ)さん(69)は、食
    品公害「カネミ油症」が表面化してから5年後に産んだ長男満広(みつひろ)ちゃん
    を、生後4カ月で失った。近年になり、へその緒から検出された原因物質。亡き息子
    の患者認定を求めて、闘い続けている。

     同市で17日に行われた追悼式。代表して献花した岩村さんは口を真一文字に結
    び、こみ上げる涙をこらえた。早世した長男の面影が、頭の中をよぎる。

     1973年8月に未熟児で生まれた満広ちゃんは上唇が裂け、肛門がなかった。心
    臓の弁がふさがっていることも判明し、すぐに別の病院へ移された。青白い全身の肌
    は、泣くたびにどす黒くなったという。同年12月のある朝、容体が急変する。うめ
    き声を上げ続け、搬送先の病院で翌日、息を引き取った。

     「どうして元気な子を産めなかったのか」。岩村さんは自問自答を繰り返した。五
    島列島で生まれ育ち、19歳でカネミ倉庫(北九州市)製の米ぬか油を口にした。た
    だ、妊娠中の定期検査で胎児に異常はなかった。

     油症患者の女性から黒ずんだ皮膚の赤ちゃんが次々と生まれていることを、後に知
    る。自身も目まいや背中のかゆみといった症状があり、40代で子宮筋腫、50代で
    大腸がんを患った。「油が子どもにも影響したのだ」と、岩村さんは考えるように
    なった。

     2005年、節目の三十三回忌。「これで終わらせていいのか」。家族が差別され
    る可能性を思うと葛藤はあったが、09年に油症の検診を初めて受け、翌年に患者認
    定を得た。

     5年前、満広ちゃんのへその緒を、九州大の油症研究班に鑑定してもらった。死後
    40年ほど経過していたのに、ダイオキシン類が検出された。「長男も油症だったの
    か」と詰め寄ったが、研究班は実例が少ないことを理由に「判断できない」と回答し
    たという。

     手元に残る満広ちゃんの写真は、1枚だけ。看病に追われ、思い出を残す余裕がな
    かった。「なぜ生きられなかったのか。理由をはっきりさせて墓前に報告するのが、
    親の義務でしょう」

  • 「へその緒プロジェクト」を立ち上げ、実行!!

    ●岩村定子さんから受け取ったメッセージ
     油症被害者の岩村定子と申します。今回稲塚様より、お話を聞き、本当にありがとう
    ございます。
     私、前回、息子のへその緒を調べて頂きましたけど、どうしても納得がいく返事を頂
    くことは出来ませんでした。親として、とっても悲しく、また子どもに対して、丈夫に
    産むことが出来なかった事、本当に申し訳ない気持ちが、今でも心の隅にいつもあるの
    です。親として、ぜひ何とか、きっかけを見つけて下さる事を願うしかありません。
    どうかよろしくお願いいたします。

    ●「へその緒プロジェクト」を立ち上げ、実行!!
     岩村さんは、どうしても長男の死が「カネミ油症」に起因していることを明らかにしたい、と
    かねがね願っていました。2013年九州大学油症治療班長、古江増隆(ふるいえ ますたか)
    教授(当時)に直に願い、満広さんと繋いだ「へその緒」を託しました。

     中々返事が来ないため、同じ奈留島の友人の力を借り、ようやく担当技師(医師はダイオキシ
    ン検査ができない、スキルがない)から2015年(2年後)にFAXで返事が来ました。

     検査した数値はとんでもない高さでしたが、「これはへその緒に農薬か何かが付着したのでは?」という内容でした。岩村さんは納得できずにいましたが、昨年11月末に担当技師に電話で尋ねることが出来ましたが、今回も納得のゆく説明が得られませんでした。

    「母と子の絆~カネミ油症の真実」製作委員会は、断固として「へその緒プロジェクト」を立ち上げ、真実を明らかにして参ります。                映画監督 稲塚秀孝

  • 「へその緒」を預かりました(1月8日)

     本日朝、長崎県五島市奈留の港で、カネミ油症被害者岩村定子さんから、1973年8月に
    生まれ、わずか生後4か月で亡くなった長男満広さんと繋いだ「へその緒」をお預かりして
    きました。来たる1月12日(金)記者懇談会の場でメディアの皆さまにご覧いただき、報道
    して頂きたいと考えています。お預かりしたへその緒は、小さな容器の中に納められ、木箱、
    さらにビニールの袋に入っています。

  • 【カネミ油症の被害の実態を後世に伝えなければいけない】

     カネミ油症被害者である下田さん親子にインタビューさせていただきました。
      母・下田順子さん、娘・下田恵さん

    ===========
    母・下田順子さん

    ===========
     私たちは、自然界にはない物質によって、多大な影響を親から子へ、子から孫へ世代を超えて影響を受けているものと思われます。
     小学校での生活が始まってまもなく、倦怠感、頭痛、腹痛、多量の鼻血などの症状が現れました。ひどいいじめにも遭いました。生きていくことに絶望し命を絶とうと思ったことも何度もあります。
     しかし今、ここに私が生きているのはこの被害の実態と、どのように私たちがこのPCBダイオキシン被害と向き合ってきたかを後世に伝えなければいけない。その思いで私は生きることを決意して今に至っています。
    ============
    娘・下田恵さん
    ============
     高校生のときに初めてカネミ油症という言葉を知りました。母から聞いたカネミ油症の症状とこれまで自分に出た症状が同じであることに衝撃を受けました。
     カネミ油症を知らない方々が多くいます。知らなければ理解をすることもできません。
    カネミ油症を知らない世代に伝えていくこと、社会からカネミ油症を変えていくこと。そして、差別と偏見をなくして、皆さんが笑顔で暮らしていくことができる社会にしていきたいと思っています。
    ============
     下田順子さん、恵さんご協力をいただきありがとうございました。半世紀以上たっても続くカネミ油症事件の真相を伝え、被害者救済の道をつくるため映画「母と子の絆~カネミ油症の真実」の製作を進めています。ぜひともご支援をいただけますと幸いです。
     https://congrant.com/project/yusho2024/9712
    ・目標金額:1,000万円
    ・期間:2023/12/20〜2024/02/29

  • 「へその緒プロジェクト」宣言!

     皆さま 新年あけましておめでとうございます。

     映画「母と子の絆~カネミ油症の真実」製作委員会の稲塚秀孝です。年明けから本格的に「へその緒プロジェクト」を展開します。

     今から56年前に起こった「カネミ油症事件」。その被害者が次世代に拡がっています。母から子へ、そして孫世代へ。PCB(ポり塩化ビフェニール)の毒性を繋いでいるのが「へその緒」なのです。「へその緒」を通して子に、孫に毒性が及んでいることに着目し、「カネミ油症被害者」の確定と救済につなごうとする取り組みを進めて行きたいと思います。

     何が起こったのか?を記録し、告発するのが、ドキュメンタリー映画の真髄ですが、この映画では、「へその緒プロジェクト」と共に、カネミ油症被害者に寄り添いながら、製作を行います。

     提案型の映画製作活動に皆さんからのご支援、ご協力をお願いいたします。現在映画製作支援のクラウドファンディングを実施しています。https://congrant.com/project2024/9712   からお願いいたします。

                                         映画監督 稲塚秀孝

  • 2024年1月「へその緒プロジェクト」発信!

     昨日(12月28日)に「カネミ油症被害者全国連絡会」事務局長の三苫哲也さんのコメントを
    発信いたしましたが、三苫さんとは3年前から取材を通じて交流を重ねてきました。

     今回「へその緒プロジェクト」を始めるにあたり、福岡地区の被害者の母親の方々に「へその緒」
    の提供を呼び掛け、1月12日に行う全国連絡会の検討会の場で、全国の皆さんに呼び掛けて下さい
    ます。とてもありがたいです。三苫さんは母親から「へその緒」を通して、ダイオキシン類の毒性
    を受け継ぎ、少年のころは脆弱で、時には強い下痢症状におそわれた経験をお持ちです。

     東京で教科書の出版社勤務の後、福岡に戻り、病院で医療従事者の支援の仕事を続けています。
    実は三苫さんが勤めていた出版社には、二重被爆した故 山口彊さんを教科書に掲載していただい
    ている”縁”がありました。

     1月12日(金)午前、福岡市役所議会棟の部屋で、「へその緒プロジェクト」の記者懇談会が開か
    れます。カネミ油症被害者の母と子を繋ぐ「へその緒」は今回の映画の最大の訴求ポイントです。
    皆さま、ぜひ年明けからの展開にご注目下さい。
                                     映画監督   稲塚秀孝

  • 今の社会の発展の裏側に何が起こったのかをしっかり残さなければならない

     カネミ油症被害者全国連絡会事務局長 三苫 哲也 さんから、映画『母と子の絆〜カネミ油症の真実』製作にあたっての応援メッセージをいただきました。

     カネミ油症事件は誰の身にも起こり得る公害で、安心だと思って食べてるものに猛毒が入っていたという事件です。

     この事件自体はもう50年も経って風化もしつつあるんですけれども、当時、他にもアスベストや原子力発電などいろんな夢の化学物質が出てきて、私たちの暮らしがより豊かになってきたというのも事実だと思うんです。

     ただこの僕たちの今の社会の発展の裏側に、何があったのかということはしっかり残しておかなきゃいけないと思います。

     現代社会においても、例えばマイクロプラスチックや化学繊維を食べた魚を僕たちがまた食べて、いつのまにか僕たちの体にもまたそういうものが蓄積されているような状況がある中で、現代の私たちの社会問題としても捉えられると思いますので、ぜひ映画の製作にご協力いただいたり、映画ができた暁にはぜひご覧いただきたいなと思っています。よろしくお願いいたします。

  • 2024年1月、「へその緒プロジェクト」始動❗


     既にHPでお伝えしている「へその緒プロジェクト」が1月に始動します。
    1月12日午前、カネミ油症を取材して来られたメディアの記者の方々と記者懇談会を企画しました。
    「へその緒プロジェクト」から参加するのは、宮田秀明さん(摂南大学名誉教授)と藤原寿和さん
    (カネミ油症被害者支援センター・初代事務局長)です。
     宮田さんは2007年から、カネミ油症被害者のへその緒におけるダイオキシン類の検査を行い、
    2009年「福岡医学雑誌」に報告しています。年内に詳細をお伝えします。
                                 12月26日 映画監督 稲塚秀孝

  • 映画最大のポイント「へその緒」について

     母から子へダイオキシン類の毒性が繋がったことの証明となる「へその緒」の検査を徹底させ、被害者の認定制度を糺したいと思っています。稲塚監督から本映画の鍵となる「へその緒」に関する研究についてコメントをいただきました。▽動画はこちら

     1968年に主に西日本で発生したカネミ油症事件。様々な障害・被害が起こりましたが、その後お母さんの母体からお子さん・孫へとそのダイオキシン類(PCDF)の毒性がつながったことが、今問題になっています。

     事件発生から50年以上経っていますが、いまだこの問題は解決していません。本映画の製作にあたっては「へその緒」を調べることによって、今に至るもダイオキシン類の毒性があるということを証明したいと思っています。

     母から子へダイオキシン類の毒性が流れたことの実証こそ、この映画を通じて皆さんに知ってほしい最大のポイントであり、被害者の認定制度という欺瞞を抜本的に糾すことにつながります。この点こそが、本映画の”社会的意味”であると確信しています。

     映画製作にあたってはクラウドファンディングを実施中です。半世紀以上たっても続くカネミ油症事件の真相を伝えるため、映画「母と子の絆~カネミ油症の真実」の製作にご支援をお願いいたします。 
    ★クラウドファンディング★実施中(12月20日~2月29日)・目標金額:1,000万円

  • 「へその緒」とは何だろうか?

     「カネミ油症事件」発生は1968年。九州大学油症治療班が、「へその緒」の検証をしたのは、
    2007年以降で検証報告は2009年でした。事件発生から数年後には、原因物質がPCB(ポリ塩化
    ビフェニール)と言われていたので、当然被害者が女性の場合、体内に蓄積した毒性物質が
    「へその緒」を通じて、胎児の体に送られることは容易に理解でできたはずである。

     では「へその緒」とは何であろうか?「胎児は胎盤を通して母側から酸素や栄養分を受け取り、
    老廃物を母体側に渡し、胎児と胎盤を繋いでいるのが臍帯、つまりへその緒である。概ね太さは
    2㎝、長さは50~60㎝の管状である。」

     今こそ「へその緒」の検証・鑑定することで、ダイオキシン類は母親から子に繋がっている
    証明を求めたいと考えている。そして認定、未認定に峻別される不条理を粉砕し、幅広く被害者
    救済を国にさせたいと願っています。 
                                   映画監督   稲塚秀孝

  • なぜ、”今“「へその緒」なのか?

     1968年に発生した「カネミ油症事件」は単なる食中毒事件ではありません。普段見聞きする
    食中毒は、夏場のお弁当やこの夏は「流しソーメン」の機材の衛生環境から、実際に食した、口に
    入れた皆さんが、下痢や嘔吐などを繰り広げるものですが、当事者の健康が回復すれば、収まる
    傾向のものです。ただ「カネミ油症」では、「カネミライスオイル」を口にした母親から子や、孫
    に、ダイオキシンの毒性が伝達されて、障害が起きていることに、特異性があります。

     九州大学油症治療班は、事件発生から40年経過した2007年~2009年にかけて、へその
    緒を集め、検査をしました。そして2009年5月発行の「福岡医学雑誌」で2たつの報告が掲載
    されています。

     一つは九州大学と福岡県保健環境研究所のチーム。もう一つは摂南大学薬学部宮田秀明教授を
    中心としたチームです。その頃、ある新聞では「カネミ油症 胎児期汚染を証明」と見出しに書か
    れています。しかしそれ以来15年間、「へその緒」調査は一向に進んでいないのです。

     「母と子の絆」である「へその緒」の徹底調査こそ、カネミ油症が次世代に及ぼす甚大な影響を
    考察できる大きなツールであると思います。近々ご報告を続けます。
                                    映画監督   稲塚秀孝

  • 「へその緒」を検証することが急務

     「カネミ油症事件」発生から55年経過した今、改めて母親から子や、孫にPCB(ポリ塩化ビフ ェニール)の毒性が繋がった「へその緒」を検証することが急務です。

     これまでも九州大学油症治療班では、2009年の「福岡医学雑誌」に報告していますが、なぜかその後「へその緒」について、蔑ろにされてきています。こちらは長崎県在住のカネミ油症患者が保管する「へその緒」です。一度九州大学の検査後、返還されたもので、微量しか残されていません。1973年に誕生した男児と繋いでいた「へその緒」ですが、生後4カ月で亡くなりました。女性は今も訴えます。「息子がカネミ油症で口蓋口唇裂などで亡くなったことを証明してほしい」と。

     今もこの「へその緒」は木箱に収められ、大事に神棚に載せられています。こちらがカネミ油症事件の原因となった「カネミライスオイル」の1升瓶と一斗缶です。 
                                    映画監督    稲塚秀孝
    【参考資料】
    油症被害者の次世代以降の子孫を対象とした汚染実態を究明するための「保存さい帯(へその緒)」
     試料の有効性
     (摂南大学名誉教授 宮田 秀明)

        カネミ油(一升瓶と一斗缶)


  • クラウドファンディングを開始するにあたり

     今回、ドキュメンタリー映画「母と子の絆~カネミ油症の真実」製作支援のためのクラウドファンディングを開始するにあたり、この映画への想いを書きました。

    1. この映画製作にかける想い

     私が「カネミ油症事件」を知ったのは、2006年夏のことでした。この年春に完成した記録映画「二重被爆」(広島と長崎で二度被爆した7人の証言ドキュメンタリー)を、長崎セントラル劇場(長崎市内のミニシアター)で上映した後でした。

     舞台挨拶を行って、スクリーンのある2階から階段を降りようとしている私の背中に声をかけてくれた女性がいました。
    「稲塚監督、お話いいですか?『カネミ油症事件』をご存知ですか?」と。私はその時まで、「カネミ油症事件」のことを知りませんでした。
    「いいえ、分かりませんが・・」
    その女性は追いかけるように、「カネミ油症事件」の概要を話し、
    「一度、五島に来ませんか?奈留島で待っていますから」と連絡先を教えてくれました。

     その後、数回長崎県五島市奈留島、福岡県博多、中間市を取材に訪ねたまま、取材は頓挫してしまいました。「二重被爆」の継続取材を取り組むことになったからでしたが、私にとっては、ずっと心の奥底に”痛恨の想い“が沈殿したままになっていました。

     2000年秋、東京で行われた別の作品の上映会後に、同じような問いかけを聞きました。別な女性から「監督は『カネミ油症事件』をご存知ですか?」と。これは運命のめぐり合わせではないか、と思いました。

     そこから再び「カネミ油症事件」の取材が始まりました。改めて取材してみると、まさしく日本各地にある”棄民“の事件の一つだと思いました。被害者の人権も救済も放置されたまま。国がこれまで数多く積み重ねてきた“棄民政策!と同じ構図であり、それは間違いないと思いました。

     半世紀たってもカネミ油を口にした人々が、認定、未認定と区別されたままです。しかも「カネミ油症事件」は、単純な食中毒(一過性)事件ではありません。カネミ油(ライスオイル)に混入したPCB(ポり塩化ビフェニール)の毒性は、油を摂取した当事者の母親から油を摂取していない子や、孫に「へその緒」や母乳を通じて繋がっているのです。

     事件発生から55年経過した今だからこそ、カネミ油症事件の原因の究明、患者と家族の苦痛・苦悩を皆さんに伝えたいと思います。

    1. この映画を製作することの社会的意味

     これまで10本を越えるドキュメンタリー映画を製作してきました。
    ・広島と長崎で二度被爆した「二重被爆」
    ・2011年3月11日の東日本大震災による津波被害によって多くの方々が命を失いましたが、その一方東京電力福島第一原子力発電所のメルトダウン(炉心溶解)により、放射性物質が拡散し、大勢の人々が被曝し、避難生活を余儀なくされた「フクシマ2011被曝に晒された人々の記録」
    ・AADC欠損症患者の3人の子どもたちと家族を描いた「奇跡の子どもたち」
    ・自衛隊基地に接した酪農家の闘いを描いた「憲法を武器として~恵庭事件・知られざる50年目の真実」。
    ・台風被害により、鉄路がゆがみ、ついに廃線に追い込まれた「日高線と生きる」等。

     人が生き、生活するうえで、矛盾や不条理に晒される事柄を追う時、「ドキュメンタリーとは告発である」という大きな理念に行き着きました。

     「母と子の絆~カネミ油症の真実」では、小さな一原因企業の責任に留まらず、被害者の救済を蔑ろにする「国民の生活の安心・安全」を担う国の“無作為”と長年治療法の研究をおざなりにしてきた九州大学油症治療班を始めとする厚生行政の”怠慢“を明らかにすることが”告発“の原点です。

     そしてこの映画における新たな”提案“があります。それは被害者の認定制度という欺瞞を抜本的に糾す「へその緒」の検査を徹底させることです。母から子へPCBの毒性が流れたことの実証こそ、この映画を通じて皆さんに知ってほしい、最大のポイントであり、この映画の持つ”社会的意味”であると確信しています。

    1. 誰に伝えたいか

     生きること、生活することに日々向き合っている方々、日本国内に限らず、真摯に人と社会と接している世界の方々に向けて、発信したいと思います。また社会の仕組みを知り、そこに欺瞞を感じながら、中学から高校に通う世代の方々にぜひ届けたいと思います。

     私も当時、学校の授業や様々な本、テレビ番組、映画を通じて、学び、憤り、自分の生き方、社会へ参加する(アンガージュ)する意思を持つことになりました。“今、このままでいいのか?”と感じている方、感じ始めている方々に向けて、この映画が届くことを願っています。

                             映画監督  稲塚秀孝

  • タキオン・ジャパン製作映画上映とトークの集い

     年明け1月6日(土)に水俣市で開かれる「水俣交流集会」に藤原さんと共に、私稲塚も参加いたします。「母と子の絆~カネミ油症の真実」製作委員会として、本映画について、20分間ご案内させていただくことになりました。そして翌7日、タキオンジャパン製作映画3本の上映会を開催いたします。

    ◆「憲法を武器として~恵庭事件・知られざる50年目の真実」
    ◆「奇跡の子どもたち」
    ◆フクシマ2011~被曝に晒された人々の記録」です。

    大勢の皆さまにご覧いただければと思います。
                                   映画監督 稲塚秀孝

  • お世話になっている皆さまへ

      2023年も残り少なくなりました。皆さまにとって、どのような一年だったでしょうか?
    その年の瀬に、皆さまにお願いがあり、ご連絡させていただきました。

      2020年から、コロナ禍の中、取材を続けて参りました「カネミ油症事件」のドキュメンタリー映画において、製作費捻出のためにクラウドファンディングを12月20日(水)午前0時から開始します。タイトルは、「母と子の絆~カネミ油症の真実」今なお続く問題の真相を映像で伝えたいとなっています。

      クラウドファンディング開始次第、このタイトルをパソコン、スマホで打ち込んでいただくと、当該ページをご覧いただけます。

      お願いは二つです。
    一つ目は、クラウドファンディングに寄付をお願いしたい、こと。
    二つ目は、このドキュメンタリー映画「母と子の絆~カネミ油症の真実」を応援いただくメッセージを送っていただきたい、ことです。

      大勢の皆さんにご参加いただくために、お一人400字前後でinazuka@takionjapan.onamae.jp  宛にお願いいたします。映画は来年、2024年秋公開を目指しています。今後とも よろしくお願いいたします。

                                 母と子の絆~カネミ油症の真実 
                                   製作委員会代表 稲塚秀孝

  • 製作便り(12月13日)

     お早うございます。 いよいよドキュメンタリー映画「母と子の絆~カネミ油症の真実」の製作支援の クラウドファンディングが、1週間後の12月20日(水)午前0時から始まり、 来年2月29日(木)までとなります。 タイトルは、 「母と子の絆~カネミ油症の真実」今なお続く問題の真相を映像で伝えたい と決めました。
     クラウドファンディングのページをお探しの時は、タイトルを打ち込んで、クリック していただければと思います。 大勢の皆さまにこのページを見ていただき、製作支援のご寄付をいただければ幸いで す。
     なお年末に向けて、「カネミ油症の真実」取材も進行します。 急遽来週12月19日から九州・博多を中心に取材打合せに参ります。 年明けは1月6日の「水俣交流集会」参加から始まります。 どうぞよろしくお願いいたします。  稲塚秀孝

  • 阿部泰隆弁護士に聞く

    「カネミ油症裁判」の掘り起こしが必要だと考えている弁護士がいる。阿部泰隆(81歳)。東大法学部卒業後、助手を経て、神戸大学法学部助教授・教授、定年後、弁護士兼中央大学総合政策学部教授となる。専門は行政訴訟・国家賠償法を含めた行政法全般、特に行政と裁判所の腐敗を告発し、国民の人権を守る合理的な法システムの創造を提唱している。平たく言えば国の不作為の犯罪を許さない男である。兵庫県芦屋市、JR芦屋駅からほど近いレンタルスペースに、「山登りでもするかのような扮装で」やってきた。

    「カネミ油症事件」が数々の裁判を行っていた時、ある弁護士から声がかかる。「国の責任を公判で明らかにしてほしい」と。「国家補償法」「行政法の解釈」など分厚い本を次々と書くが、全く売れないと嘆く。カネミ油症事件で着目したのは、世にいう「ダーク油事件」。カネミ倉庫からライスオイル製造の搾りかすで、鶏卵の飼料となったが、これが「カネミ油症事件」の予兆だったと訴える。福岡県の行政官が、“縦割り”の弊害で、しかるべき部署に報告していなかった。ましてカネミ倉庫の加藤三之輔(当時)のやり取りで、「俺はいつも油を食べているが、何ともないよ」と。

     1987年3月、最高裁で各原告団(1896人)が製造者企業カネカと和解。国は和解に応じず、福岡地裁、高裁で原告が勝利して得た仮執行金をその10年後に返済を求められ、自殺者や家族崩壊が起きた。当時の国への訴えを取り下げたことは正しかったのか?もっと有効な手立てがあったのではないか?ここまで国の責任を舌鋒鋭く指摘していた阿部さんは、同じ弁護士として“逡巡”の貌を見せたと感じたのは、見間違いだったのだろうか?

      既に当時一線で闘っていた被害者の第一世代は、退いている。何があったのか?この映画が伝えなくてはいけない“本丸”に違いない。
                                 取材  稲塚秀孝

  • 第7回高砂集会ー新聞報道

    12/2(土)、第7回高砂集会が催されました。
    場所:ユーアイ帆っとセンター2F(高砂市高砂町松波町440番地の35)
        ※東京、福岡、五島、長崎などの会場とはオンライン(ZOOM)
    プログラム
    開会あいさつ
    各会場からリレーであいさつ
    1.PCB 処理現状報告
    2.カネカとの最高裁の和解について
    3.カネミ油症次世代調査報告についての見解
    4.カネミ油症次世代調査報告について被害者が座談会形式で語る
    5.カネミ油症被害者の声を聞く
    6.福島原発事故被害者からの発言
    7.集会声明採択
    閉会あいあつ

     すでに当委員会代表副代表の投稿を掲載して言いますが、いくつかの新聞で報道された記事をリンク致します。各社のカネミ油症事件に対する姿勢を伺うことができます。

    カネミ油症事件 巡り 五島、長崎など5会場で全国集会 「PCB次世代問題生んだ」 | 長崎新聞
     PCBの製造企業のカネカが過去の裁判で原告団と和解後、被害者との対話を拒否。
     「製造禁止になるまでPCBを増産し続けた結果が今に至る子や孫の問題を新たに
     生み出した」と企業責任を訴えた。
    「カネミ油症」被害考える 兵庫で集会 福岡はオンラインなど /福岡 | 毎日新聞)
    食品公害「カネミ油症」被害者ら、高砂で集会 製造したカネカの責任を議論/神戸新聞
    カネミ油症55年経っても続く苦しみ 兵庫で患者らが集会/朝日新聞
    ●/読売新聞
     兵庫県高砂市の会場では渡部道子さんが、「長崎県奈留島で、12歳でカネミ油を口に
     してから長年、病気に苦しみ、産まれた子どもの体が弱かったこと、カネミ油症が過去の
     話ではなく、同じようなことが起こるかもしれない、これからの子どもたちのためにも、
     救済を求め続けたい」と訴えた。

    (追記)
    長崎放送のネット記事は衝撃的です。
    父親が食べた毒も子供に影響か 半世紀前の食中毒「カネミ油症事件」

  • 第7回高砂集会

      本日(12月2日)13時30分から「第7回高砂集会」が開催されました。主会場は兵庫県高砂市内の会場で、東京、福岡、長崎、五島とオンラインでつなぎました。最初に共催の「カネミ油症支援センター」(YSC)の大久保代表の挨拶で始まりました。

      今回の目玉は第一陣から第五陣の裁判を知る高木健康弁護士が登場し、1987年の最高裁伊藤裁判官主導の和解に関するディテール話でした。和解により、国とPCB製造企業のカネカの責任が免除されました。カネカは見舞金の名目で支払いました。和解により、第一審、高等審において、国とカネカの責任を追及した実績は反故になりました。患者団体は勝訴により仮執行金(仮払い金)を受け取り、当然消費していました。

      10年後、国は「仮執行金の返済」を患者に迫りました。悲劇が生まれました。返済資金を持たない人々は右往左往し、ついに自殺者が出ました。家族崩壊が起きました。では弁護団は何をしていたのでしょうか?

      「仮執行金は場合により返済の可能性もあるので、一旦プールしておこう」と患者の皆さんに説明していなかったのです。ある弁護士は「たとえ国が返還請求してきても、放っておいても大丈夫」と言っていたのです。

      このことの経緯は一切、今日の集会では出ませんでした。患者側から質問が出なかったので、高木氏も応えていません。とても残念な会議だったと言わざるを得ません。

          「母と子の絆~カネミ油症の真実」監督  稲塚秀孝

  • 長崎から五島市奈留島に向かっています

    長崎から五島市奈留島に向かっています(11月27日(月))

  • 11/25 西に向かっています

    11月25日(土)
    西に向かっています

  • 11月25日(土)
  • 肉厚・濃厚な日高昆布(販売)

    皆さまへ
      このたびは記録映画「母と子の絆~カネミ油症の真実」の製作支援、
    上映支援に関心を持っていただき、ご協力ありがとうございます。
    私の地元北海道浦河町の昆布漁師、木下秀勝さんが毎年7月~
    10月頃に井寒台の前浜で採取した、特上昆布(500g)をお分け
    (販売)いたします。
      2021年製作・公開した「日高線と生きる」(廃線となった日高線
    沿線で暮らす人々の記録)の中で、取材させていただきました。
    肉厚で、濃厚な日高昆布の真髄を味わってください。
                                                稲塚秀孝

  • ドキュメンタリーは”告発” 

     記録映画「カネミ油症の真実~母と子の絆の真実」の経緯

    稲塚監督が紙の街の小さな新聞ひらく (2023年11月号)に投稿、掲載された記事を紹介します。

  • 「母と子の絆~カネミ油症の真実」出版化決定のお知らせ!

     映画製作と並行して、出版化の企画が通りました。カネミ油症の記憶と記録を克明に案内し、映画製作の経緯と経過を伝えます。四六版、190ページ程度を予定し、来年10月の映画公開を前に、来年5月めどで刊行します。 劇場、上映会の他、インターネットでの販売、クラウドファンディングでのリターンとして活用されます。

     長年カネミ油症事件に関わってきた藤原寿和(日台油症情報センター)と稲塚秀孝(映画監督)の共著で、資料を駆使して製作されます。予定価格は1500円(税別)で、詳細は2024年1月半ばに当ホームページ他でお知らせします。

  • カネミ油症2023 映像で問う「国の姿勢」

     進まぬカネミ油症事件の救済「不合理」を訴える記録映画製作中の稲塚監督が長崎新聞の取材に応じました。以下、その記事(HP:2023.5.3)の転載です。


     カネミ油症事件の被害者や関係者を追った記録映画の撮影を、東京の映画監督稲塚秀孝さん(72)が進めている。2024年秋ごろの公開を目指しており、「今なお続く油症問題の真相を、映像を通して訴えていきたい」と語る。
     同事件は1968年に発覚。ダイオキシン類など有害化学物質が混入した食用米ぬか油を食べた人が、吹き出物などの皮膚症状や内臓疾患などを発症。被害者は本県に多く、子や孫への健康被害も指摘されている。
     稲塚さんはこれまで、長崎と広島の二重被爆者を追ったドキュメンタリーや、福島県の原発事故の被災者などをテーマにした映画を手がけてきた。2018年、事件発覚から50年たっても続く健康被害など油症問題の現状を聞き、翌年から記録映画の製作を開始。新型コロナ禍での中断を経て、本県や福岡、関西の被害者やその子どもら約10人と関係者を取材している。映画のタイトルは「カネミ油症の記憶と記録」(仮題)。
     「被害者は何重にも苦しめられてきた」とする稲塚さん。深刻な症状や差別、将来への不安、認定と未認定の患者に分けられ十分な医療費補償を受けていない実態なども聞き取ってきた。4月24日は、五島市奈留町の被害者で、生後4カ月の長男を亡くした岩村定子さん(73)宅を訪問。母親として次世代被害者の救済を願う切実な思いを語ってもらい、映像で収録した。
     映画は90分前後で、関係者の証言やドラマなどで構成する予定。油症認定の厳しい基準や次世代被害など今も直面する課題に注目しながら、「救済のために積極的に被害者と向き合ってこなかった国の姿勢を問う」。
     さらに別の被害者の証言も記録したい考え。全国油症治療研究班(事務局・九州大)が実施している次世代被害者に特化した調査の進展もにらみながら製作を進める。
     稲塚さんは「カネミ油症という負の遺産を過去のこととして終わらせてはいけない」と指摘。さまざまな角度から問題を見つめ直す方針で、「救済が進まないことへの被害者のもどかしさを訴え、その不合理さを浮き彫りにしたい。なぜ半世紀以上たっても苦しみ続けるのか、映画を見て何ができるか考えてもらいたい」と話す。